中国人民解放軍の北部戦区に所属する空母「遼寧」の打撃群は先ごろ、フィリピンをほぼ一周する形でフィリピン海に入った。10月28日には東部戦区海軍がさらに西太平洋へ艦艇を送り込み、29日午前10時の執筆時点では日本側から新たな発表は出ていなかった。中国海警局の船舶も西太平洋へ進出している。
日米が規模を拡大して実施した共同統合演習「キーン・ソード27」は、航空、海上、地上配備型の対艦ミサイルなど多方面・多領域にわたり、中国軍への対応も念頭に置いた実戦的な訓練だったと筆者はみている。しかし、西太平洋を巡る軍事的な動きは、29日の演習終了とともに幕を閉じたわけではなさそうだ。米空母が今後中東方面へ向かうとみられるなか、筆者は西太平洋で日本がより大きな役割を担う構図になるとみている。
筆者は当初、南部戦区海軍の戦力まで加わるかどうかは分からないとみていたが、今後、中国軍による大規模演習に発展する可能性もあると懸念している。28日夜には台湾の国家安全会議(国安会)の呉釗燮秘書長が、中国軍の北部、東部、南部の3戦区海軍が第1列島線の外側で訓練していると明らかにし、台湾、日本、フィリピンが同時に明白な脅威に直面していると訴えた。「中国がまた選挙介入か?」との見出しで報じたメディアもあり、地域の関心が高まっている(下図参照)。

こうしたなか、ヘグセス米戦争長官と小泉進次郎防衛相はフィリピンで、日本の南西諸島から台湾、フィリピンへと連なる「第1列島線」を念頭に、防衛協力を強化し、中国に対する抑止力を高める方針で一致した。
中国軍の艦艇・航空機が大規模に外洋へ展開している背景には、近年、日米同盟が共同演習を段階的に拡大し、中国の軍事活動への抑止を強めていることがあると筆者はみている。今後、日本を中心に第1列島線での軍事協力が進むにつれ、中国軍による遠洋・遠海訓練もさらに頻繁になる可能性がある。
一方、24日にはマーシャル諸島で台風31号(インファ)が発生した。25日午前3時には中心付近の最大風速が毎秒25メートルとなり、西寄りに進みながら発達した。
筆者は、「遼寧」などの艦艇が台風の影響が比較的小さく、同時に航路上で米空母の活動をけん制し得るフィリピン海を選び、遠洋訓練を続ける可能性があるとみている。
「キーン・ソード27」 兵力配置と台風30号の二重の試練
日米共同統合演習「キーン・ソード27」は2026年10月19日から29日まで行われた。自衛隊は約4万5000人、車両約6100両、艦艇約40隻、航空機約260機を投入し、米軍は約1万2000人が参加した。さらにオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、フィリピンも加わった。
特筆すべきは、台風30号(チャンパー)が演習期間中、台湾や日本の南西諸島周辺に大きな影響を与えたことだ。 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )
米軍は、空母「セオドア・ルーズベルト」(CVN-71)と巡洋艦「チョーシン」(CG-65)、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いせ」(DDH-182)、護衛艦「こんごう」(DDG-173)、「あさひ」(DD-119)、オーストラリア海軍のフリゲート「スチュアート」(FFH153)、カナダ海軍のフリゲート「レジャイナ」(FFH334)、フランス海軍のフリゲート1隻などが、21日にフィリピン海で編隊を組んで航行したと発表した。報道によれば、「こんごう」は護衛艦「まや」(DDG-179)とともに対抗部隊役を務めたとされる。
地理的な位置関係から、筆者はこのフィリピン海での行動について、日米を中心とする艦艇が台風の外側の風雨域を避けつつ、複雑な気象・海象の下で多国間の海上共同行動を行ったものとみている。
