茨城県日立市で創業78年を迎える老舗和菓子店「菓匠風月」を運営する株式会社常陸風月堂の3代目代表取締役、藤田浩一氏が、台湾のニュースメディア「風傳媒(ストームメディア)」の独占書面取材に応じた。
藤田氏は、現在わずか8軒の農家が栽培する希少なブランド栗「飯沼栗」を守るための取り組みや、独自の冷凍技術による伝統的な和菓子づくりの革新、台湾市場での成功を足がかりとした世界展開への展望について語った。
生産農家はわずか8軒 GI登録の高級ブランド「飯沼栗」が直面する危機
茨城県茨城町で生産される「飯沼栗」は、ひとつのイガに実をひとつだけ残して育てる「一毬一果(いっきゅういっか)」を目指した、手間のかかる独自の栽培方法で知られる高級ブランド栗だ。
2017年には、国の地理的表示(GI)保護制度に登録された。
市場での取引価格は一般的な国産栗の約2倍に達する一方、生産に携わる農家はわずか8軒にとどまり、収穫量も極めて限られている。
藤田氏によると、2026年の収穫量は過去50年間で最も少なく、天候に大きく左右される生産農家の経営基盤は深刻な危機に直面しているという。
希少な栗を生かした「万羊羹 常陸」 手仕事で一本の価値を高める
藤田氏が飯沼栗を使った和菓子づくりに乗り出したのは、その優れた風味に強い衝撃を受けたことがきっかけだった。
「職人としてどうしてもこの栗を使った美味しいお菓子を作りたい」と決意し、1年間にわたる試行錯誤の末、看板商品となる栗蒸し羊羹「万羊羹 常陸」を完成させた。
藤田氏は、飯沼栗の収穫量が少ないことを弱点とは捉えず、希少な素材を生かして一本当たりの価値を徹底的に高める道を選んだ。
厳選したあんに、職人が一粒ずつ手作業で皮をむいた栗を惜しみなく加え、約1時間かけて蒸し上げる。素材の持ち味を引き出すため、手間を惜しまない製法を貫いている。
農家の希望価格で買い取り 生産者とともに飯沼栗の価値を守る
藤田氏の取り組みで特徴的なのは、栗の生産者を単なる仕入れ先として扱わず、農家自身が希望する価格で買い取る仕組みを導入したことだ。
市場での買いたたきや、生産者が価格決定権を持てない状況が後継者不足につながっていると考え、農家が設定した価格で買い取ることで、生産者への支払額を引き上げた。
希少な飯沼栗の価値を高めると同時に、和菓子の高付加価値化を進め、その成果を生産者に還元することで、8軒の農家と共存共栄できる将来を目指している。
初出店となった伊勢丹新宿店の和栗催事でも、「ここまで栗を感じられるものは初めて」といった高い評価が寄せられ、取り組みに手応えを得たという。
独自の冷凍技術で保存期間を1年に 伝統を守りながら和菓子を革新
創業以来受け継がれてきた職人の手仕事や、地元に根差した菓子づくりを守る一方、藤田氏は現代の市場に対応するための技術革新にも取り組んできた。 (関連記事: 島根・松江の伝統銘菓がパフェに進化 日本三大和菓子処を巡る新観光企画「パフェ旅」が2027年1月始動 | 関連記事をもっと読む )
従来、賞味期限が3日程度と短かった羊羹について、独自の冷凍技術を開発。品質を維持しながら冷凍状態で最長1年間の保存を可能にし、遠方の消費者にも商品を届けられる体制を整えた。













































