【乳がん医療の現場③】江戸川病院の「上方照射型BNCT」は何が違う? 専門医が語る乳がん治療の可能性と海外患者受け入れ

江戸川病院は、独自の上方照射技術を強みに乳がんに対するBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)を実施し、患者の身体的負担の軽減と生活の質(QOL)の維持を目指しながら、着実に治療実績を積み重ねている。(黄信維撮影)
江戸川病院は、独自の上方照射技術を強みに乳がんに対するBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)を実施し、患者の身体的負担の軽減と生活の質(QOL)の維持を目指しながら、着実に治療実績を積み重ねている。(黄信維撮影)

東京都江戸川区の江戸川病院で、次世代の放射線治療として期待されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を活用した乳がん治療が進められている。

台湾のニュースメディア『風傳媒(ストームメディア)』の独占インタビューに応じた同院の専門医らは、BNCTを用いた乳がん治療の最前線や具体的な治療実績、海外患者の受け入れ体制について、詳細なデータを交えて語った。

同院は「あきらめないがん治療」を理念に掲げ、手術を伴わない乳がん治療の新たな選択肢として、BNCTを自由診療で提供している。治療効果や安全性に関する臨床研究が進む中、短期間で治療を行える点も含め、国内外から注目を集めている。

江戸川病院は独自の照射技術を強みに乳がんに対するBNCTを展開し、患者の負担軽減と生活の質維持を両立させた治療実績を築いている。黃信維
江戸川病院は、独自の上方照射技術を強みに乳がんに対するBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)を実施し、患者の身体的負担の軽減と生活の質(QOL)の維持を目指しながら、着実に治療実績を積み重ねている。(黄信維撮影)

BNCTと従来の放射線治療の違い 中村達也医師が語る「細胞選択性」

同院の放射線科統括部長、中村達也医師へのインタビューでは、10項目にわたる質問を通じ、BNCTの特徴や乳がん治療への応用について詳しい見解が示された。

従来のX線治療や陽子線治療との最大の違いについて、中村医師は「細胞選択性」を挙げた。

従来の放射線治療では正常細胞にも影響が及び、色素沈着などが生じる場合があるのに対し、BNCTはホウ素を取り込んだがん細胞を選択的に攻撃できるため、正常組織への影響を抑えられると説明した。

こうした特性から、過去に放射線治療を受けた患者に対しても、再照射を検討できる点が大きな特徴だという。

江戸川病院の上方照射型BNCT「CICS-2」 乳がん治療に適した理由とは

乳がん治療に力を入れている背景には、同院が導入したBNCT装置「CICS-2」の構造的な特徴がある。

中村医師によると、同装置は中性子線の照射口が上部に設けられており、乳房に近い位置から照射できることが強みだという。

BNCTの治療対象となるのは、原則として体表から約6センチ以内にある比較的浅い腫瘍だ。そのため、体表に近い乳房の病変は、同装置の特性を生かしやすい部位とされる。

また、中村医師は、周囲の筋肉や脂肪が緩衝材のような役割を果たし、深部にある胃や腸などの臓器への影響を抑えられる点も利点として挙げた。

さらに、側面から中性子線を照射する装置では患者が横向きの姿勢を取る必要があるのに対し、同院の上方照射型装置では、仰向けの安定した姿勢で治療を受けられる。

中村医師は、こうした照射方法の違いが、治療時の安定性や安全性の確保、正確な照射につながっていると説明した。

BNCTは原則1回の照射、2泊3日の入院 治療後の副作用や適応条件は

実際の治療について、中村医師は、原則として約40~60分の中性子線照射を1回行い、入院期間は通常2泊3日になると説明した。

治療後には、照射部位周辺の脱毛や腫れ、近接する臓器への影響などによる吐き気が生じる場合があるという。 (関連記事: 【乳がん医療の現場①】江戸川病院、乳がん治療の新たな選択肢「BNCT」に挑む ロボット支援手術や独自の療養環境も | 関連記事をもっと読む )

回復の経過については、約2週間で症状が改善に向かい、約3カ月後には色素沈着が目立たなくなるケースもあると説明した。ただし、副作用の程度や回復までの期間には個人差がある。

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