一方、中国の「南シナ海戦略態勢感知計画(SCSPI)」は、米空母とカナダ艦が23日に日本の南方、大隅海峡の東側海域で活動していたとしている。前後の航跡を見ると、艦隊は時間の経過とともに南から北へ移動し、25日には米空母が四国東方の海域に、26日には再び南下したとされる。この時期、中国の軍事専門家からは「米中の空母がフィリピン海で対峙する」との見方も出た。

台風30号(チャンパー)は10月15日午後3時、マーシャル諸島で発生し、その後発達しながら台湾や日本の南西諸島方面へ進んだ。このため、今回の演習には実際の厳しい気象条件下での安全管理という課題も加わった。
日本メディアの22日の報道によると、米軍は訓練の安全性を日々再評価するとし、悪天候も部隊や装備を極端な条件下で運用する経験につながるとしていた。
23日には台湾で多数の航空便が欠航し、一部地域で休業・休校となったほか、沖縄県の一部の島でも航空便の乱れや停電が発生した。台風は演習全体を中止する要因にはならなかったものの、一部科目は中止・変更され、航空輸送、海上航行、基地支援、後方支援の調整、人員の安全などを同時に試す要素となった。
台風30号は23日夜に与那国島付近を通過した後、東シナ海を北上し、25日午後9時に温帯低気圧へ変わった。
作戦面から見れば、台風は飛行の安全上の制約や海況の変化、一部基地の運用に不確実性をもたらした。特にオスプレイの移動、水陸両用活動、洋上補給、南西諸島間の兵力移動などは実際の天候に応じた調整を迫られた。
23、24日には米海兵隊の部隊と空母「セオドア・ルーズベルト」の艦載機が地上発射システムと連携し、洋上標的への攻撃訓練を行った。
陸上自衛隊の25式地対艦誘導弾の発射機は、四国沖や九州南西の海域に進入する敵艦艇への対処を想定し、25日に長崎、佐賀両県にまたがる大野原演習場で実弾を装填しない模擬訓練を実施した。28日には静岡県の陸上自衛隊東富士演習場で高機動ロケット砲システム「ハイマース」の実弾射撃訓練が行われた。
2回の「キーン・ソード」を比較 兵力を拡大、領域横断の訓練が深化
2024年の「キーン・ソード25」は10月23日から11月1日まで行われ、自衛隊は約3万3000人、艦艇約30隻、航空機約250機を投入した。米軍は約1万2000人、艦艇約10隻、航空機約120機を投入し、オーストラリアとカナダが一部の訓練科目に参加した。
演習は共同対艦作戦、統合防空・ミサイル防衛、島しょ防衛、海上交通路の安全確保、水陸両用・空挺作戦、重要施設の防護、後方支援・衛生、統合指揮通信などを網羅した。 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )
このとき中国軍は、「キーン・ソード25」が始まる9日前の10月14日、「聯合利剣-2024B」を実施した。中国側は、頼清徳総統の双十節演説への反発を背景に実施したと位置づけた。
東部戦区の発表によれば、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍を動員し、台湾海峡と台湾の北部、南部、東部の海空域で、海空の戦備警戒パトロール、主要港湾・海域の封鎖、海上・陸上目標への攻撃、統合的な制権獲得などの科目を実施した。
北部戦区の「遼寧」空母編隊も台湾東方の海空域で、艦艇と航空機の連携、統合制空、対艦・対地攻撃などの訓練に加わった。
台湾国防部(国防省に相当)の集計では、14日から15日までの24時間に、中国軍機延べ153機、艦艇14隻、公務船12隻を確認し、このうち延べ111機が台湾海峡の中間線を越えるなどして台湾の北部、南西部、東部の空域に入った。
中国軍は「キーン・ソード25」開始の9日前に、台湾海峡方面を明確に意識した統合作戦の演習を展開していたことになる。

こうした前後関係は、2024年10月の地域の軍事活動が極めて密集していたことを示している。
