1932年に設立された東京都江戸川区の中核医療機関、江戸川病院は、「みんなのしあわせと思いやり」を基本理念に掲げ、地域医療への貢献と高度な医療の提供を両立させている。
同院は32の診療科を備え、24時間365日体制で救急患者の受け入れ率100%を目指す二次救急医療に取り組む一方、がん治療においても専門病院に匹敵する専門性と設備を有している。
特に近年は、手術、放射線治療、化学療法に加え、次世代のがん治療として期待される「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の臨床応用や、ロボット支援手術の適用範囲拡大など、患者の身体的負担を軽減する低侵襲治療の強化を進めている。

乳がん治療で注目されるBNCT ホウ素と中性子の反応でがん細胞を攻撃
次世代のがん放射線治療として期待されるBNCTは、がん細胞に集積しやすいホウ素製剤(BPA)を点滴投与し、体外から中性子線を照射することで、がん細胞を細胞レベルで選択的に破壊することを目指す治療法だ。
がん細胞は増殖に必要なアミノ酸を大量に取り込むため、アミノ酸トランスポーターの一種である「LAT1」が高発現する傾向がある。
BNCTは、このLAT1の働きを利用してホウ素をがん細胞に取り込ませ、中性子との核反応で発生するアルファ線などによって、がん細胞内のDNAに損傷を与える仕組みだ。
核反応で生じる粒子の飛程は細胞1個分に相当する約5~9マイクロメートルと短く、周囲の正常組織への影響を抑えながら、がん細胞を局所的に攻撃できる点が特徴とされる。ただし、正常組織への影響が完全になくなるわけではなく、副作用のリスクもある。
江戸川病院では、小型加速器を用いたBNCT装置を導入し、乳がんへの臨床応用を進めている。同院は、国内で乳がんに対するBNCT治療を実施する医療機関として、先駆的な役割を担っている。
2023年7月には、放射線治療後に再発した乳がんを対象とする特定臨床研究を開始し、2024年春までに予定していた5症例への治療を実施した。その後も対象を広げた臨床研究を進め、自由診療による治療も開始している。
2026年3月29日時点で、同院におけるBNCTの治療実績は計34例に達し、このうち乳がんは20例となっている。なお、乳がんに対するBNCTは現時点で日本の公的医療保険の適用対象ではなく、標準治療として確立されたものではない。
ロボット支援手術の導入を推進 婦人科でも低侵襲治療を強化
手術療法では、患者の術後の生活の質(QOL)を重視し、腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術などの鏡視下手術を積極的に実施している。
これに加え、手術支援ロボットを用いた治療も拡大しており、前立腺がんや大腸がんだけでなく、2024年4月に開設された婦人科でもロボット支援手術への対応を進めている。
新設された婦人科では、子宮筋腫などの良性疾患から悪性腫瘍まで幅広く診療している。
診療を担当するのは女性医師で、子育て経験のある医師による患者へのきめ細かな対応や、プライバシーに配慮した専門的な医療の提供にも力を入れている。













































