2026年10月、ルネサス エレクトロニクスは米カリフォルニア州サンノゼで開かれた「Open Compute Project(OCP)Global Summit」で、AIデータセンター向け電源の試作システムを展示した。
同社は『EE Times Japan』の取材に対し、800Vの直流電圧を6Vに直接変換する20kW級の開発プラットフォームについて、主要なAIデータセンター向け機器メーカーにサンプル提供していることを明らかにした。
電源設備の役割は、供給された電力を機器が利用できる電圧に変換することだ。AIチップの消費電力が増大するにつれ、給電用の配線や電力変換器、冷却設備への負荷も高まっている。
米NVIDIA(エヌビディア)が800V直流(DC)配電アーキテクチャへの移行を進める中、ルネサスが今回開発しているのは、電力がAIチップに届く前に電圧を下げる電力変換部分だ。
高電圧配電で配線の発熱を低減
抵抗のある導線に電流が流れると、電気エネルギーの一部は熱に変わる。同じ電力を供給する場合、電圧を高くすれば必要な電流を小さくできる。配線抵抗が同じなら、電流が減ることで発熱による損失も抑えられる。
AIチップの消費電力が増大する中、データセンター各社が配電電圧の引き上げを検討する背景には、こうした事情がある。
単純な計算例として、4800Wの電力を供給する場合、48Vでは100Aの電流が必要になる。一方、800Vなら必要な電流は6Aとなる。
これは「電力=電圧×電流」という関係に基づいた単純計算であり、電力変換器そのものの損失などは考慮していない。ルネサスの装置の実測値を示すものでもない。
高電圧を利用する狙いは、同じ電力をより小さな電流で配線を通して供給することにある。
NVIDIAは800Vアーキテクチャに関する技術説明で、ラック当たりの消費電力がさらに高まる中、従来の低電圧配電では、銅導体や電源設備が占めるスペースが増大すると指摘している。
配電電圧を高めることで電流を抑え、導体への負担を減らせれば、ラック内で演算機器に割り当てられるスペースを増やすことにもつながる。
800Vから6Vへ直接変換 チップ到達前の変換段を削減
GPUは大量の並列演算を担うプロセッサで、実際の駆動電圧は800Vを大幅に下回る。そのため、800Vで配電された電力も、チップ周辺では低い電圧へ変換しなければならない。
ルネサスのホワイトペーパーに示された多段方式の例では、800Vからまず48V、続いて12Vへ降圧し、最後にチップが必要とする電圧まで下げる。
これに対し、ルネサスが開発する新方式では、800Vから6Vへ直接変換し、その後に最終段の降圧を行う。
従来の多段降圧方式であれば、成熟した48Vや12V向けの電源部品や設計を活用でき、多様な機器との組み合わせもしやすい。 (関連記事: 【新新聞】TSMC増産で電力需要が急増 台湾の長期需給報告、新規電源は追いつくのか | 関連記事をもっと読む )
一方、800Vから6Vへ直接変換する場合は、より大きな降圧比に対応しながら、低電圧側で生じる大電流への対応や放熱も両立させる必要がある。













