「キーン・ソード25」は日本の防衛、島しょ防衛、対艦、防空・ミサイル防衛、海上交通路、多軍種の統合運用に重点を置いた。一方、「聯合利剣-2024B」は台湾周辺を主な訓練空間とし、海空パトロール、封鎖、攻撃などを公表科目としていた。
海空戦力の連携、海上交通路、地域防空、対艦攻撃など、比較可能な部分はあるものの、作戦区域、指揮系統、公表された任務目標は異なる。このため、中国軍の演習が「キーン・ソード25」への直接的な対抗措置だったと断定することはできない。
2026年の「キーン・ソード27」では、自衛隊が公表した参加規模が約4万5000人、艦艇約40隻、航空機約260機に拡大し、7カ国のパートナー国が参加した。宇宙、サイバー、電磁波といった領域横断の訓練も明確に打ち出された。
2回を比較すると、自衛隊は人員が約1万2000人、艦艇が約10隻、航空機が約10機増えている。ただし、人数や装備の増加だけで、全体の作戦能力が同じ割合で向上したと断じることはできない。
統合幕僚長によれば、今年は日米の共同対処と自衛隊の統合運用能力に重点を置き、宇宙、サイバー、電磁波を含む領域横断作戦を盛り込んだ。
日米のオスプレイは宮古、石垣の両空港を使用し、訓練は日本の南西諸島と周辺の海空域に及んだ。陸上自衛隊の訓練項目には陸上での防御準備、防御戦闘、多国間部隊との連携が含まれ、演習全体では防空・ミサイル防衛、対艦、水陸両用作戦、掃海、情報、補給、退避などを扱った。
日米にとって、この演習は統合作戦の手順における調整・支援上の課題を洗い出し、宇宙、サイバー、電磁波、分散運用といった領域横断の項目を強化する機会となる。筆者は、日米がより複雑な作戦連携能力の検証を進めているとみている。
中国軍にとっても、日米の基地運用、海空の通路、領域横断の支援、多国間連携の方法を分析するうえで重要な事例となる。 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )
一方、今回の公開情報からは、中国陸軍や空軍、さらには地理的に関連するロケット軍部隊の同時期の反応を十分に確認することはできず、主に確認されたのは中国海軍艦艇の展開だった。
中露の情報収集機・艦が相次ぎ活動 中国軍艦艇も西太平洋へ
筆者は海軍の操艦や海上戦術の実務には詳しくない。しかし、数十年にわたり海戦史や戦術、中国軍の関連文献、日本側が公表する中国海軍艦艇の動向を長期的に観察し、裏付けと比較分析によって不足を補ってきた。
推測は、自分の想像や運、メディアの速報、読者の目を引く刺激的な見出しだけに頼ってはならない。政治的な立場や利害、読者の記憶の薄れに乗じて分析を済ませるのではなく、合理的で事実に即した分析を行うため、研究方法の基本を徹底する必要がある。
筆者は10月20日の分析で、北部戦区の「遼寧」打撃群が14日に石垣島の南約250キロの海域に位置し、艦載機の発着艦訓練などを行ったことから、「キーン・ソード27」で石垣島に展開した「ハイマース」や、与那国島に展開した地上配備型対艦ミサイルを念頭に、制空・制海、対地攻撃を模擬した可能性があると判断した。
台風30号が南西諸島に接近し、一部訓練が中止・変更された23日、筆者は「遼寧」打撃群について、短時間で行動して離脱する戦術を取り、東部戦区の海空戦力による「統合戦備警戒パトロール」と連動した可能性があるとみた。
これは北部、東部の2戦区による、作戦レベル(中国語で「戦役級」)の連携を意識した活動で、台湾を東西から挟むと同時に、日本の南西諸島や日米同盟に対するけん制を意図した可能性があるとの分析だ。
それ以前、台湾と中国のメディアが、中国軍の「五海連動」は日米台を狙ったものだと報じた際には、筆者は過去の事例を基に、年度計画に基づく中国沿岸近海での定例の実弾射撃訓練だとして反論していた。

こうした推論について、23日には政府系シンクタンクの研究者が「遼寧艦編隊の西太平洋でのわずか2日ほどの演習は、日米共同演習の開始前に武力を誇示し、中国が決して恐れない姿勢を外部に示す狙いがあった」との見方を示した。論旨は筆者の分析と重なる部分があり、中国の軍事専門家からも同様の指摘が出ている。
