中国の戦略核心は「戦わずして勝つ」 沖縄の地位揺さぶる「認知戦」に専門家が警鐘

防衛省防衛研究所の増田雅之氏と東京大学の林泉忠氏は2026年1月8日の会見で、中国軍の戦略核心は「戦わずして勝つ」ことにあると分析。沖縄の地位を巡る「認知戦」への警戒を呼びかけた。(写真/黃信維撮影)

台湾情勢の緊迫化と日中関係の悪化を受け、防衛省防衛研究所・中国研究室長の増田雅之氏と、東京大学東洋文化研究所特任研究員(教授)の林泉忠氏が8日、日本外国特派員協会(FCCJ)で「台湾をめぐる日中対立」と題した記者会見を行った。 会見では、中国商務省による対日輸出管理強化への懸念が広がる中、中国人民解放軍の戦略的意図や、歴史認識を悪用した新たな「認知戦」の動向について詳細な分析が示された。

20260108-日本防衛研究所中國研究室長增田雅之(右)與東京大學特任研究員林泉忠(左),針對「台灣議題引發的日中對立」在FCCJ共同舉行記者會剖析局勢。(黃信維攝)
防衛研究所中国研究室長の増田雅之氏(右)と、東京大学特任研究員の林泉忠氏(左)。(写真/黃信維撮影)

習政権の狙いは「戦わずして屈する」

増田氏は、中国の究極的な戦略目標は「戦わずして勝つ」ことにあり、軍事力はそのための「威嚇」手段として機能していると指摘。一方、林氏は、中国側が「沖縄(琉球)の地位」を疑問視する言説を流布させることで、日本に対して外交的な揺さぶりをかけていると警鐘を鳴らした。

中国軍の現状について、増田氏は2016年の軍制改革以降、習近平国家主席の下で指揮系統の統合運用能力が大幅に向上しており、統合作戦の指標においては日本を上回る側面もあると評価した。しかし、中国にとって全面戦争は最も避けたいシナリオであり、その基本戦略は孫子の兵法に通じる「戦わずして人の兵を屈する」ことにあると解説。具体的には、着実に作戦能力を向上させつつ、大規模な演習を通じて「戦えば手痛い代償を払うことになる」というシグナルを台湾や国際社会に送り、軍事衝突を回避しながら政治的譲歩を迫る狙いがあるとの見方を示した。

自衛隊へのレーダー照射、「誤った安心感」が背景に

また、中国軍が自衛隊機などに対して火器管制レーダーを照射するといった挑発的行為について、増田氏は極めて危険な兆候だと懸念を表明した。中国が台湾軍に対して同様の行為を行わないのは、距離的な近接性ゆえに即時の武力衝突を招くリスクを恐れているためだ。しかし対日行動においては「日本は簡単には撃ち返してこない」という「誤った安心感」が現場に浸透している可能性があり、それがかえって政治的なシグナルを送ろうとする前線部隊の誤算や、偶発的な衝突のリスクを高めていると分析した。

新たな心理戦、「琉球地位未定論」の拡散

林氏は、中国が近年展開している対日「認知戦」の新たな潮流として、「琉球地位未定論」の拡散を挙げた。中国政府は公式には沖縄に対する日本の主権を否定していない。しかし、メディアや学術界を通じて歴史的・法的に日本の統治権に疑義を呈することで、尖閣諸島や台湾問題における日本の立場を牽制する心理戦術を用いていると指摘した。

また、「台湾有事は日本有事」という認識について、林氏はこれが2021年の安倍晋三元首相の発言に始まったものではないと強調。1960年の岸信介首相による国会答弁や、その後の佐藤栄作首相の発言を挙げ、日本政府が半世紀以上前から台湾海峡の安全を自国の防衛と不可分なものとして捉えてきた歴史的文脈を詳説した。 (関連記事: 中国、対日「半導体材料」反ダンピング調査を開始 高市首相の「台湾有事」発言への報復措置か 関連記事をもっと読む

中国の軍事強化は「既定路線」

質疑応答では、日本の高官による対中強硬発言が中国に軍事力増強の口実を与えているのではないかとの質問に対し、増田氏は「中国の台湾統一目標と軍事準備は既定路線であり、日本の発言の有無にかかわらずスケジュール通り進められている」と回答。強硬発言が国内向けのプロパガンダに利用されることはあっても、本質的な動機を変えるものではないとの見解を示した。

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