自衛隊、戦後初の海外で地対艦誘導弾実射へ 米比演習に1400人派遣

2024年5月6日、フィリピン北部で実施された合同軍事演習「バリカタン」において、北イロコス州パスキンのパレデス航空基地で装備品を運搬する米海兵隊員。(写真/AP通信提供)
2024年5月6日、フィリピン北部で実施された合同軍事演習「バリカタン」において、北イロコス州パスキンのパレデス航空基地で装備品を運搬する米海兵隊員。(写真/AP通信提供)

フィリピンと米国の定例共同演習「バリカタン26」が20日、開幕した。南シナ海および台湾海峡における地政学的リスクが急速に高まる中、19日間にわたる今回の演習で最も注目を集めているのが、日本自衛隊の本格参戦である。日本は、過去の人道支援や災害派遣という「オブザーバー」的な役割から脱却し、台湾からわずか360キロしか離れていないフィリピン北部へ、実戦能力を備えた精鋭部隊を投入した。これは戦後初の海外における実弾射撃演習となるだけでなく、米日比三か国による第一列島線での防衛協力が、より緊密な段階に入ったことを象徴している。

自衛隊の参加規模が拡大 支援中心から実戦的訓練へ

​今年の「バリカタン26」には計1万7000人以上が参加し、自衛隊も約1400人を派遣した。昨年の約150人から大幅な増員となり、日本の関与は一段と強まった形だ。防衛省統合幕僚監部は、多国間演習への参加について、各国との協力関係を強化し、「力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境を創出に寄与する」ことが目的だとしている。

2024年5月5日、米比合同演習「バリカタン」に参加し、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦「サマセット」(USS Somerset、LPD 25)の艦上で車両や装備を整理する米兵(AP通信)
2024年5月5日、米比合同演習「バリカタン」に参加し、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦「サマセット」(USS Somerset、LPD 25)の艦上で車両や装備を整理する米兵(写真/AP通信提供)

日本は2012年からオブザーバーとして同演習に参加してきたが、これまでの関与は人道支援や災害対応などに限られる場面が多かった。昨年も参加規模は約150人にとどまったが、護衛艦「やはぎ」が加わったことで変化の兆しがみえていた。今年は陸海空の各自衛隊がそろって参加し、より実戦的な訓練に踏み込んでいる。

こうした変化の背景には、日比両国が締結し、昨年9月に発効した円滑化協定(RAA)がある。協定の発効により、部隊の相互訪問や共同訓練に関する手続きが簡略化され、日本の防衛装備品や要員のフィリピン展開が進めやすくなった。

88式地対艦誘導弾を比北部で実射へ 台湾にも近い要衝

​今回の自衛隊参加で最も注目されているのが、陸上自衛隊による88式地対艦誘導弾の実弾射撃だ。自衛隊はマニラ以北、南シナ海に面する北イロコス州沖で対艦射撃訓練を行い、射程約100キロの88式地対艦誘導弾を用いて、沖合40海里にある退役艦艇を標的とする計画だ。フィリピン軍関係者は、これが戦後、日本によるフィリピン国内、さらには国外で初めてのミサイル発射となる可能性が高いと説明している。

この歴史的な場面に合わせ、日本の小泉進次郎防衛相がフィリピンを訪れ、視察する見通しだという。

陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾(陸上自衛隊公式サイト)
陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾(写真/陸上自衛隊公式サイト提供)

演習地となる北イロコス州は、戦略的にも重要な位置にある。ルソン島北端から台湾南端までは約360キロしかなく、その距離は首都マニラよりも短い。台湾海峡情勢が地域安全保障上の大きな変数となる中、この地域への展開は大きな意味を持つ。
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昨年10月に高市早苗政権が発足して以降、日本の安全保障政策はより積極色を強めている。高市首相は昨年11月の国会答弁でも「台湾有事は日本有事」との認識を改めて示しており、今回の演習も中国側の強い反発を招く可能性がある。

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