また、日本側が15日に「遼寧」艦隊がバシー海峡方面へ向かったと公表した際、筆者は、同日にフィリピンの艦艇や航空機が黄岩島(スカボロー礁)周辺で活動したことを踏まえ、中国軍が空母を南シナ海へ進め、フィリピンに対して領有権を守る姿勢を示そうとした可能性があると判断した。この点については、前述の政府系シンクタンク研究者の分析には含まれていなかった。
日本側から1週間近く中国空母艦隊について新たな情報が出ないなか、23日には「遼寧艦がスールー海、ミンダナオ島付近に出現、ドゥテルテ一族を後押しか?」との趣旨で報じたメディアもあった。
しかし筆者は、中国が米国と同じように軍事力を用いて直接、他国の国内政治へ介入するとの見方には慎重であるべきだと考える。こうした見出しは、読者の目を引き、アクセスを集めることを優先した側面が強い。 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )
北部戦区の「遼寧」打撃群が南下した狙いについて、筆者は次のようにみている。
第一に、前述の通り、東部戦区を支援し、同時並行で連携訓練を行うこと。
第二に、ドック入りして整備・改修中の空母「山東」に代わって南下し、南部戦区を支援することで、フィリピンの東西両側に戦略的な圧力を加えること。
第三に、今回の「遼寧」艦隊は反時計回りにフィリピンを周回した。2024年9月20日に時計回りで西太平洋へ入り、10月1日まで遠洋訓練を行った後、2日にミンダナオ島南方の海域へ向かい、8日までに海南島の三亜港へ入り、補給・整備を行った際とは異なる。
今回は南シナ海からスールー海を抜け、「セオドア・ルーズベルト」打撃群が西太平洋で同盟国海軍との共同演習を終えた後にフィリピン方面へ移動する可能性を念頭に、先回りする形で展開した可能性があると筆者はみている。
第四に、筆者は「セオドア・ルーズベルト」が「キーン・ソード」終了後に中東方面へ向かう可能性があり、南シナ海に長期間とどまる可能性は低いとみている。
このため、太平洋では米空母のプレゼンスが一時的に薄くなる「空白期」が生じる可能性があり、「遼寧」艦隊は10月下旬、フィリピン海で遠洋訓練を行っている。
052D型駆逐艦「チチハル」(艦番号121、前回は054B型フリゲート「漯河」〈同545〉)の護衛下で、空母への補給を担い「空母の乳母」とも呼ばれる901型総合補給艦「呼倫湖」(同901)と合流し、機をみて補給を受ける可能性がある。
北部、東部、南部の各戦区海軍の作戦・支援戦力が相次いで西太平洋へ展開するなか、筆者は、こうした活動が「聯合利剣」や「機動」シリーズに類似した大規模な合同演習へ発展する可能性もあるとみている。その根拠となる動向は以下の通りだ。
日米同盟は10月19日から「キーン・ソード27」を開始した。中国軍はこれまでにも、日米などが西太平洋やフィリピン海で共同演習を行う時期に、艦艇や航空機を複数のグループに分けて派遣し、第1列島線の内外の海空域で軍事活動を活発化させてきた。
今回も、活動の形態には「聯合利剣」シリーズを想起させる部分があると筆者はみている。
ロシア太平洋艦隊も10月17、22、23日にIl-20情報収集機を派遣し、日本の東北、中部、中国地方の沿岸沖で電子情報の収集活動を行った。27日にはロシア海軍の情報収集艦(艦番号535)が日本海から対馬海峡を経て東シナ海に入った。
日本側は10月19日と28日、中国軍の無人機BZK-005とY-9情報収集機が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過して西太平洋へ入り、沖縄東方や奄美大島東方の空域で旋回・折り返したと公表した。
