防衛研究所中国研究室の杉浦康之主任研究官は、防衛白書に掲載されたコラムで、台湾周辺における中国軍の活動について分析した。コラムは研究者個人の立場による分析で、政府や防衛白書の公式見解を示すものではないとしている。
杉浦氏によると、中国軍は作戦機や艦艇による台湾周辺での軍事活動を活発化させており、令和7年も活動を強める傾向が見られた。中国軍は4月に「海峡雷霆2025A」、12月末に「正義使命2025」と称する大規模演習を実施した。
「実戦化・宣伝化・常態化」の3点を指摘
杉浦氏は、中国軍による台湾周辺での軍事活動について、「実戦化」「宣伝化」「常態化」の3点を特徴として挙げた。
「実戦化」は台湾有事を念頭に置いた実戦的な訓練、「宣伝化」は訓練内容について虚実を織り交ぜながら積極的に情報を発信する動き、「常態化」は大規模演習以外でも軍事活動を継続する状況を指す。
精密攻撃や海空封鎖を想定
実戦化については、台湾の主要都市や港湾への精密誘導攻撃を想定した統合作戦訓練や、台湾周辺の海空域を対象とする統合封鎖作戦訓練が行われていると指摘した。
中国海警局が中国軍と連動して行う法執行訓練や、台湾の要人や重要目標を標的とする斬首作戦を想定したシミュレーション訓練にも言及した。
中国軍は統合封鎖作戦の訓練地点を段階的に増やし、封鎖態勢の強化を図っているという。杉浦氏は、台湾有事を念頭に、さまざまな能力の向上を進めていると分析した。
映像や公式発表を通じた情報発信
宣伝化については、中国軍の公式発表や官製メディアを通じた映像配信のほか、中国軍の研究機関に所属する研究者による演習内容や目的の解説、演習の合法性を主張する動きなどを挙げた。中国国防部の報道官による頼清徳政権への批判も、その一環として取り上げた。
東部戦区が公開した映像には、J-20ステルス戦闘機が台湾南部の空軍基地に接近したように見える場面や、無人機が台北101に接近したかのような場面が含まれていた。台湾側はこうした事実はなく、威嚇を目的とした認知戦だと反論している。
杉浦氏は、中国側が虚実を織り交ぜた情報を積極的に発信することで、台湾や国際社会への圧力を形成し、台湾社会の分断を図ろうとしていると分析した。
台湾周辺での軍事活動を日常化
常態化については、大規模演習以外でも、中国側が作戦機や艦艇を使った台湾周辺での軍事活動を継続的かつ日常的に実施していると指摘した。4月の演習の際には、中国軍の研究者が軍事活動の常態化を主張したという。
杉浦氏によると、中国側は台湾の対中発言や米台関係の動きに合わせて軍事活動の強度を調整し、大規模演習を迅速に実施している。
4月の「海峡雷霆2025A」については、頼清徳総統が中国を「域外敵対勢力」と表現したことを、12月の「正義使命2025」については、米国による台湾への武器輸出を、それぞれ演習実施の口実の一つにしたと分析した。
頼政権への批判や米国へのけん制
杉浦氏は、中国軍が台湾周辺で軍事活動を行う目的として、3点を挙げた。
第一は、蔡英文政権よりも台湾独立色が濃いとされる頼清徳政権を強く批判すること。
第二は、台湾との安全保障関係を強化する米国をけん制することだとした。
第三は、軍事行動による強硬路線と、中台経済関係の促進を中心とした穏健路線を併用し、台湾社会の分断を促すことで頼政権を孤立させることだと分析している。
杉浦氏は、中国軍による台湾への軍事的圧力の強化は、力や威圧による一方的な現状変更の試みに当たり、インド太平洋地域の安全保障環境を不安定化させるおそれがあると指摘した。
その上で、日本は中国軍の動向を引き続き注視する必要があるとの見方を示した。
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編集:梅木奈実

















































