林建甫氏コラム:AIの「もっともらしい嘘」をどう見抜き、解決するか

2026-01-09 14:20
AIが「もっともらしい嘘」をつく原因の一つは、言語モデルの統計的な性質にある。(写真/AP通信提供)

最先端の生成AIシステムであっても、存在しない機能を捏造したり、架空のソースを引用したり、図表を読み間違えたりと、誤った情報を自信満々に出力してしまうことがある。最新の研究「PHARE(Pervasive Hallucination Assessment in Robust Evaluation)」によれば、こうした「ハルシネーション(幻覚)」現象は依然として解消されていないばかりか、一部の主要モデルではむしろ増加傾向にあるという。

ブルームバーグ・ローの報道によると、2025年にはAIのハルシネーションが関与した訴訟判決が世界で712件に達した。また、Googleの医療用AI「Med-PaLM 2」が、実在するかのような引用元を添えて完全に架空の医学論文を生成し、医療専門家さえも信頼できる根拠があると誤認させた事例も報告されている。

言語生成の幻覚:それは「統計」であり「真理」ではない

生成AIは近年急速に普及し、執筆支援から知識検索まで、あらゆる場面でプロフェッショナルな口調を披露している。しかし、その真面目な語り口の中に、誤りや荒唐無稽な内容が含まれていることもしばしばだ。この「自信満々に語られるデタラメ」という現象は、単なる技術的な問題にとどまらず、哲学的かつ社会的な問題でもある。それは我々の知識、真理、言語に対する理解を揺るがし、人間と機械の相互作用の境界線を再考させるものだ。

AIがデタラメを語る根本的な原因の一つは、大規模言語モデル(LLM)の「統計的性質」にある。AIは言葉の意味を真に理解しているわけではなく、膨大なテキストデータに基づく確率分布に従って、最も可能性の高い単語の並びを生成しているに過ぎない。この問題を解決するには、より強力な意味理解と推論能力を技術的に導入する必要がある。例えば、記号論理学とディープラーニングを組み合わせた「ニューロシンボリックAI」や、生成プロセスで外部の知識ベースをリアルタイムに参照する「検索拡張生成(RAG)」モデルなどがその試みだ。これらは完全にエラーを排除できるわけではないが、医療や法律といった高リスク分野において、捏造リスクを低減させる成果を上げている。

「データ=真実」ではない

AIの知識の源泉は、既存のデータベースやテキストである。しかし、データそのものにバイアスや誤り、あるいは情報の陳腐化が含まれている可能性がある。例えば、英語圏に偏ったデータセットや、商業プラットフォームによる恣意的な情報の取捨選択、少数言語や専門分野における情報の歪みなどだ。AIが事実確認(ファクト・チェック)を経ずに回答を出力すれば、誤った情報を正当化し、それを厳粛な口調で提示することになる。 (関連記事: X日本法人、AI「Grok」による違法画像生成に法的措置を示唆 アカウント永久凍結も 関連記事をもっと読む

この現象は「知識の限界」を浮き彫りにしている。すなわち、データは必ずしも真理ではなく、AIには真偽を判定する能力がないということだ。人間がAIの出力を読む際、批判的思考(クリティカル・シンキング)を持たなければ、その「もっともらしい」口調に容易にミスリードされてしまうだろう。

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