また無人機TB-001は東シナ海から与那国島と台湾の間の空域を南下して西太平洋へ出た後、北東へ向かい、沖縄北東の空域に至った後、宮古海峡を経て東シナ海へ戻った。 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )
20日には、Y-9情報収集機1機が午前から午後にかけて沖縄北西から九州南西の東シナ海上空で活動したほか、別のY-9哨戒機1機が東シナ海から宮古海峡を経て北東へ進み、奄美大島南東の空域で引き返した。
筆者は、このY-9哨戒機について、中国東部沖から西太平洋にかけて日米の潜水艦を意識した探知任務を行っていた可能性があるとみている。28日にも中国軍機の東シナ海での活動が確認されている。
21日と27日にも、Y-9情報収集機1機が午前から午後にかけて東シナ海から宮古海峡を経て北東へ進み、奄美大島南東の空域で折り返した。
ロシア軍が日本海で情報収集活動を行うことは、中国側の日本海方面での情報収集能力を補完する可能性がある。
特に22日から23日にかけて台風30号が日本の南西諸島や台湾周辺に大きな影響を与えた際、東部戦区は南西諸島の西方から九州南西、宮古海峡から奄美大島東方の空域に、有人・無人の偵察機を派遣していなかった。
台風が台湾周辺から離れた25日には、台湾国防部の発表を基にすると、中国軍の無人機1機が台湾南西からバシー海峡を経て台湾南東端付近に至り、東のフィリピン海方面へ向かったと推定される。
筆者は、この無人機が、23日にフィリピン最南端のバルト島(Balut Island)の東南東約25海里に到達し、その後北東へ向かった「遼寧」打撃群に対し、海空目標に関する情報を提供した可能性もあるとみている。
フィリピン海は、南下する日米艦艇や北上するオーストラリア、ニュージーランドなどの艦艇をけん制し得る位置にあり、南シナ海側の中国海軍戦力と合わせれば、フィリピンを東西から挟む形で圧力を加えることも可能だ。
さらに、24日に発生した台風31号(インファ)の進路を踏まえると、「遼寧」などの空母編隊が行う遠洋訓練への影響は比較的小さいと筆者はみている。
日本側は10月19日、中国艦艇3隻(艦番号122、576、889)が16日から17日にかけて西太平洋から沖縄本島と宮古島の間を通過して東シナ海に入ったと公表した。
また、中国艦艇2隻(同121、901)が16日から17日に東シナ海から大隅海峡を経て西太平洋へ入り、その後17日から18日にドンディアオ級情報収集艦(同798)も大隅海峡を経て西太平洋へ出た。
別のドンディアオ級情報収集艦(同796)は17日、東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過して西太平洋へ入った。
こうした動きを見ると、16日から19日にかけて、防衛省統合幕僚監部は日本周辺の海空域で相次ぐ中国軍艦艇・航空機の活動を継続的に追跡していたことが分かる。
このうち、北部戦区の052D型駆逐艦「唐山」(同122)、054A型フリゲート「大慶」(同576)、903A型総合補給艦「太湖」(同889)は、筆者が378日にわたり追跡してきた第48次アデン湾護衛艦隊で、任務終了後の23日に青島港へ帰還した。
筆者は、これらの艦艇があえて第1列島線の中央部にある海上の戦略的通路を通過したことには、日本側の警戒・監視態勢を分散させる狙いもあった可能性があるとみている。 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )
北部戦区の052D型駆逐艦「チチハル」(同121)と901型総合補給艦「呼倫湖」(同901)は、前回の宮古海峡とは異なり、今回は大隅海峡を選んだ。
筆者は、これについて、各方面の注意を北側へ引きつける一種の陽動となり、南シナ海で活動する「遼寧」打撃群への注目をそらす効果を狙った可能性があると考えている。
続いて東部戦区の815A型電子偵察艦「玉衡星」(同798)も西太平洋へ入り、北部戦区海軍の815A型電子偵察艦「開陽星」(同796)も宮古海峡を経て西太平洋へ出た。
