シンガー・ソングライターで小説家のさだまさし氏が、日本外国特派員協会(FCCJ)の記者会見に登壇し、ウクライナ侵攻をきっかけに生まれた楽曲やAI時代の音楽、壮絶な家族史、孤独との向き合い方など、自身の半生と平和への思いを語った。
ウクライナ侵攻から生まれた「キーウから遠く離れて」
会見冒頭、さだ氏は、2022年2月24日に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻から約1週間後に制作した楽曲「キーウから遠く離れて」が生まれた背景について語った。
SNSや携帯電話を通じて戦争の生々しい映像が世界中に広まる中、ウクライナ南部ヘルソン州ヘニチェスクで、一人の女性がロシア兵に対し、「ポケットに花の種を入れておきなさい。あなたが死んだら花が咲くから」と語りかける姿に強い衝撃を受け、その日のうちに楽曲の構想を練ったという。
曲のタイトルについても、録音時の要望を受け、それまで日本で広く使われていた「キエフ」から「キーウ」へ変更した経緯を明かした。
また、長崎県出身で、被爆から7年後に生まれた自身の背景にも言及した。
原爆症で67歳で亡くなった叔母について、戦争そのものを憎みながらも、個人的な恨みを決して口にしなかったと振り返り、その姿勢が自身の客観的な戦争観につながっていると説明。平和を守ることは音楽家としての最大の使命だとの思いを強調した。
さだまさし氏、AI音楽を評価も「哲学」「文学」の欠如を指摘
AI技術の進化が音楽界に与える影響について問われると、さだ氏は、AIが生成する音楽の質そのものは評価しながらも、そこには「哲学」や「文学」が欠けているとの考えを示した。
ブラームスの死後約50年を経て出版された本に記された、「音楽作品は神と対話しなければ良いものはできない」という趣旨の言葉を紹介し、AIが偶然に優れた音楽を生み出すことはあっても、高い品質を維持し続けることは人間にしかできないとの見方を示した。
一方で、AIとの共同作業そのものについては可能性があるとした。
ただし、主導権は常に人間が持つべきだと強調。数多くのひな形を利用し、それらを組み合わせるAIの特性を踏まえ、コンピューターのせいにすることで、元となった作品の知的財産権や著作権を曖昧にしようとすることは「人間の悪い部分」だと警鐘を鳴らした。
祖父はスパイ、曾祖父は「侠客」 さだまさし氏が明かす家族史
会見では、自身の特異な家族史にも話題が及んだ。
父方では、祖母がウラジオストクで日本料理店を営んでいたという。
一方、祖父はウイグルやシベリア出兵をめぐる裏側で活動した優秀なスパイだったといい、その後、サハリンで森林開発に乗り出そうとした矢先、心臓発作で若くして亡くなったと明かした。
母方の曾祖父については、長崎で何百人もの荒くれ者を束ねる海産物問屋の元締めで、いわゆる「侠客」だったという。 (関連記事: 『VIVANT』の世界を体感 没入型イベント開幕、堺雅人・阿部寛・二宮和也ら録り下ろし音声も | 関連記事をもっと読む )
「スパイ」と「侠客」の血を引く自身の家族史について、NHKの取材スタッフからも「生きているうちに絶対に小説にするべきだ」と強いプレッシャーを受けていると、ユーモアを交えて語り、会場の関心を集めた。













































