【乳がん医療の現場②】江戸川病院、BNCT臨床研究で乳がんの腫瘍消失例を報告 再発・初発乳がんで確認

江戸川病院のBNCTによる乳がん治療は、高い細胞選択性を特徴とし、臨床研究では安全性と治療効果の両面で良好な経過が報告されている。海外からの患者の受け入れ体制も整えながら、着実に治療実績を積み重ねている。(黄信維撮影)
江戸川病院のBNCTによる乳がん治療は、高い細胞選択性を特徴とし、臨床研究では安全性と治療効果の両面で良好な経過が報告されている。海外からの患者の受け入れ体制も整えながら、着実に治療実績を積み重ねている。(黄信維撮影)

社会福祉法人仁生社江戸川病院(東京都江戸川区)は2026年3月27日、次世代の放射線治療として期待されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に関するプレス説明会を開催し、特定臨床研究のフェーズ2(有効性確認段階)で得られた良好な治療経過を報告した。

同院は2024年8月から、FDG-PET陽性の浅在性腫瘍を対象とした臨床研究を実施しており、登録された10例全例でBNCT治療と必要な経過観察を終えた。

今回の報告では、再発乳がんと、手術を受けていない初発乳がんの症例で、画像診断上の腫瘍消失を示す完全奏効(CR)が確認された。

治療に伴う有害事象は主に軽度から中等度にとどまり、一部の症例で認められた照射部位に関連する脱毛についても、数カ月後に発毛が確認されるなど、治療効果と安全性の両面で有望な経過が報告された。

BNCTとは ホウ素と中性子の核反応でがん細胞を選択的に攻撃

BNCTは、がん細胞に集積しやすいホウ素化合物を点滴投与し、体外から中性子線を照射することで、細胞内に核反応を起こし、がん細胞を選択的に破壊することを目指す放射線治療法だ。

乳がん細胞では、アミノ酸トランスポーターの一種である「LAT1」が高発現する傾向があり、ホウ素製剤を取り込みやすいことから、BNCTの治療対象として期待されている。

さらに、同院の説明によると、BNCTはマイクロメートル単位でがん細胞を攻撃するため、周囲の正常組織や免疫細胞への影響を抑えられる可能性がある。

また、破壊されたがん細胞の抗原を免疫細胞が認識し、照射していない離れた部位の転移巣にも抗腫瘍効果が及ぶ「アブスコパル効果」についても期待を寄せている。

ただし、こうした全身的な免疫効果が乳がんに対するBNCTで確立されているわけではなく、さらなる検証が必要とされる。

江戸川病院のBNCT乳がん治療は高い細胞選択性と安全性を示し、海外患者の受け入れ態勢を整えながら着実な成果を上げている。黃信維
江戸川病院のBNCTによる乳がん治療は、高い細胞選択性を特徴とし、臨床研究では安全性と治療効果の両面で良好な経過が報告されている。海外からの患者の受け入れ体制も整えながら、着実に治療実績を積み重ねている。(黄信維撮影)

BNCT治療は計34例、乳がんは20例 再発・初発乳がんで腫瘍消失を確認

実際の臨床現場では、乳腺外科と放射線科が緊密に連携し、治療を進めている。

同院によると、2026年3月末時点のBNCT治療実績は計34例に達し、このうち約6割に当たる20例が乳がん患者だった。また、海外から治療を受けに来日した患者も14例含まれている。

具体的な症例としては、治療前に約37ミリあった再発乳がんの腫瘍が、BNCT実施3カ月後の画像診断で消失し、腫瘍マーカーも約半分に低下したケースが報告された。

また、手術を受けていない初発乳がんの症例では、治療1カ月後に触診で腫瘍が確認できなくなり、その後の画像診断でも腫瘍の消失が認められた。

BNCTは原則1回の照射 自由診療の費用は日本居住者約440万円

江戸川病院では、臨床研究と並行して、2024年12月から自由診療によるBNCTの提供も開始している。

治療費は日本居住者が約440万円、海外在住者は約880万円とされ、通常は2泊3日の入院期間中に、約40~60分の中性子線照射を原則1回行う。

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