トップ ニュース 米軍がイラン貨物船を拿捕、停戦協定の期限目前 ホルムズ海峡で続く緊張
米軍がイラン貨物船を拿捕、停戦協定の期限目前 ホルムズ海峡で続く緊張 2026年4月16日、ホワイトハウスのサウスローン(南庭)で大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」に搭乗する前、記者団の取材に応じる米大統領のドナルド・トランプ氏。(写真/AP通信提供)
米国とイランの停戦合意の期限が48時間未満に迫る中、米国防総省は19日、米軍の封鎖線突破を図ったイラン貨物船に向けて発砲し、拿捕したと発表した。イラン政府は米軍の行動を「武装海賊行為」と強く非難している。この事態により、パキスタンで予定されていた第2回和平協議の開催に暗雲が立ち込めているほか、世界のエネルギー市場が再び混乱に陥る懸念が高まっている。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT) およびAP通信 の報道によると、米大統領・トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で今回の軍事作戦の詳細を明らかにした。トランプ氏によると、オマーン湾において米海軍のミサイル駆逐艦「スプルーアンス」がイラン船籍の貨物船「トースカ」に向けて発砲し、「エンジン室に大きな風穴を開け、その場で航行を阻止した」と主張している。
トランプ氏は、同船が「過去の違法活動」により米国の制裁対象となっていたと指摘。現在は米海兵隊の完全な統制下にあり、積荷の調査を進めているとした。AP通信によると、今回の発砲による死傷者の有無は現時点で明らかになっていない。米中央軍(CENTCOM)はメディアの取材に対し、ミサイル駆逐艦が発砲する前に「6時間以上にわたり度重なる警告を行った」とする声明を発表するにとどめた。
NYT紙は、イランの半国営メディアであるメヘル通信の報道を引用。イラン側は米軍による自国商船への発砲を認めたものの、イスラム革命防衛隊(IRGC)海軍部隊の介入により「米側を撤退に追い込んだ」と主張している。一方、イラン統合参謀本部は声明を発表し、米軍による乗船を武装海賊行為だと非難した上で、停戦合意への明白な違反であると指摘した。イラン軍報道官は、同貨物船が中国から出港したものであると明かし、「イランは近く、米軍の武装海賊行為に対して報復措置を取る」と警告した。
泥沼化する外交交渉 今回の海上衝突は極めて敏感な時期に発生した。米国とイランは20日、パキスタンの首都イスラマバードで第2回和平協議を実施する予定だったが、予定通り開催されるかは不透明な情勢となっている。仲介役を務めるパキスタンは、決裂の可能性も孕む同協議に向けた警備準備を継続している。NYT紙によると、イスラマバードは日曜夜の時点で厳重なロックダウン(都市封鎖)態勢に入っており、パキスタン当局高官は市内に追加で最大1万人の治安部隊を配備する方針を明らかにした。またロイター通信 は、パキスタンの治安関係者2名の話として、19日午後に米軍のC-17輸送機2機が同国の空軍基地に到着し、米代表団の受け入れに必要な警備機材や車両を搬入したと報じた。
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AP通信の報道によれば、イスラマバードの地元当局は公共交通機関の運行を停止し、大型トラックの市内通行を禁止した。先週、第1回協議の舞台となった市内のホテル「セレナ」周辺では、軍や警察が有刺鉄線を張り巡らせ、ホテル側は全宿泊客に退室を求めたという。調停プロセスに関与する地域当局高官はAP通信に対し、仲介チームが最終調整を進めており、米国の警備先遣隊もすでに現地入りしていることを認めた。
パキスタンが厳戒態勢を敷く一方で、米国とイランからは極めて錯綜した情報が発信されている。米ホワイトハウス高官によると、米代表団は米副大統領・J・D・バンス氏が率い、トランプ氏の特使であるスティーブ・ウィトコフ氏や、娘婿のジャレッド・クシュナー氏も同行する。トランプ氏も18日にSNSへ投稿し、米代表団がすでにパキスタンに向けて出発したことを確認した。19日夕方に到着し、新たな協議に向けた準備に入る予定だという。トランプ氏は、米国が「極めて公正かつ妥当な」合意案を提示したと強調。イランがこれを拒否した場合、イラン国内の全発電所および橋梁を破壊すると威嚇した。
