トランプ氏、習近平氏に「日本と対話を」と促したか 中国は「撤回」から「是正」へ ホワイトハウスの大統領執務室で会談するトランプ氏と中国の習近平国家主席。日本政府関係者によると、トランプ氏は会談中、習氏に日本と直接対話するよう促したとされる。(AP通信)
10月2日付 読売新聞が日本政府関係者の話として報じたところによると、先ごろ行われた米中首脳会談で、 中国の習近平国家主席が東アジア情勢に触れ、日本を批判した際、トランプ米大統領はこれに同調せず、高市 早苗首相を「力強い指導者」と評価した上で、習氏に対し、日本と直接協議するよう促していたことが分かった。ロイター通信も同日、トランプ氏が「日中対話の必要性」に言及したことを日本政府関係者が認めたと報じた。
日中関係は長らく膠着状態が続いている。過去の国会答弁で高市氏が、「台湾有事」は日本が同盟国と共に武力を行使できる「存立危機事態」になり得るとの認識を示したことが背景にある。中国側は発言の撤回を繰り返し求め、両国の首脳や外相レベルの公式対話は現在も再開されていない。トランプ氏の今回の発言は、膠着状態にある当事者同士に対話を促したものといえる。
トランプ氏、電話協議で高市首相に説明か 読売新聞によると、一連のやり取りは、9月26日に行われた高市氏とトランプ氏の電話協議で、トランプ氏本人が高市氏に説明した内容に基づき、日本政府関係者がメディアに明らかにした形だ。そのため、「習氏による日本批判」や「トランプ氏が高市氏を評価した」などの詳細は、現時点で米中いずれの政府からも公式には確認されていない。
高市早苗首相とトランプ米大統領。読売新聞の報道によると、トランプ氏は9月26日の電話協議で、日中対話を習近平国家主席に促した経緯を高市氏に説明したとされる。(資料写真/AP通信)
電話協議は26日午後9時から約20分間行われた。日本外務省の発表によると、冒頭でトランプ氏から米中首脳会談に関する説明があり、その後、中国関連の課題を中心に、経済、経済安全保障、安全保障分野について意見が交わされた。高市氏は協議後、首相官邸で記者団に対し、トランプ氏から米中首脳会談について「詳細な説明」を受けたと述べたが、具体的な内容は明らかにしなかった。
一方でロイター通信は関係者の話として、トランプ氏自身が電話で日中対話について語ったわけではなく、米側が別のルートを通じて日本に伝達したと報じている。習氏が日本を批判し、トランプ氏が高市氏を称賛したという言及は、現状では読売新聞の報道のみにとどまる。ジャーナリストの高口康太氏は、トランプ氏が事後報告の中で同盟国に配慮した可能性があり、会談の逐語録としてそのまま受け取るべきではないと指摘している。
高市首相、トランプ氏との会談で日中対話への意欲伝達 トランプ氏が習氏の面前で日本の立場を擁護したのはこれが初めてではないとされる。トランプ氏が以前に北京を訪問して習氏と会談した際にも日中関係の悪化が話題に上り、その際もトランプ氏が高市氏を擁護したと読売新聞は報じている。高口氏は、いずれの情報もトランプ氏と高市氏の電話協議の後、日本政府関係者を通じてメディアに明らかにされた点に注目している。
中国側の要求に変化の兆しか 9月28日、中国の王毅外交部長(外相)は北京で、日本の岩屋毅元外相と会談した。高口氏によれば、台湾有事発言を巡る対立以降、王氏が日本の政治家と正式に会談するのはこれが初めてだという。
岩屋氏は現在、政府の役職には就いておらず、日本国際貿易促進協会の会長として経済代表団を率いて訪中した。王氏は特定の個人名こそ挙げなかったものの、「日本の指導者が台湾問題における誤った言動を早期に是正すること」を求めた。これは高市氏の国会答弁を念頭に置いたものとみられる。
岩屋毅氏(左)と中国の王毅外相。写真は岩屋氏が外相在任時に訪中し、王氏と会談した際のもの。今年9月には民間団体の会長として再び北京を訪問した。(資料写真/AP通信)
以前、中国外交部は高市氏の台湾関連発言の「撤回」を求めていたが、今回は「是正」という表現を用いた。「撤回」は高市氏が公式に答弁を取り消すことを意味するが、「是正」はより幅広い対応の余地を残す言葉だ。ただし高口氏は、中国側が「誤った言動」と対象範囲を広げていることから、北京が歩み寄りに転じたと判断するのは時期尚早だと指摘する。現時点で、この表現の変化がトランプ氏の働きかけによるものかを裏付ける証拠はない。
焦点は11月のAPEC首脳会議 読売新聞は、高市氏が11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて訪中する予定だと報じている。トランプ氏が日中対話を促した背景には、この国際会議を見据えた意図がある可能性も指摘されている。
高市氏自身は日中首脳会談の実現について、一貫した姿勢を示している。9月に行われた内閣改造時の記者会見において、APEC期間中の日中首脳会談の検討状況を問われた際、「外交日程については予断を持ってお答えできない」としつつ、「懸案があるからこそ、あらゆるレベルで対話を重ねることが重要だ」と強調した。関連報道が出る前日の10月1日、テレビ番組の収録で同様の質問を受けた際もほぼ同じ回答を繰り返した。米中首脳会談を挟んでも、日本側の公式見解に変化は見られない。
11月に深圳で開催されるAPEC首脳会議には、トランプ氏と習氏も出席を予定している。ホスト国を務める中国が、同会議で習氏と高市氏の会談を設定するかどうかについて、中国政府は現時点で態度を明らかにしていない。
経済的背景から関係改善を模索する中国 中国政治を専門とする高原明生氏は、別の角度から中国側の変化を分析している。同氏は10月4日のテレビ番組で、中国はこれまで日本に対して強硬な態度をとってきたが、目立った成果を得られていないと指摘。国内の経済状況の悪化も相まって、「対日関係を見直すべきではないか」という声が内部で浮上しているとの見方を示した。同氏の見解では、中国側は今年の夏ごろから対日姿勢をやや軟化させているという。
高原氏は、中国が公に譲歩することなく関係改善を図る方法について、「最も重視しているのは経済であり、まずは経済交流の回復から手をつけるだろう」と指摘。「最初はカーテンを開け、それからゆっくりと窓を開けるような段階的なアプローチになる」と例えた。中国が岩屋氏や日本の経済界に示している柔軟な態度は、「台湾有事」を巡る対立の解消を直ちに意味するものではなく、政治的な膠着状態が続く中で、まずは実利を伴う経済分野での緊張緩和を先行させる思惑があるとみられる。
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