米国のトランプ大統領は21日、イランの指導部と交渉担当者が統一した提案を示すまで、対イラン軍事行動を「無期限で停止する」と表明した。だが、この発表に先立ち、トランプ氏は米経済専門チャンネルCNBCの朝番組「スクウォーク・ボックス」の電話インタビューに応じ、交渉がまとまらなければ爆撃を再開する用意があると強調していた。インタビューではイラン情勢に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)の本部改修費問題や、関税を巡る連邦最高裁の判断にも強い不満を示しており、強硬発言を連発した直後に停火へ転じた格好だ。
「交渉しなければ攻撃」 停火延長にも否定的
今回のインタビューで最大の焦点となったのは、5カ月に及ぶ米国とイランの武力衝突と、目前に迫る停火交渉の行方だった。トランプ氏は、イランには「選択肢がない」と断言し、交渉の席に着く以外に道はないと主張した。
その理由として、米軍は開戦後わずか3日間でイラン海軍の艦隊を壊滅させ、計159隻の艦艇を撃沈したと説明。さらに、イランの空軍、防空システム、レーダー施設も「完全に消し去った」と述べ、指導部を狙った精密攻撃も実施したと強調した。
トランプ氏はまた、これまで公にはイランの政権交代を約束したことはないとしつつも、今回の軍事行動を通じて、米国が「間接的に政権交代を実現した可能性がある」と語った。自身がオバマ前政権から引き継いだ米軍は「極度に疲弊した状態」だったが、第1次政権時代に巨額の再建投資を行った結果、現在では世界最強の軍になったと誇示した。
また、B2戦略爆撃機がイランの核施設を破壊したとした上で、米宇宙軍の衛星画像からは、イラン側が破壊された施設に入り、核関連物質の回収を試みた形跡も確認されたが、「破壊が徹底しすぎて何も回収できなかった」と主張した。
「いつでも爆撃できる態勢で交渉に臨む方がいい」
トランプ氏はさらに、イラン政権が過去2カ月で多数の抗議参加者を殺害したとも主張し、そうした体制に対しては「極端な措置」が必要だったと訴えた。イランの統治は「死と恐怖の上に成り立っている」との認識も示している。
停火期限について、交渉を促すために延長の余地があるかと問われると、トランプ氏はこれを明確に否定した。軍は停火期間を利用して弾薬補給を進めており、現在の戦力は4〜5週間前よりさらに強いと説明。今後1、2日以内に合意署名の具体的な展望が見えなければ、イランに対する爆撃を再開する用意があると威嚇した。
その上で、「いつでも爆撃できる態勢で交渉に臨む方が、より優れた戦略だ」と述べ、軍事圧力を維持したまま協議に臨む考えを隠さなかった。
中国の関与にも言及 「敏感物資積載船」を拿捕と主張
トランプ氏はインタビューの中で、中国の関与にも触れた。前日に米軍が敏感物資を積載した船舶を拿捕したと述べ、それが中国からの「贈り物」だった可能性があるとの見方を示した。
同氏は、中国の習近平国家主席との関係は良好で、一定の暗黙の了解もあると考えていただけに、この件にはやや驚いたと語った。ただし、詳細には踏み込まず、「戦争とはそういうものだ」と述べるにとどめた。
株価と原油価格に満足感 「市場は崩れなかった」
金融市場について、トランプ氏は株価と原油価格の推移に強い満足感を示した。インタビュー時点で、ダウ工業株30種平均は5万ドルに迫り、S&P500種株価指数も7000ポイント前後の高値圏にあるとし、イランへの武力行使前には、経済チームに対して「好調な経済指標に小さなシワが入るかもしれない」と警告していたと明かした。
当初、政権内では市場の急落や原油価格の急騰を懸念する声があったという。トランプ氏自身も、株価が2割下落し、原油が1バレル=200ドルに上昇する可能性を想定していたが、現実には原油価格は90ドル前後にとどまっていると説明した。
その理由については、世界の供給網が自律的に調整し、多くの船舶がテキサス州やルイジアナ州、アラスカ州などの代替供給源に向かったためだと分析した。
また、民主党指導部が早期撤退を求めていることにも不快感を示し、チャック・シューマー上院院内総務やハキーム・ジェフリーズ下院少数党院内総務を名指しで批判した。交渉の重要局面で撤軍論を唱えるのは、敵に不必要な希望を与える行為だとし、自身は「偉大な合意」をまとめるつもりであり、急ぐつもりはないと語った。