米国の挑発的な発言に対し、イラン側は強い敵意を示しており、米国が民間インフラを攻撃した場合、イランも近隣アラブ諸国の発電所や海水淡水化施設を標的にすると警告している。AP通信が引用したイラン国営メディアの報道では、次回の協議は実施されないとされている。またロイター通信もイラン国営通信(IRNA)の報道として、米国による継続的な封鎖行動や威嚇的な言動、一貫性のない交渉姿勢や過大な要求を理由に、イラン政府が新たな和平協議を拒否したと伝えた。貨物船拿捕の報道後、イラン国営メディアは直ちに、イラン大統領・マスード・ペゼシュキアン氏とパキスタン首相・シャフバーズ・シャリフ氏による先般の電話会談の内容を報じた。
報道によれば、ペゼシュキアン氏は米国の威圧的かつ不条理な行動を非難し、米国が過去の過ちを繰り返し「外交を裏切る」との疑念が深まっていると指摘した。イラン外相・アッバース・アラグチ氏も、パキスタン外相・イシャク・ダール氏との電話会談で、米国の最近の行動や矛盾した言動は「誠意の欠如と、外交に対する真剣さの欠如を示すものだ」と明言した。さらに、イラン副外相・サイード・ハティブザデ氏も、米国が「最大限の圧力(マキシマム・プレッシャー)という強硬な姿勢を崩していない」として、米国との新たな対面形式の協議には応じない方針を明確にした。
ホルムズ海峡、依然として封鎖状態 イランの首席交渉官を務めるイラン国会議長・モハンマド・バーゲリ・ガリバフ氏は18日夜、国営テレビのインタビューで、一定の進展があったことは認めつつも、ウラン濃縮計画や地域における代理人勢力の問題、ホルムズ海峡の統制権などを巡り、両国間には依然として大きな隔たりがあると述べた。その上で、イランは外交交渉において「一切の妥協をしない」と強調した。現在の停戦合意はホルムズ海峡の航行再開を前提としているが、米伊双方は明らかに封鎖行動を継続しており、同海峡の周辺海域では多数のタンカーが足止めを余儀なくされている。
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米軍によるイラン船への発砲に加え、トランプ氏も18日、イランがホルムズ海峡を通過しようとした船舶2隻を攻撃したと非難し、「我々の停戦合意に対する完全な違反である」と指弾した。一方、ロイター通信はイラン側の報道として、イラン軍が18日に同海峡の通過を試みた液化石油ガス(LPG)タンカー2隻を退去させたと伝えている。船舶位置追跡データ提供会社「マリントラフィック(MarineTraffic)」のデータによると、そのうちの1隻であるアンゴラ船籍のLPGタンカー「Gサマー」は、2度目の試みでようやくペルシャ湾からの離脱に成功したという。
イラン第1副大統領・モハンマドレザ・アレフ氏は、「イランの原油輸出を制限しながら、他国だけが無料で安全保障を享受できると考えるべきではない。選択肢は明確だ。すべての国に自由な原油市場を提供するのか、それとも全体で甚大なコストのリスクを負うのかの二者択一である」と主張した。また、イラン最高国家安全保障委員会も18日夜に声明を発表し、「戦争が完全に終結するまで、同海峡を通航する船舶への監視と統制を維持する決意である」と表明した。
ロイター通信は、開戦から8週目に突入した中東での武力衝突が、世界のエネルギー供給に歴史的な打撃を与えていると指摘している。20日の指標となる北海ブレント原油先物価格は7%急騰し、1バレル=96.85ドルの高値水準に達した。一方、S&P500種株価指数の先物価格は約0.9%下落した。国内のガソリン価格高騰を受け、トランプ氏はこれまで「原油高は短期的なものに過ぎない」と述べ、有権者の不安払拭に努めてきた。しかし、米エネルギー長官・クリス・ライト氏は19日、米国内のガソリン価格はピークに達した可能性はあるものの、今後数カ月間にわたり高止まりする恐れがあると事実上認めた。
2月28日に勃発した今回の戦争により、これまでにイラン国内で少なくとも3000人が死亡した。また、レバノンでの死者は2290人を超え、イスラエル側で23人、湾岸アラブ諸国でも十数人が犠牲となっている。軍関係の死傷者については、レバノンでイスラエル兵15人が戦死したほか、米兵13人が一連の衝突で命を落とした。ロイター通信によると、欧州連合(EU)加盟国は、米国の交渉チームが短期的な政治的利益を優先するあまり、拙速で表面的な合意を推進しているのではないかと危惧しており、将来的に事態の収拾にさらなる時間を要する事態を懸念しているという。
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