公益財団法人本田財団は9月15日、2026年度の第47回「本田賞」を、オーストラリアの医師で神経科学者であるメルボルン大学名誉教授のグレアム・M・クラーク教授と、オーストリアの電気工学者でMED-EL共同創業者兼CEOのインゲボルグ・ホフマイヤー博士に贈呈することを決定したと発表した。
両氏は、高度・重度の難聴者に向けた多チャンネル型人工内耳の研究開発と臨床実用化、さらには世界的な普及を主導した功績が評価された。
多チャンネル型人工内耳を開発 言葉を音だけで理解する道を開く
人工内耳は、補聴器を使用しても言葉を聞き取ることが困難な高度・重度の難聴者に向けた医療機器である。音を電気信号へと変換し、内耳の感覚器官である蝸牛内に挿入した電極から聴神経を直接刺激することで、音を脳へと伝達する。
1960年代に登場した単一電極による単チャンネル型は、音の有無やリズムを感じ取ることはできたものの、言葉の理解には至らず、読唇に頼る場面が多かった。
両氏は1970年代からそれぞれ研究を開始し、蝸牛内の異なる位置を複数の電極で刺激して周波数を分けて伝える多チャンネル型人工内耳へと発展させ、音だけで言葉を理解する道を切り開いた。
クラーク教授とホフマイヤー博士、人工内耳の臨床実用化と普及を主導
耳鼻咽喉科医であったクラーク教授は1967年に研究を開始し、1970年にメルボルン大学教授に就任後、多角的なチームを率いて開発を進めた。
1978年にロイヤル・ビクトリア眼科耳鼻科病院で臨床手術を成功させ、その後はNucleus Group傘下で設立されたコクレア社と連携して製品化や各国での承認、医療従事者の研修を進め、世界的な普及を先導した。
一方、電気工学者であるホフマイヤー博士は1975年に研究に着手し、後に夫となるアーウィン・ホフマイヤー博士や耳鼻咽喉科医のクルト・ブリアン教授らとともに技術を確立した。
1977年にウィーン大学で手術を実施したのち、夫とともにメドエル社を設立し、実用化と普及を推し進めた。
人工内耳、世界で100万人超が使用 子どもから高齢者まで生活の質向上に貢献
両氏による技術は、当初の成人対象から小児へと適用範囲を拡大し、現在までに世界で100万人を超える人々に使用されている。
子どもの言語習得や成人の社会参加、高齢者の生活の質の向上に寄与したほか、電極設計や信号変換などの技術は、人・機械相互作用の基盤として他の医療機器発展の礎にもなっている。
本田財団は、これらの成果が「自然環境」と「人間環境」の調和を目指す「エコテクノロジー」の理念に合致すると評価した。
贈呈式は2026年11月16日に帝国ホテル東京で開催され、両氏にはメダルと賞状のほか、副賞として総額1000万円が贈られる。
本田財団とは 本田宗一郎氏らの寄附金で1977年設立
本田財団は、本田技研工業創業者の本田宗一郎と、その弟である弁二郎の寄附金により1977年12月に設立された。
「人間性あふれる文明の創造に寄与する」ことを目指し、エコテクノロジーの概念に即した研究を表彰する国際褒賞の本田賞の運営、国際シンポジウムや懇談会の開催、次世代の若手を育成するY-E-Sプログラムの3つの活動を展開している。
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編集:梅木奈実


















































