台湾では、亡くなった後に火葬するのがごく一般的になっている。では、火葬後の遺骨は必ず納骨塔などの納骨施設に納めなければならないのだろうか。
実は、伝統的な納骨塔のほかにも、樹木葬、花葬、政府が指定した緑地に粉骨した遺骨を埋める「植存」、海洋散骨(海葬)など、さまざまな選択肢がある。
台湾内政部(内務省に相当)の統計によると、2024年の台湾全体の「環保自然葬」(環境に配慮した自然葬、以下「自然葬」)は3万6件に上り、2015年の9156件と比べて10年で約3.3倍に増えた。このうち墓地内の樹木葬が自然葬全体の94%を占め、海洋散骨はわずか1%程度だった。
自然葬が徐々に普及しているのは、台湾の人々が伝統的な納骨塔を選ばなくなっていることを意味するのだろうか。政府が公表したデータから、さまざまな葬送方式の変化が見えてくる。
火葬後の遺骨はどこへ 納骨塔だけではない選択肢
火葬後の遺骨は、必ずしも納骨塔などの施設に納める必要はない。
内政部と「殯葬管理条例」の規定によると、火葬と遺骨の安置は別の手続きであり、遺族は遺骨を納骨堂や納骨塔、納骨壁などの施設に納めることも、規定に従って樹木葬、花葬、植存、海洋散骨などの自然葬を行い、さまざまな形で遺骨を自然に還すこともできる。
図解 01/遺骨の行き先
火葬後、遺骨はどこへ行く?
主な安置方法によって、場所や方法も異なる。
火葬後の遺骨
施設に納める
遺骨を安置する場所を残す
納骨堂、納骨塔、納骨壁
合法的な遺骨等の収蔵施設に納める
自然葬
恒久的な墓や墓碑、個別の納骨スペースを設けない
墓地内|樹木葬、花葬、散骨
処理した遺骨を指定された土壌区域に埋める
特定緑地|植存
政府が指定した緑化地点の土中に埋める
許可された海域|海洋散骨
粉骨したうえで規定に従ってまく
出典:内政部、台湾政府ポータル「我的E政府」|合法的な施設と地方政府の手続きに従って実施
台湾の自然葬、10年で3.3倍に 内政部が推移を公表
内政部統計処が2025年11月に発表した「内政統計通報」によると、2015年の台湾全体の自然葬は9156件だったが、2024年には3万6件に増えた。10年間で2万850件増え、増加率は227.7%に達した。
図解 02/10年の推移
自然葬、10年でどう変わった?
2015~2024年|台湾全体の年間件数
3.3倍2024年の件数は2015年の約3.3倍
単位:件|出典:内政部統計処「114年(2025年)第44週内政統計通報」表2
これまでのデータを見ると、自然葬は毎年増え続けているわけではないものの、長期的には明らかな増加傾向にある。2019年は1万2788件、2021年は1万9449件、2023年は2万7375件となり、2024年には3万件を突破した。
つまり、自然葬の件数には、新たに行われたものだけでなく、既存の遺骨が移されたケースが含まれている可能性もある。
それでも、長期的な統計からは、自然葬の件数が大きく増え、伝統的な納骨塔以外のもう一つの安置方法となっていることがわかる。
樹木葬と海洋散骨、どちらが多いのか 自然葬の94%はこの方式
樹木葬と海洋散骨はしばしば一緒に語られるが、内政部の統計を見ると、両者の実際の件数には非常に大きな差がある。
図解 03/2024年の内訳
自然葬100件のうち、約94件は墓地内の樹木葬
2024年|安置場所別
30,006件の自然葬
比率は30,006件を分母としたもので、台湾全体の死亡者数に占める割合ではない|出典:内政部統計処、2024年
2024年の台湾全体の自然葬は3万6件で、このうち墓地内の樹木葬が2万8212件と全体の94%を占めた。墓地外の特定の公園や緑地などでの散骨や植存は1477件で約4.9%、海洋散骨は317件で約1.1%だった。
10年前のデータと比べると、2015年に8204件だった墓地内の樹木葬は、2024年には2万8212件に増え、約243.9%の伸びとなった。これが自然葬の増加の主な要因だ。
これに対し、海洋散骨は2015年の229件から2024年には317件に増えたものの、伸び率は約38.4%にとどまり、樹木葬を大きく下回った。
しかも海洋散骨は毎年増えているわけではなく、2023年の360件から2024年には317件に減少した。
これらの数字からは、自然葬全体の規模が拡大する一方で、葬送方式によって広がり方は異なり、中でも墓地内の樹木葬が最も一般的であることがわかる。
樹木葬は木の下に遺骨を埋めるのか 樹木葬、植存、海洋散骨の違い
樹木葬と聞くと、故人一人ひとりに専用の木があり、家族がその木を目印に継続して墓参りできると考える人も少なくないだろう。しかし、台湾で行われている樹木葬は必ずしもそうした仕組みではない。
政府による自然葬の説明では、樹木葬は通常、火葬後の遺骨を粉骨処理したうえで、区域の規定に従って自然に分解される紙や布などに納め、墓地内の指定された土中に埋める。その上に草花や樹木を植えるか、既存の樹木の根元周辺に埋葬する。
樹木葬では原則として個人の墓碑を設けず、伝統的な形の恒久的な個人の墓所も残さないため、故人一人ひとりが専用の木を持てるわけではない。
一方、「植存」は、粉骨処理した遺骨を政府が指定した特定の緑化地点の土中に埋める方式だ。
海洋散骨は、火葬後の遺骨をさらに粉骨処理し、法律に基づいて許可された海域でまく。一般の人が海辺を自由に選んで遺骨をまくことはできず、関連規定と地方政府の申請手続きに従って行う必要がある。
自然葬を選ぶ人の増加は、伝統的な納骨塔の衰退を意味するのか
内政部の資料によると、納骨堂や納骨塔、納骨壁などを含む骨灰・骨骸の収蔵施設は、2015年末に台湾全体で494カ所だったが、2024年末には625カ所に増えた。10年間で131カ所、26.5%の増加となる。
台湾の統計上、このうち火葬後の遺骨に当たる「骨灰」が19万2854人分、「骨骸」が1万8758人分となっている。2015年の18万8272人分と比べると、全体では約12.4%増加した。
ただし、納骨施設の数が増えたからといって、伝統的な納骨塔を選ぶ人の割合が必ずしも高まっているとは限らない。
政府の統計には納骨堂や納骨壁などの施設も含まれ、年間の収容数には既存の骨灰や骨骸の安置、移転が含まれている可能性もあるため、これを根拠に人々の葬送方法の好みを直接判断することはできない。
長期的なデータからは、自然葬が急速に増えていることは確かだが、伝統的な遺骨収蔵施設も増え続けている。
台湾の人々の死後の安置方法は、納骨塔から自然葬へと全面的に移行しているわけではなく、伝統的な方法に加えて、より多様な選択肢が徐々に生まれているといえる。
内政部統計処「114年第44週内政統計通報:113年(2024年)の環保自然葬は3万6件、104年(2015年)の9156件の3.3倍」、2025年11月1日発表。
立法院(国会に相当)「近年環保葬の風潮が高まる一方、未整備の既存墓地の比率は依然高く、市・県による葬送施設の改善を促すべき」、2024年11月1日。
監察院「年間17万人の故人の権益に関わる葬送改善計画が根拠を欠く 監察院が内政部を是正」、2018年4月18日発表。
台湾政府ポータル「我的E政府」『グリーン葬送サービス、各県市の合同告別式と環保葬の情報まとめ』。
全国法規資料庫「殯葬管理条例」。