【杜紫宸の視点】株価の活況に隠れた危機、台湾が整備すべき企業成長のエコシステム

先見の明を持つ政府は企業成長に適した環境の構築に尽力すべきであり、将来を見据える企業は未来への投資を継続すべき。(資料写真/AP通信)
先見の明を持つ政府は企業成長に適した環境の構築に尽力すべきであり、将来を見据える企業は未来への投資を継続すべき。(資料写真/AP通信)

日本で最近公表された2つのデータは、興味深い構造的な矛盾を示している。政府は官民合わせて370兆円超を投じ、今後15年間で国際競争力の向上を図る計画を示しているが、今年上半期の企業の新規株式公開(IPO)件数は過去15年で最低を記録した。同一の経済圏において、将来に向けた種まきを積極的に進める一方で、スタートアップを育む土壌は痩せ細っている。これは、多くの成熟経済が共通して直面する課題、すなわちいかにして短期的な業績至上主義から脱却し、次世代企業の芽を出させるため、長期的な競争力の種を蒔くかという問いを反映している。

企業成長のエコシステムこそが国家の競争力を決める

資本市場を語る際、多くの人は株価や取引高、株価指数に注目しがちだ。しかし、国家の競争力を真に決定づけるのは、株式市場の活況度ではなく、スタートアップが創業、研究開発、事業拡大から上場に至るまで、各段階で適切な資本の支援を受けられる「企業成長のエコシステム」が整備されているかどうかだ。株式市場は現在の経済状況を示すバロメーターに過ぎず、企業成長のエコシステムこそが国家に長期にわたって「新たな血」を生み出す役割を果たす。

米国が世界規模の企業を継続的に輩出できるのは、巨大な株式市場があるからではなく、完全な成長エコシステムが構築されているためだ。エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル、グロースファンド、プライベートエクイティから、IPOやM&A(企業の合併・買収)に至るまで、企業の各発展段階においてリレー競技のように資本が投入される。これにより、企業は数十年にわたる試練と成長を経て、世界的なリーダーへと段階的に成長することが可能となっている。

日本の焦りは、資金不足に起因するものではない。2000兆円を超える家計金融資産が存在し、企業も膨大な手元資金を蓄積しているにもかかわらず、イノベーションに伴うリスクを真に引き受ける「ペイシェント・キャピタル(忍耐強い資本)」が不足している。これは、資金の潤沢さと資本の健全性との間に、依然として大きなギャップが存在することを示している。

この事象は、近年株価が最高値を更新し続ける一方で、数多くの懸念材料を抱える台湾にとって極めて高い警告の価値を持つ。市場の活況が、成長エコシステムの欠如を覆い隠す糖衣となってはならない。現在の市場をけん引するスター企業の大半は、数十年に及ぶ発展の結果だ。これからの20年の競争力を真に決定づけるのは、研究機関やインキュベーション機関、スタートアップ拠点に存在する、ペイシェント・キャピタルの注入を急激に必要とし、創業期の死の谷(デスバレー)を乗り越えるための伴走を求めるスタートアップの原石たちだ。重要なのは株式市場の表面的な活況ではなく、企業が最も困難な時期を乗り越えるための十分な制度的支援が存在するかどうかだ。 (関連記事: 台湾の食農テック支援組織「好食好事」、スタートアップ3社とSusHi Tech Tokyo 2026へ 日本市場との連携強化 関連記事をもっと読む

台湾が誇る半導体産業を振り返ると、それは市場メカニズムによって自然に形成されたものではなく、政府、研究機関、そして企業による50年に及ぶ取り組みの成果と言える。長期的な人材育成、継続的な技術開発、そして政策的支援がなければ、世界的に高く評価される今日の産業的地位は築けなかったはずだ。この経験は大きな教訓となる。人工知能(AI)、バイオ医療、ロボット、宇宙技術、精密機械、スマートサービスなど、いかなる分野においても今後、新たな産業の柱を育むためには長期的な投資が不可欠だ。

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