厚生労働省の最新統計で、外国人労働者数が過去最多の230万人を突破したことが明らかになった。政府は長年批判されてきた「技能実習制度」を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する方針だが、長年移住労働者の支援に携わってきた「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」の鳥井一平共同代表理事は7日、FPCJ(フォーリン・プレスセンター)でのブリーフィングで強く警鐘を鳴らした。
「新制度が労働者の『転籍の自由』を保障しない限り、それは本質的に奴隷労働構造と変わらない」

「過去最多」報道への違和感と、現場の実態
鳥井氏は冒頭、日本の在留外国人数が2024年末の確定値で約376万人、速報値では395万人を超え、全人口の約3%以上を占める現状に触れた上で、政府やメディアが毎回「過去最多」と強調することに苦言を呈した。「過去30年以上、増加傾向は続いている。今さら数字だけで危機感を煽るのはミスリードだ」と批判した。
国籍別では中国が最多だが、近年はベトナムが急増しており、労働者数ではベトナムがトップ。地域別に見ると、自動車産業が集積する愛知・群馬では日系ブラジル人が多く、農漁業が盛んな宮崎・北海道では技能実習生のベトナム人やインドネシア人が多いという「地域ごとの産業依存構造」も浮き彫りになっている。
看板を掛け替えても残る「債務労働構造」
講演の核心は、2027年施行見通しの新制度「育成就労」への懸念だ。現行の「技能実習制度」は、時給300円という低賃金、暴力、セクハラ、強制帰国などが横行し、国際的にも「人身売買」「奴隷労働」と批判されてきたと指摘。
新制度では「国際貢献」という建前は廃止されるものの、鳥井氏は以下の点が解決されていないと指摘する。
- 転籍の自由の制限:労働者が自らの意思で職場を変えられない。
- 債務労働の温存: 借金を背負って来日し、逃げ場のない状態で働かされる構造が変わらない。
「制度の名称が変わっても、人間を『調整弁』や『モノ』として扱うなら、それは実質的な廃止とは言えない」と鳥井氏は断じた。
「労働力ではなく、社会で生きる人として」
質疑応答では、台湾メディア「風傳媒(Storm Media)」の記者が質問に立った。「台湾のように外国人労働力への依存が高い社会も含めて、国が違っても共通して必要な受け入れ制度の原則は何でしょうか。外国人を『労働力』ではなく、『社会で生きる人』として扱うために、制度に最低限求められることは何だとお考えですか」
この問いに対し、鳥井氏は「労使対等原則の担保」こそが制度設計の核心であると回答した。「経営者に『採用する権利』があるなら、労働者には『辞める権利(会社を選ぶ権利)』がなければならない。奴隷労働の定義とは『辞めることができないこと』だ」
労働者が自由に辞められない環境では、経営者は労働条件の改善や人権尊重に真剣に取り組まない。鳥井氏は「移動の自由を認めず、使い勝手の良い労働力として扱うことは、結果として日本の産業界や社会全体に悪影響を及ぼす」と警告した。労働者を対等な人間として扱う制度こそが最低限の条件であると訴えた。
解決の鍵は「戦後民主主義」の原点
最後に鳥井氏は、多くの外国人が日本を選ぶ理由は「平和と安全」にあると強調。戦後民主主義が築いてきた平和な社会こそが日本の魅力であると語った。「多民族・多文化共生は未来の話ではなく、既に始まっている現実だ」とし、すべての外国人労働者への労働基準法の完全適用と、国籍差別を禁止することこそが、30年来の構造的問題を解決する鍵であると結んだ。
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編集:小田菜々香

















































