日本エネルギー経済研究所中東研究センターの近藤重人主任研究員は23日、日本記者クラブで「緊迫するイエメン情勢とサウジアラビア」と題して記者会見を行った。
内戦が続くイエメンの親イラン反政府武装勢力フーシ派が暫定政権(正統政府)への攻勢を強め、背後にあるサウジアラビアへの越境攻撃を激化させている事態について、軍事衝突が再燃した背景や地域外交の構図、今後の収束シナリオを詳細に解説した。
フーシ派の攻撃激化、サウジの空港や石油施設にも被害
近藤氏は、サウジの首都リヤドにあるキング・ハーリド国際空港の旅客ターミナルや国営石油会社サウジアラムコ本社への攻撃など、直近で生じている攻撃被害の深刻さを指摘した。空港への一撃で10名以上の死者が出た事態は、今年2月からのイラン紛争におけるサウジ側の犠牲者数を上回り、サウジにとって極めて深刻な脅威となっている。
この影響で、今月26日から予定されていた大型投資会議「未来投資イニシアチブ(FII)」は2027年への延期を余儀なくされた。また、紅海からバブ・エル・マンデブ海峡にかけての海上交通路への脅威も再燃し、原油価格が1バレル=100ドル(約16000円)を超えるなど、世界経済とエネルギー市場への影響も拡大している。
両者の対立構造について、近藤氏は2004年頃のサアダ紛争に端を発し、2011年の「アラブの春」によるサーレハ政権退陣とハーディ副大統領への権限移譲、そして2014年9月のフーシ派による首都サナア制圧に至る経緯を整理した。
2015年3月にサウジ主導のアラブ連合軍が軍事介入して以降、戦闘は長期化し、フーシ派の兵器は当初の短距離ロケット砲からリヤドを射程に収める弾道ミサイルや自爆ドローンへと飛躍的に高度化した。
2022年にフーシ派が油田地帯マーリブへの進攻をUAEの支援を受ける「巨人旅団」に押し戻されたことで戦況は膠着し、国連仲介による休戦と直接対話、経済危機緩和を目指すロードマップ策定が進められたものの、2023年10月のガザ地区での戦闘勃発とフーシ派の参戦によりプロセスは一時停止した。
軍事衝突再燃の背景とサウジへの集中攻撃を分析
今年に入り衝突が再燃した背景として、近藤氏はフーシ派の一貫した経済的・主権的要求と、今年7月の航空機空爆事件を挙げた。2025年10月のガザ停戦を受け、今年4月にヨルダンで対話が持たれたが、フーシ派は公務員給与支払いのための石油輸出収入配分や、サナア空港・ホデイダ港の規制緩和を強硬に要求した。
こうした中で7月3日、イランの最高指導者ハメネイ師の葬儀に参列するフーシ派代表団のためイランのマハン航空機がサナアに入った。サウジと正統政府は、直行便開設によるイランからの武器や軍事顧問の直接流入を越えてはならない一線(レッドライン)と見なし、帰国便の着陸を阻止するためサナア空港の滑走路を空爆した。 (関連記事: ホルムズ海峡麻痺で湾岸産油国に151億ドルの損失、サウジは紅海迂回へ | 関連記事をもっと読む )
これを契機にフーシ派はサウジのアブハー空港攻撃や海上封鎖宣言で対抗し、9月にはバブ・エル・マンデブ海峡周辺の紅海沿岸部を奪取したほか、サウジの東西パイプラインへの攻撃も発生した。


















































