【TSMC株主総会】魏董事長「AI需要は継続拡大」 2026年売上高30%超成長の見通し維持 TSMC董事長兼総裁の魏哲家氏(中央)は4日、同社株主総会で議長を務めた。(顏麟宇撮影)
台湾の半導体受託製造(ファウンドリ)最大手、台湾積体電路製造(TSMC) は4日に定時株主総会を開催し、董事長(会長)兼総裁の魏哲家氏が今後の事業見通しについて明確なシグナルを発した。末端製品の価格下落圧力や地政学的リスクなど、マクロ経済の不確実性が残る中でも、人工知能(AI)需要は持続的に高まっており、データセンターからパソコン、スマートフォン、自動車、モノのインターネット(IoT)関連機器へと裾野が広がっていると強調。また2026年の通年売上高(米ドル換算)について、「前年比30%以上の増収」とした従来予想を維持し、市場の半導体需要は依然として「基礎的な需要」の状態にあると述べた。
AIの応用拡大、演算能力需要が一段と増大 株主総会の中で魏氏は 、TSMCが「AIドリブン」の世界に突入しつつあると指摘した。AIはデータセンターのみならず、今後はPCやスマートフォン、自動車、さらにはIoT機器にも応用が広がる見通しで、これに伴い、TSMCの先端技術と卓越した製造能力の価値は今後も高まり続けるとの見方だ。
さらに同氏は、生成AIと「クエリ(検索)モデル」から、エージェンティックAI(自律型AI)や「コマンド&アクション(指令と実行)」モデルへの移行に伴い、大規模言語モデル(LLM)がテキスト処理において使用するトークン(単語や文字の最小単位)の量が一段と増加すると説明。これが演算能力に対する需要を押し上げ、先進半導体チップの需要を後押しすると語った。
魏氏は、クラウドサービスプロバイダーを中心とするTSMCの顧客、およびその川下顧客も、AI産業に対して引き続き肯定的な見通しを示していると強調した。このため、同社は今後数年間のAI産業のトレンドに対する信頼感を維持し、市場の半導体需要は依然として手堅いものだと判断している。
先進製造プロセス需要は堅調 TSMCの事業報告書 によると、2025年の連結売上高は前年比31.6%増の3兆8090億5000万台湾ドル(約19兆円)、純利益は1兆7178億8000万台湾ドル(約8兆7000億円)、1株当たり利益(EPS)は66.25台湾ドル(約336円)となり、売上高・EPSともに過去最高を更新した。米ドル換算では年間売上高は前年比35.9%増となる。
一方で同氏は、部品価格の高騰が及ぼす影響、とりわけ民生用製品や価格に敏感な末端市場の動向を注視し続けていると述べた。また、最近の中東情勢もマクロ経済にさらなる不確実性をもたらしていると指摘。しかし、AI需要の下支えにより、先進製造プロセス技術に対する旺盛な需要は続くと予想しており、今年通期の米ドル換算売上高で30%超の成長を見込む従来の見解を維持した。
TSMCの定時株主総会(4日)で議長を務める魏哲家氏(顏麟宇撮影)
製造プロセス・封止技術 への投資継続 TSMCの生産能力の配分に市場の関心が集まる中、魏氏は株主総会で「当社はいかなるビジネスの機会も放棄することはない」と再三にわたり強調した。全顧客の需要を満たすべく全力で取り組んでおり、投資対象には先進製造プロセス、先進パッケージング(封止)、および特殊プロセス技術が含まれると説明した。
事業報告書によると、2025年におけるTSMCの先進プロセス(7ナノメートル以下のプロセス)の売上高は、半導体製造事業全体の74%を占め、前年の69%から上昇した。量産開始から丸3年を迎えた3ナノプロセスは、2025年の売上高全体の24%を占めた。また、2025年第4四半期に量産体制に入った2ナノプロセスは 、2026年に生産能力が急激に拡大する見通しだ。
同社は「N2P」、「A16」、「A14」などのプロセス技術開発も継続して推進している。このうちN2PとA16は2026年下半期中の量産開始を予定し、第2世代ナノシート・トランジスタ構造を採用するA14は2028年の量産を見込む。これらの技術的な進展が、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)や省電力コンピューティングの需要を支えていくことになる。
成熟プロセス戦略は不変 また魏氏は、成熟プロセス(レガシープロセス)についても説明した。同社の戦略に変わりはなく、単なる一般的な成熟プロセスの生産能力を提供するのではなく、特殊プロセス技術の構築と優れた歩留まり向上に注力していると述べた。
魏氏は具体例として、日本子会社、ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング(JASM)が運営する熊本 第1工場がCMOSイメージセンサー用途向けに、ドイツ子会社のヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(ESMC) が自動車および産業用途向けに建設された点を挙げた。TSMCは既存顧客をサポートする十分な生産能力を有しており、今後の戦略としても引き続き成熟プロセス技術の生産構成を最適化し、より高付加価値かつ戦略的な市場領域に集中していく方針だ。
TSMC株価は1年で1.5倍に上昇 魏氏はあいさつの中で、TSMCは過去1年間で売上高とEPSが過去最高を記録したのみならず、株価のパフォーマンスも非常に印象的だったと指摘。同社株価は昨年の株主総会当日の950台湾ドル(約4800円) から、今年の6月3日は2425台湾ドル (約1万2300円) を付け、365日間で1.5倍以上に上昇した。
同氏は、その成果を株主と分かち合うとし、年間現金配当総額を昨年の18台湾ドル(約91円 ) から、今年は最低でも24台湾ドル(約121円) へと引き上げ、30%超の増配を実施する方針を示した。
最後に魏氏は、TSMCは引き続き技術的優位性、卓越した製造力の確保、顧客からの信頼獲得に専念すると強調。顧客の成長を支援し、自社の利益成長を実現して株主価値を最大化すべく、技術と生産能力への投資を継続していくと締めくくった。
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