工期7~8年 費用は600~700億円規模
政治の中枢として機能してきた国会議事堂が、耐震性能の向上を目的とした大規模工事に踏み切る。2026年に建設から90年を迎えるのを前に、2025年度から設計作業に着手し、2030年度に工事を開始する予定だ。工期は7~8年を見込み、事業費は約600億~700億円とされている。国会議事堂にとって、初の本格的な耐震改修となる。
国会議事堂は鉄骨・鉄筋コンクリート造で、地下1階・地上3階(一部4階建て)の衆参両院棟と、地上9階建ての中央塔から構成される。延べ床面積は約5万3,000平方メートル、全長206メートル。1920年に着工し、17年の歳月を経て1936年に完成した。ドアノブや中央広間のステンドグラスなど一部を除き、資材の大半は国産で、延べ約254万人が工事に携わったとされる。
1981年の耐震診断では問題なしと判断されたが、老朽化や解析技術の進展を受け、2020~2022年度に再度診断を実施。その結果、中央広間の天井や壁など非構造部材の落下リスクが判明し、ステンドグラスの落下防止措置などが講じられた。さらに有識者による耐震改修検討委員会は2023年、「地震後も国会機能を継続できる恒久的な耐震改修が必要」とする報告書をまとめた。
今回採用されるのは、建物基礎の下に免震層を設ける「基礎下免震改修」。国の重要文化財である東京駅でも2007年から約5年をかけて実施された実績がある。国会議事堂には代替施設がないため、工事は議事運営を続けながら進められ、騒音や振動の大きい作業は夜間や閉会期間中に行う方針だ。
こうした大規模改修について、選挙コンサルタントで政治アナリストの大濱崎卓真氏は、「600億~700億円という費用への批判は想定されるが、立法機能の継続性確保は民主主義の根幹であり、国家基盤そのものだ」と指摘する。その上で、7~8年に及ぶ長期工事期間中、国会という政治の象徴性や機能をいかに維持するかが、国民の政治への信頼にも影響するとし、議事運営への影響や政治活動の制約が課題になるとの見方を示した。
また、法政大学大学院教授で現代政治分析を専門とする白鳥浩氏は、国会議事堂について「日本の政治をずっと見てきた存在であり、『日本の民主主義』そのものを象徴する建物だ」と述べる。イギリス議会(ビッグベン)も大規模改修を経験していることに触れ、「民主主義を次の時代に伝えるためには建物の維持が不可欠だが、それに見合った政治が行われているかも問われる」とし、平成期から続く「政治とカネ」の問題に対し、令和の時代に改革を進められるかが、現職国会議員に突きつけられていると指摘した。
民主主義の象徴を「使いながら守る」長期プロジェクト
防災の観点からは、ジャーナリストで防災士の関口威人氏が、国会議事堂の建設史に言及する。1920年の着工後、1923年の関東大震災では工事中だったため建物自体への大きな被害はなかったが、建設資材を積んだ船の沈没や、大蔵省の火災による設計図焼失などで工期が遅れ、完成は1936年にずれ込んだという。地盤条件についても、東京駅周辺と比べれば比較的良好とされる一方、「石材を多用した重い建物を免震化することで、長期的に荷重をどう支えるかが技術的課題になる」と指摘している。
さらに、政策ディスラプティブ・ストラテジストで早稲田大学招聘研究員の鈴木崇弘氏は、「現在の国会議事堂は1936年完成で、構想段階から数えれば約150年に近い歴史を持つが、本格的な耐震改修は今回が初めてだ」と述べる。その上で、「この建物は立法府の象徴だが、設計思想は本格的な民主主義が定着する以前のもの。単なる補修にとどめるべきではなく、民主主義の進化を象徴する『開かれた場』への転換や、最新技術を立法プロセスに生かせる環境整備など、未来を見据えた大胆な更新も検討すべきだ」と提言した。
耐震改修は、歴史的建築を守る事業であると同時に、日本の民主主義と統治の在り方が問われる長期プロジェクトとなる。
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編集:小田菜々香


















































