米国から「不法な指導者」「テロ組織の首謀者」と位置づけられる一方、支持者からは「革命の指導者」とも称されるベネズエラ大統領のニコラス・マドゥロ氏が5日、米ニューヨーク南部地区連邦地裁に出廷した。
共謀によるコカイン密輸、機関銃の不法所持、さらにはテロ行為の首謀といった重罪で起訴されているチャベス(Hugo Chávez)の後継者、マドゥロ氏は、法廷で「私は無実だ。私はいまもベネズエラの国家元首であり、戦争捕虜だ」と主張し、自身を麻薬密売人とする検察の見方を否定した。
マドゥロ氏は、首都カラカスの要塞施設から米軍デルタフォースによって拘束され、米国に移送された。5日の出廷時には囚人服を着用し、両足には重い足かせが装着されていたが、法廷に入る際、傍聴席を埋めた記者や一般市民に向かってうなずき、スペイン語で「あけましておめでとう」と声をかける場面もあった。
審理を担当したのは、92歳のベテラン連邦判事アルビン・ヘラースタイン氏。63歳のマドゥロ氏は通訳を介し、「私は無実だ。罪はない。私は正しい人間であり、今も我が国の大統領だ。私はカラカスの自宅から拉致された戦争捕虜だ」と述べた。
これに対し、ヘラースタイン判事は発言を遮り、「そうした主張を述べる時間と場は後にある。今ではない」と指摘。そのうえで、「今、私が知りたいのは一つだけだ。あなたはニコラス・マドゥロ・モロス本人か」と確認した。ベネズエラで過去13年間の政治指導者であったマドゥロ氏は「私はニコラス・マドゥロ・モロスだ」と答えるほかなかった。
法廷でマドゥロ氏の隣に座っていたのは、長年の政治的パートナーであり、本人が「第一戦闘員(First Combatant)」と呼ぶ妻のシリア・フローレス氏だった。フローレス氏の弁護士によると、週末の逮捕作戦の際に負傷し、額と右のこめかみに包帯を巻き、体にも目立つ傷が残っているという。
検察によれば、この夫婦は25年に及ぶ国際的な犯罪共謀に関与したとされ、国家権力と武装麻薬組織を結託させ、数トン規模のコカインを米国へ密輸していたとされている。
米検察が提出した25ページに及ぶ起訴状では、マドゥロ氏は「太陽カルテル(Cartel of the Suns)」のトップと位置づけられている。検察は、同氏が「腐敗し違法な政府の頂点に君臨し、長年にわたり権力を利用して麻薬取引を含む犯罪行為を保護・助長してきた」と指摘。外交旅券を麻薬業者に販売し、資金未納者や取引の障害となる人物に対し、誘拐や暴行、殺害を命じたとも主張している。
さらに検察は、マドゥロ氏が麻薬を「米国社会を破壊するための武器」として利用したとし、これを「麻薬テロリズム」に該当すると位置づけた。
マドゥロ氏とフローレス氏はいずれも無罪を主張している。弁護側は現時点で保釈申請は行っていないが、将来的に申請する可能性があるとしている。2人は現在、ブルックリンの大都会拘置所(MDCブルックリン)に収容されている。同施設は著名事件の被告が多数収容されてきた施設として知られていて、FTX創業者のサム・バンクマン=フリードや、性的人身取引で起訴された音楽プロデューサーのショーン・ディディ・コムズも収容されていた。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、米国のジョージ・H・W・ブッシュ元大統領が1989年、パナマ侵攻を命じ、軍事指導者マヌエル・ノリエガを拘束し、米国で裁判にかけた前例を紹介している。ノリエガ氏も囚人服姿で出廷し、「国家元首としての免責特権」を主張したが、連邦控訴裁判所はこれを退け、米政府はノリエガ氏をパナマの正当な元首とは認めないと判断した。
元連邦検察官のアーティ・マコネル氏は、「検察は今回も同様の論理を展開するだろう」と分析する。実際、米国と複数の同盟国は2019年以降、マドゥロ氏の2018年再選を正当なものと認めておらず、2024年に行われた、反体制派候補を排除し勝利を没収したとされる大統領選挙についても同様である。
また、米連邦裁判所には「麻薬取引などの犯罪行為は国家指導者の公務には当たらない」とする判例が存在する。こうした点を踏まえると、マドゥロ氏が国家元首としての免責を主張する道のりは、極めて険しいものになるとみられている。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp (関連記事: トランプ氏がマドゥロ氏を拘束、中国も台湾で同様の行動に出るか? 「中国軍には無理」と断じる台湾、沈黙する北京 | 関連記事をもっと読む )
編集:小田菜々香

















































