インテルCEO、競合の挟撃にCPU戦略再編で対抗 「18A」等に注力
米インテルの最高経営責任者(CEO)・陳立武氏、「COMPUTEX 2026」で基調講演を行う。(写真/陳品佑撮影)
米半導体大手インテル(Intel)の最高経営責任者(CEO)・陳立武(リップブ・タン)氏は2日、「COMPUTEX 2026」での基調講演およびその後の記者会見において、AI PCおよびハイエンドPC市場における競争激化に言及した。米エヌビディア(NVIDIA)によるAI PC市場への参入や、米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が近年、ハイエンドデスクトップ、ゲーマー向け市場、データセンター用プロセッサの分野でシェアを拡大している現状に対し、インテル幹部は「競争の存在こそが、PCがAI時代においても重要な入り口であることを証明している」と強調。再構築されたCPUの製品ロードマップ、次世代プロセス「Intel 18A」、GPU製品群、および携帯型デバイス(ハンドヘルド)向けプロセッサを通じて、PCおよびデータセンター市場における競争力を確固たるものにすると表明した。
今年のCOMPUTEXは、インテルにとって単なるAIインフラの発表の場にとどまらず、タン氏がCEO就任後に製品戦略の再構築を対外的にアピールする重要な機会となった。「Core Ultra シリーズ3」「Core シリーズ3」「Arc Gシリーズ」の各プロセッサから、GPUやエッジAIの展開に至るまで、インテルは「PCがAI時代に淘汰されることはなく、むしろエッジAI、ハイブリッド推論、エージェントAIの普及により、ユーザーとAIを繋ぐ重要なプラットフォームとして再定義される」というメッセージを市場に発信している。
NVIDIAのAI PC参入、インテルは「競争を歓迎」
会見において、NVIDIAがAI PC関連製品を投入したことでPC市場が打撃を受け、あるいは再定義されるかとの質問に対し、インテル幹部は「良いことだ」と回答した。NVIDIAの参入はPCの重要性を裏付けるものであり、インテルにとって競争は常に緊張感をもたらし、同市場の価値を証明するものだと指摘している。
さらに同幹部は、メインストリームのノートPCからハイエンドのワークステーションに至るまで、インテルは製品ポートフォリオを網羅しており、長年にわたり信頼関係を築いてきた顧客やパートナーとの盤石な基盤があると強調した。すなわち、NVIDIAのAI PC市場への参入は単なる新規参入者の台頭ではなく、PCがAI実装における核心的なユースケースであることを改めて浮き彫りにしたと言える。
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こうした発言の背景には、AI PCを巡る競争が新たな局面に突入している現状がある。従来のPC市場における競争は、主にCPUの処理能力、消費電力、統合型グラフィックス、およびプラットフォーム全体のコストに焦点が当てられていた。しかし、生成AIやエージェントAIがエッジデバイスに実装される中、CPU、GPU、NPU、およびメモリ・アーキテクチャの連携こそが、AI PCがエッジ側でより多くの推論、データ処理、パーソナライゼーションを実行できるかどうかの鍵を握ることになる。
ハイエンドデスクトップ市場でAMDと激突
NVIDIAに加え、PCおよびデータセンター市場において直接的な競合となるのがAMDだ。会見で「過去数年間、AMDがハイエンドデスクトップ市場、特にゲーマーや自作PCユーザーの間で存在感を高めているが、インテルはどう対応するのか」との質問が飛んだ。これに対し、タン氏は具体的な競争戦略への言及を避け、「AMDの最高経営責任者(CEO)・蘇姿丰(リサ・スー)氏とは親しい友人であり、一部の領域で競合する部分はある」と述べるにとどめ、詳細な回答を関連部門の責任者に委ねた。インテル幹部によると、タン氏は就任後に製品ロードマップを確認した際、その内容に非常に驚きを示しており、今後インテルが強力な製品ロードマップを展開していく方針を明らかにしたという。
同幹部はさらに、同社がこの市場での勝ち方を熟知していると自信を覗かせた。その競争力の源泉はインテルが保有する既存の資産にあり、中でも最も価値のある資産が「CPUコア」であると指摘。インテルはすでにロードマップの再編を完了しており、PC向けからデータセンター向けに至る全製品群の立て直しと、競争力の再強化を目指している。