この2隻がそれぞれ東部戦区と北部戦区に所属していることから、筆者は、複数の戦区海軍による作戦レベルの統合監視・偵察を意識した動きだった可能性があるとみている。
10月20日午前10時43分以降、中国軍機延べ27機が活動し、このうち延べ21機が台湾海峡の中間線とその延長線を越え、台湾の北部、中部、南西部と西太平洋の空域に進入した。台湾国防部は、中国艦艇と連携して「統合戦備警戒パトロール」と「遠海長航(遠洋長距離飛行)」を行ったとしている。
台湾国防部は後者にH-6爆撃機が参加したと明らかにしており、筆者は過去の活動形態から、外国軍の大型水上艦艇への空対艦ミサイル攻撃を想定した訓練が含まれていた可能性があるとみている。
筆者は、東部戦区のこうした態勢が、従来バシー海峡を通って南シナ海へ入っていた米海軍の空母打撃群に対し、フィリピン海からフィリピン諸島の内側を経て南シナ海へ入る別ルートの選択を促す圧力になり得ると考えている。

中国空軍のH-6爆撃機。(自衛隊公式サイトより)
日本側は20日、中国海軍の艦艇(艦番号532)が19日に東シナ海から大隅海峡を経て西太平洋へ入ったと公表した。
これは東部戦区の054A型フリゲート「荊州」(同532)で、筆者は、情報収集艦の護衛を主な任務としつつ、北部戦区の総合補給艦を含む編隊の対潜警戒を兼ねていた可能性もあるとみている。
27日には日本側の発表と航跡図から、中国艦艇4隻(同102、903、117、546)が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過して西太平洋へ入ったことが確認された。
いずれも北部戦区海軍に属し、055型駆逐艦「拉薩」(同102)と903A型総合補給艦「可可西里湖」(同903)、052D型駆逐艦「西寧」(同117)と054A型フリゲート「塩城」(同546)の2グループに分かれていた。
筆者は、遠洋補給を担うグループと海上の即応戦力が前後して南下し、「遼寧」艦隊との合流や、紅軍・青軍に分かれた対抗訓練を行う可能性があるとみている。
28日には東部戦区の055型駆逐艦、052D型駆逐艦、054A型フリゲートと中国海警局の船舶が東シナ海から大隅海峡を経て西太平洋へ入ったことを、日本側が公表した。
同日夜には、相次ぐ中国軍の動きを受け、呉釗燮氏も南部戦区海軍の戦力がフィリピン・ルソン島東方の海域で訓練していると明らかにした。 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )
筆者が特に注目しているのは、北部、東部、南部の3戦区海軍が同じ時期に第1列島線の外側で活動している点だ。仮にこれらの戦力が一体となった大規模な合同演習へ発展すれば、単一の作戦レベルの活動だけでは説明しにくい規模になる。
日米が北大西洋条約機構(NATO)加盟国の軍事力との連携をインド太平洋でも拡大するにつれ、中露の同地域での軍事協力も緊密さを増している。
中露は海上での合同演習、共同パトロール、空中での戦略的共同飛行などを通じ、戦略・戦術面での連携と交流を深めてきた。
筆者はこの10年近く中露の海上・空中での合同訓練を観察してきたが、両国が情報収集艦・機を頻繁に運用し、戦略レベルの情報・監視・偵察を相互に補完する態勢を形成しつつある可能性があるとみている。
一方、日本とフィリピンの軍・沿岸警備機関が連携し、第1列島線から西太平洋にかけて中国軍の空母や戦闘艦の活動を継続的に監視する体制も、今後さらに整備されると考えられる。
日米と多国間の訓練は兵力を拡大 中国軍は複数方向で活動
2024年の「キーン・ソード25」と2026年の「キーン・ソード27」を総合すると、日米は大規模な実動演習を通じて、陸海空戦力の連携、島しょ防衛、対艦、防空・ミサイル防衛、後方支援能力の検証を続けていることが確認できる。
2026年は自衛隊が公表した参加規模をさらに拡大し、宇宙、サイバー、電磁波といった領域横断の科目をより強く打ち出した。