FRB本部改修費を批判 パウエル氏には「遅すぎる」と皮肉
トランプ氏はFRBを巡る人事や建物改修問題にも言及した。パウエル議長が5月に退任する見通しの中、後任候補とされるケビン・ウォーシュ氏を巡る議論や、司法省によるFRB本部ビル改修費の調査について問われると、強い不満をあらわにした。
トランプ氏は、当初2500万ドル程度で美しく改修できるはずだった建物が、今や40億ドル近い規模に膨らんでいると主張し、完成の見通しも立っていないと批判した。インタビュー中には一時、4000億ドルと言い間違えた後、「数十億ドル」に訂正する場面もあった。
また、歴史的建築物の内部が壊され、安価な資材に置き換えられていると批判し、自身の不動産開発の経験を引き合いに出して、ホテル建設の方がはるかに複雑だったと語った。
トランプ氏は、請負業者が巨額の利益を得ている可能性があるとして、司法省の調査は必要だと主張。現行のFRB本部ビルは事実上使い物にならず、次期議長がホワイトハウスの一室を借りなければならないかもしれないとまで述べた。パウエル議長については「常にワンテンポ遅い」と繰り返し批判した。
利下げ要求を改めて主張 「強い米国は最低金利であるべきだ」
今後の金融政策について、イラン情勢や原油高を背景に、当面利下げは難しいとの市場見通しに対して、トランプ氏は改めて不満を示した。米国のような強国は世界で最も低い金利を享受すべきだという従来の持論を繰り返し、スイスやデンマークのような国々が低金利を維持しているのは、米国から利益を吸い上げてきた結果だと主張した。
最高裁にも不満 関税還付やNIL判決を批判
トランプ氏は、連邦最高裁判所にも強い不満を示した。関税政策を巡る判決により、米政府が最大1650億ドルの関税を返還しなければならなくなったことに反発し、判事たちには「常識がない」と批判した。
既に徴収済みの関税を還付不要とする一文を加えるだけで、この資金は守れたはずだと主張し、そうしなかった最高裁は「国を救わなかった」と非難した。大企業の中には、アップルやアマゾンを含め、政権に配慮して関税還付を申請していない企業もあるとの見方に対し、トランプ氏は「それは非常に賢明だ」と応じ、自分はその恩義を忘れないと述べた。
また、大学スポーツにおけるNIL(氏名・肖像・肖像権)を巡る最高裁の判断についても、150年の歴史を持つ米大学スポーツの仕組みを壊したと批判した。奨学金を基礎とした従来の制度が、いまや完全に金銭中心の構造に変質したとし、大学スポーツ界は「ハンプティ・ダンプティのように元に戻せない」と悲観的な見通しを示した。
Anthropicや軍需産業にも矛先
テクノロジー分野では、AIスタートアップのAnthropic(アンスロピック)が政権からサプライチェーン上のリスクとして扱われている問題にも言及した。トランプ氏は、同社の関係者を「非常に賢いが急進左派寄りだ」と表現し、米軍の在り方に口出ししようとする姿勢は容認できないと述べた。
一方で、数日前にAnthropicの関係者がホワイトハウスを訪れ、有意義な協議を行ったことも認め、今後の協力余地は残されているとの見方も示した。OpenAIのサム・アルトマン氏など、他のAI業界幹部にも言及し、ティム・クック氏については「スティーブ・ジョブズ氏を上回る実績を残した」と称賛した。
さらに、国防産業については、かつて数百社あった米航空宇宙企業が統合で数社にまで減り、競争と効率が失われたと批判。レイセオンやロッキード・マーチンなどの大手企業が、自社株買いではなく工場建設に資金を回すべきだと強調した。
UAE称賛、NATOには厳しい見方
インタビュー終盤では、アラブ首長国連邦(UAE)との通貨スワップの可能性にも触れた。UAEは今回の衝突で大きな被害を受けたとし、流動性支援を含む協力の可能性を認めた。さらに、UAEは米国内への巨額投資も約束している「偉大な同盟国」だと評価した。
その一方で、北大西洋条約機構(NATO)に対しては厳しい姿勢を崩さなかった。今回の中東危機でNATOは実質的に傍観していると不満を示し、「張子の虎」にすぎないと切り捨てた。欧州諸国は米国に過度に依存している一方で、自らのエネルギー問題や移民問題を解決できなければ、将来的に深刻な危機に直面するだろうと警告した。