トランプ氏がマドゥロ氏を拘束、中国も台湾で同様の行動に出るか? 「中国軍には無理」と断じる台湾、沈黙する北京

2024年7月22日、アイオワ州の陸軍州兵がミネソタ州キャンプ・リプリーで「Zodiac」海兵隊と「Pool F470」戦闘ゴムボート(CRRC)演習を行う。(写真/米陸軍インスタグラム提供:@usarmy)

トランプ氏が電撃的にベネズエラへ奇襲を仕掛け、同国の実力者であるマドゥロ氏を拘束した。米軍による「外科手術のような」精密攻撃は、世界に大きな衝撃を与えただけでなく、台湾海峡を挟む両岸でも全く異なる受け止め方を招いている。台湾の国家安全保障関係者はブルームバーグに対し、わずか数時間で相手の防空網を無力化した今回の軍事行動は、実は北京に向けた極めて強い抑止シグナルだと語った。すなわち、米国が本気になれば、中国製兵器で構築された防衛線はひとたまりもない、という現実を突きつけたというわけだ。

まるでハリウッドの軍事スパイ映画を思わせる深夜の奇襲だった。150機を超える米軍戦闘機がベネズエラの夜空を切り裂き、「臆病者だ。捕まえられるものなら来てみろ」と豪語していたマドゥロ氏(ニコラス・マドゥロ)は、ほとんど抵抗する間もなく、潜伏していた掩体壕から米軍に身柄を拘束され、そのままニューヨークへ移送されて裁判にかけられた。この電撃戦は、ワシントンがカラカスを一方的に制圧したという意味合いにとどまらず、遠く離れた台北と北京でも、その衝撃が繰り返し検証される事態となっている。

「トランプ氏の行動は習近平氏への抑止力」

台湾の国家安全保障部門の高官はブルームバーグに対し、独裁者マドゥロ政権を打倒した今回の軍事行動は、中国の習近平国家主席を含む権威主義的指導者に向けたメッセージだと語った。すなわち、トランプ氏は米国の国益にとって極めて重要な国際問題において、軍事力の行使を辞さない姿勢を示したのであり、これは北京の侵略的行動に対する強力な抑止であると同時に、中国製兵器で武装した軍隊であっても米国は打ち破る能力を有しているという現実を改めて突きつけるものだという。この高官は、その結果として、世界的な半導体拠点である台湾にとって、今回のトランプ氏の行動は安心感を高めるものになったと指摘した。

一方、別の匿名の台湾当局者は、中国は台湾を自国領土の一部とみなしており、国際法はそもそも考慮の対象ではないと述べた。そのため、「トランプ氏が明白に国際法に違反すれば北京を勢いづかせる」との見方は当たらないとし、中国にとって台湾に武力行使できない理由は、前例の欠如ではなく能力の不足にあると強調した。ただしブルームバーグは、こうした台湾当局者の楽観的な見方が、中国のSNSを席巻する強い民族主義的感情とは対照的だとも指摘している。中国のネットユーザーの間では、今回の米軍によるベネズエラへの軍事行動が、北京が台湾との緊張関係を処理する際の「一つの手本」になるとの声が上がっているという。

なお、中国外交部と台湾国防部はいずれも、ブルームバーグの取材要請に対してコメントを控えた。 (関連記事: 北京観察》米中「ラテンアメリカ争奪戦」全面衝突か?米国、マドゥロ氏を拘束 中国の石油調達に波紋 関連記事をもっと読む

支持か阻止か?シンクタンク学者の意見は割れる

アジア・ソサエティ政策研究所(Asia Society Policy Institute)の研究員、ライル・モリス氏は、習近平氏にとってトランプ氏によるベネズエラ侵攻は、「国家安全保障」を名目に大国が介入する際の典型的な手法に映ると指摘した。北京はロシアのウクライナ侵攻についても同様の枠組みで捉えているという。モリス氏は「中国が将来、台湾に対して軍事行動を起こす場合も、同じ類型に入れられる可能性がある」としたうえで、「国際社会の米国の行動への反応が比較的淡泊だったことを踏まえると、習近平氏が台湾への武力行使を検討するうえで“窓”が開いたと考えるのは、決して言い過ぎではない」と述べた。

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