中国軍側は、2024年には「キーン・ソード25」の開始前に「聯合利剣-2024B」を実施し、多軍種、「遼寧」空母編隊、台湾海峡周辺の海空戦力の動員を公表した。
2026年には、空母、駆逐艦、支援艦、電子偵察艦が日本周辺の異なる海域で活動していることが確認され、ロシアの情報収集機・艦も同時期に日本海から東シナ海にかけて活動した。
2回の「キーン・ソード」を比較しても、兵力の増加や活動の密度だけで、どちらが軍事的に優位かを判断することはできない。
筆者が見る日米側の強みは、目に見える形での多軍種統合、多国間参加、領域横断の訓練にある。一方で、実際の演習効果は基地、通信、後方支援、天候、各国間の連携手順などに左右されるという制約もある。
中国軍の強みは、異なる種類の艦艇や海空のプラットフォームを用いて複数方向で活動を維持し、公表された航跡を通じて遠洋での活動能力を示せる点にあると筆者はみている。
総じて言えば、日米の「キーン・ソード」演習は統合作戦能力の拡大を示している。一方、中国軍も台湾海峡での演習、空母の遠洋活動、水上艦艇の異なる航路、情報収集プラットフォームの活動を通じ、地域の軍事情勢において無視できない存在となっている。
最後に特に指摘しておきたいのは、日本側が今回、短時間で中国軍の艦艇・航空機の動向を相次いで把握し、公表した点だ。
日本側は休日には残業しないとの趣旨で報じたメディアもあった。実際、初期にウェブサイトへ掲載された情報には、一部リンクの混乱もみられた。 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )
しかし、わずか1日のうちに中国軍の艦艇・航空機が複数の方向で多数活動しており、その確認と情報整理にあたる担当者には相当な時間的負担がかかったと考えられる。
中国軍の電子偵察艦やロシアの情報収集艦の特性、中国軍の関連文献などから筆者が観察するところでは、日本側の電子情報収集部隊も、中国軍と同様、平時から日本周辺海域で活動する中国艦艇について、対水上捜索レーダー、対空レーダーなど各種レーダーの電子諸元を幅広く収集していると考えられる。
艦艇は洋上を航行する際、通常、対水上捜索レーダーなどを作動させる必要があり、平時には各艦の電子諸元に一定の特徴があるため、継続的に記録・蓄積することができる。
電子情報収集装置に過去に蓄積した艦艇の電子諸元を入力しておけば、自動で探知・照合し、特徴が近い電波を確認した場合、それをレーダーによる追跡や、その後の艦艇・航空機による識別・確認の手掛かりとすることができる。
これは今回の「キーン・ソード27」で特に強調された電磁波領域、すなわち実際の戦闘に先立って電子戦上の優位を確保する考え方とも符合する。
さらに今回特筆すべきなのは、中国の軍事専門家が、「遼寧」は15日に日本側の監視下でバシー海峡方面へ進んだ後、約1週間「姿を消した」と指摘したことだ。
しかし、実際にはそうではなかった。フィリピン軍と現地メディアが後に明らかにしたところでは、フィリピン海軍、空軍、沿岸警備隊がその動きを継続的に監視していた。
日比間でこうした情報共有と目標監視が行われていることは、両国の安全保障協力の仕組みが一段と深まっていることを示している。
日本が艦艇・航空機、レーダー、監視・探知装備などの供与や移転を進めるなか、フィリピンによる海空目標の監視能力も今後、段階的に向上していくと筆者はみている。
※筆者の陸文浩氏は中華戦略学会研究員。
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編集:梅木奈実 (関連記事: 【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か | 関連記事をもっと読む )













