これは、タン氏の主導の下でインテルが対外的に発信しているシグナルが、短期的な価格競争ではなく、CPUコア、アーキテクチャ、製造プロセス、および製品リリースのリズムという「本質」への回帰であることを示している。AI PC、ゲーマー向け市場、そしてデータセンター領域で同時に反転攻勢に出るためには、単一の製品力だけでなく、ロードマップ全体をいかに着実かつ安定的に具現化できるかが最大の焦点となる。
「18A」とシリーズ3プロセッサでAI PCの反転攻勢へ
今回のCOMPUTEXにおいて、インテルは製造プロセス「Intel 18A」と「シリーズ3」プロセッサをPC戦略の中核に据えた。同社によると、Intel 18Aプロセスを用いて製造される「Core Ultra シリーズ3」プロセッサは、現在すでに325機種以上の消費者向けおよび商用PC設計に採用されており、同プラットフォームがパートナー企業や顧客から確かな支持を得ていることが示された。
また、Core Ultra シリーズ3に加え、「Core シリーズ3」プロセッサも新たに発表された。これはCore Ultra シリーズ3と共通の高度なIP(知的財産)を活用しつつ、より競争力のある価格帯で提供されるもので、薄型・スタイリッシュかつ高性能な次世代PCの普及を後押しする。インテルは、ハイエンドのAI PC市場で技術的な優位性を確立する一方で、幅広い製品ポートフォリオを通じてメインストリームの需要も取り込む構えだ。
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会見後、インテル幹部は「Intel 18Aは柔軟性が高く、エンジニアリングチームがデバイスのパフォーマンスや能力を最適化できるため、PCおよびエッジビジネスにおいて極めて魅力的な選択肢となる」と言及した。この発言からは、インテルが18Aを単なる微細化のプロセスノードとして捉えるのではなく、PCやエッジAI製品において再び差別化を図るための戦略的ツールと位置づけていることが読み取れる。
AI PC時代において、こうした差別化は単なるベンチマークスコアやCPU単体の性能にとどまらず、エッジ側でのAI推論、バッテリー駆動時間、エッジとクラウドの連携、プライバシー保護、さらにはアプリケーション・エコシステムといった多岐にわたる要素に反映される。インテルがPC市場での主導権を奪還するためには、シリーズ3プロセッサの出荷量およびデザイン・イン(設計採用)をいかに迅速に拡大できるかが、今後の重要な試金石となる。
GPUと携帯型ゲーム機がインテルの新たな戦線に
CPUやNPUに並び、GPUもまたインテルがAI PCおよびゲーム市場での競争に打ち勝つための重要なピースとなっている。会見でインテル幹部は、「GPUは当社のPC製品群において極めて重要な位置を占めている」と明言した。モバイルゲームおよびPCゲーム市場が莫大な収益を生み出している現状を踏まえ、インテルは主要プレイヤーとしてその領域に参入する意向を示している。同時に、GPUはエッジデバイスにおけるAI機能の重要な構成要素になるとも指摘した。
この方針は、今回のCOMPUTEXでインテルが打ち出した携帯型デバイス市場への展開と軌を一にするものだ。同社は、シリーズ3プロセッサ・ファミリーを成長著しい携帯型デバイス市場へと拡張し、新たな「Intel Arc Gシリーズ」プロセッサを今月より提供開始すると発表した。これにより、インテルは従来のノートPCやデスクトップPCの枠を超え、携帯型ゲーム機、モバイルゲーム、および高集積PCデバイス市場へと本格的に切り込むことになる。
インテルにとって、携帯型ゲーム機市場はノートPC市場と比較すれば規模は小さいものの、高性能、低消費電力、ゲーム体験、そしてポータブルなAIアプリケーションが融合する領域であり、同社のCPU、GPU、およびプラットフォーム統合能力を誇示する絶好の舞台となる。「Arc Gシリーズ」が携帯型デバイス市場で多くの設計案件を獲得できれば、過去にインテルが後塵を拝していたディスクリート(単体)GPU分野やゲーム・エコシステムにおける弱点の補強にも繋がる。
総じて言えば、今回インテルはNVIDIAとAMDの双方からプレッシャーを受ける中、単一の競合製品への対抗に固執するのではなく、CPUコア、18Aプロセス、GPU、携帯型デバイス向けプロセッサ、そしてAI PCプラットフォームといった多角的なアプローチからの反転攻勢を試みている。PCがAI時代において再び重要な入り口となるかは市場の審判を待つ必要があるが、タン氏が率いる「新生インテル」にとって、製品ロードマップの再構築はすでに一刻の猶予も許されない決戦となっている。
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