2026年熊本地震の発生から1カ月余りが経過する中、人文地理学や防災・復興政策を専門とする大阪公立大学の菅野拓准教授が9月8日、日本記者クラブで会見した。
「なぜ繰り返すのか、どう変えるべきか」をテーマに、東日本大震災や2016年熊本地震、能登半島地震などの教訓を経てもなお、物資配送や避難所環境をはじめとする被災者支援の構造的な課題が繰り返されている現状を厳しく指摘し、現在の支援体制を抜本的に見直す必要性を訴えた。
2026年熊本地震でも繰り返された課題 平時の「縦割り」が災害対応に影響
菅野准教授は、発災直後の行政対応について、平時の縦割り組織をそのまま災害対策本部に移行させる運用が、業務の抜け漏れや特定部署への過重な負担を招いていると分析した。
災害時には、刻々と変わる状況を即座に把握し、判断と執行を繰り返す対応が欠かせない。
しかし自治体が平時の予算感覚のまま対応することで、災害対策本部の立ち上げそのものがうまく機能しないケースもみられると指摘した。
物資の「ラストワンマイル」と避難所の雑魚寝 10年前と変わらぬ問題
菅野准教授が特に問題視したのが、物資供給における「ラストワンマイル」の問題と、体育館での雑魚寝に象徴される避難所環境だ。
2016年熊本地震の後に政府などが検証課題として挙げた問題と、今回の状況が酷似していると強調した。
また、学校が長期間にわたって避難所や仮設住宅の用地として利用され続ける現状にも言及。子どもが義務教育を受ける権利を損なうものであり、国際的な基準に照らしても見直す必要があると警鐘を鳴らした。
災害救助法と災害対策基本法 被災者支援が抱える制度上の問題
日本の災害法制の成り立ちについても説明した。
1947年に制定された災害救助法は、もともと生存権保障の理念に基づき、厚生省主導でつくられた。一方、伊勢湾台風後に制定された災害対策基本法によって、災害対応はハード整備を中心とした復旧体制へと傾いていったという。
道路などインフラの復旧技術については、日本は世界的に高い水準にあるとする一方、被災者の暮らしを支えるソフト面では、場当たり的な法改正が重ねられてきたと指摘した。
その結果、罹災証明書の判定業務に膨大な人員が割かれるなど、実態と乖離した非合理な枠組みが維持されていると論じた。
災害ケースマネジメントを定着へ 「餅は餅屋」の支援体制を
菅野准教授は、平時には社会保障や食料流通を民間の医療機関やスーパーなどが担っているにもかかわらず、災害が起きると、経験のない市町村職員が避難所運営や物資調達を一手に担わされる構造そのものが、混乱の根本原因だと指摘した。
その解決策として、被災者一人ひとりが抱える課題を聞き取り、継続的に伴走しながら必要な支援につなげる「災害ケースマネジメント」の定着を挙げた。
同時に、それぞれの専門家が自らの専門性を生かす「餅は餅屋」の災害対応へ転換することが急務だと訴えた。
「市町村中心主義」から転換を 防災庁に制度改革への期待
今後の災害対応について菅野准教授は、大規模災害でも市町村にあらゆる責任を負わせる「市町村中心主義」の法体系を見直し、都道府県や国が責任を持って民間事業者や専門家集団と連携する体制を構築するよう求めた。
また、イタリアで実践されている、トイレ、キッチン、ベッドを迅速に導入する人権に配慮した避難所運営を例に挙げた。
設置に向け準備が進む防災庁については、各省庁への是正勧告権を持つ組織として専門性を蓄積し、災害対応の制度改革を牽引する役割に期待を寄せた。
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編集:梅木奈実













































