国際秩序の転換期における日本外交 添谷芳秀氏が中等国連携と総合的対中戦略を提唱

添谷芳秀名誉教授はFPCJの会見で、過度な対米依存や対中抑止に偏らず、FOIPやクアッドを通じたミドルパワーの連携強化と総合的な対中戦略への転換が日本外交に不可欠であると強調した。(写真/FPCJ提供)
添谷芳秀名誉教授はFPCJの会見で、過度な対米依存や対中抑止に偏らず、FOIPやクアッドを通じたミドルパワーの連携強化と総合的な対中戦略への転換が日本外交に不可欠であると強調した。(写真/FPCJ提供)

フォーリン・プレスセンターは2026年7月21日、「国際秩序の転換期における日本外交―ミドルパワー外交の視点から」と題するオンライン・プレスブリーフィングを開催した。慶應義塾大学の添谷芳秀名誉教授が登壇し、日本の外交をミドルパワーの視点から分析し、今後の外交戦略について見解を示した。

日米同盟への依存とミドルパワー外交の可能性

添谷氏は、戦後日本の外交には憲法第9条に基づく平和主義路線と、日米安全保障条約を背景とした現実主義路線の二重のアイデンティティーが存在すると指摘した。

1992年から1993年にかけてのカンボジア暫定統治機構への自衛隊派遣時に国内世論が二分された歴史を振り返り、日本がミドルパワー外交を展開している実態を説明した。

2026年1月のダボス会議でマーク・カーニー首相がミドルパワー間の主体的連携を訴えた演説に触れ、日本の安全保障専門家から日米同盟以外のプランBはないとの反発があったことを紹介した。

その上で、中国の脅威を強調するほど米国への依存を深めざるを得ない構造的力学に対し、対中抑止があらゆる外交政策を正当化する現状に警鐘を鳴らした。

インド太平洋で進むミドルパワー間の安全保障協力

具体的なミドルパワー協力の場として、自由で開かれたインド太平洋を挙げた。2026年5月のハノイでの高市早苗首相の外交演説に触れ、各国が自律性と強靭性を強め、サプライチェーンの強化やルール共有を進めることがミドルパワーの協力課題と重なると評価した。

また、安倍政権の遺産である日米豪印の枠組みについては、日豪印のミドルパワー協力に米国を関与させる形や、韓国を加えた「日豪印韓プラス米」へと発展させる可能性を提示した。

安全保障分野の協力としては、物品役務相互提供協定の重要性を強調した。2026年6月にフィリピン、ニュージーランド、オランダとの同協定が国会承認された際、立憲民主党がミドルパワー間の連携強化を理由に初めて賛成票を投じたことは興味深い展開であると述べた。

これらは武器の相互供与を含まず、国連平和維持活動や災害対応などを目的とした実質的なミドルパワーの安全保障ネットワークであるとした。

対中抑止に偏らず総合的な外交戦略を

質疑応答では多岐にわたるテーマが議論された。新たに創設が検討されている海外情報機関については、情報を収集する目的が重要になるとの見方を示した。

また、1970年代に中曽根康弘防衛庁長官が唱えた非核中級国家の概念は、当時の核保有オプション研究を踏まえた戦略的判断であったと解説した。

米国のコルビー氏による中堅国外交批判に対しては、かえってミドルパワーの動機付けになるとしつつ、日本の専門家には米国の見解に同調する層もいると分析した。

ロシアとの関係については、1970年代のエネルギー危機以降の資源と供給源の多様化という枠組みの中で、依然として日本にとって重要性が理解されていると指摘した。

さらに、インドネシアなどへの防衛装備品製造拠点の海外展開については、当面は国内製造基盤の再構築が優先されるものの、長期的には地域の強靭性を高めるミドルパワー協力の一環として意義があるとの見解を示した。

今後の地域における最大の要因は中国の戦略であるとし、単純な対中抑止から総合的な対中戦略への転換が必要だと訴えた。台湾や北朝鮮の問題において軍事的な抑止力は不可欠であるものの、抑止が機能している間にどのような外交を展開するかがミドルパワーにとって決定的に重要だと指摘した。

高市政権が進める安保関連3文書の改定や防衛費増額については、財政的余裕を含め現在進行形の問題であるとし、軍事的抑止と並行して外交の優先順位をより高めるべきだと結論づけた。

編集:小田菜々香

最新ニュース
訪日客を引きつける麻布台ヒルズ「チームラボボーダレス」 来場者400万人を達成
台湾初の総統選と少年の青春を描く「夜明けの前に」が上映 ツァオ・シーハン監督が制作秘話を語る
【プロ野球】上沢直之、古巣日本ハムを7回無失点 ソフトバンクが1―0、復刻ナイターを白星で飾る
台湾女子サッカー代表の練習環境改善へ 教育部が組合の要望を受け対策強化
飲食料品の消費税、8%から1%へ なぜ「0%」ではない?高市政権案の狙いと財源
【北京観察】空港で初めて「出国できない」と判明も 中国が出国制限を制度化、9月15日施行
離任控えるコーヘン駐日イスラエル大使が会見、日イスラエル関係と中東情勢を語る
中国が変えた日本の防衛 米研究者が語る安倍氏の「最後の勝利」
台湾、兄弟姉妹の「遺留分」を廃止へ 日本では戦後から対象外、遺言なければ相続権は維持
【中国「越境弾圧」の実態】英語は「虐殺」、中国語版では「事件」 独立記者が語るNZ華人社会の自己検閲
ジュリア・ロングボトム駐日英国大使退任へ 日英関係の変革と将来像を語る
日本茶業中央会がFCCJで記者会見、抹茶ブームの裏にある課題やティーツーリズムの展望を語る
【論評】日米の円買い介入で円安は止まるか 効果の持続を阻む3つの要因
台湾の頼清徳総統、中国「団促法」を改めて非難 国際社会に抵抗呼び掛け
リーグワンの外国人枠新規定に対し、ラファエル・ティモシー選手らが公取委などに申し立て
【北京観察】中国の組織犯罪取り締まり、ネット空間へ拡大 政敵排除に利用されるとの見方も
熊本地震、台湾・高雄市と北九州市が被災地支援で連携 八代市に飲料水や衛生用品など132箱輸送
台風13号(ドルフィン)、週末に台湾へ影響か 進路予測にばらつき、西部で雨強まる恐れ
イスラエル・米の対イラン攻撃から5カ月 中東パワーバランスの崩壊と新たな地域安全保障の模索
台湾新幹線の新型車両「N700ST」が完成 李逸洋駐日代表、熊本被災地に250万円寄付
全パが28安打の乱打戦を制し逆転勝利、万波中正がMVP 2030年地方開催は岡山に決定
台湾新幹線の新型車両「N700ST」出荷 日台協力は「新たな段階」へ
台北・西門町の人気ポケモンカード店が突然閉鎖 経営者と連絡取れず、被害3億台湾ドル超か
TSMC、熊本工場が早期復旧 被災地に2億5000万円寄付
台湾の戦後史を写真でたどる 朝鮮戦争捕虜と眷村の記憶、東京で「沈黙の空間」写真展
【中国「越境弾圧」の実態】「中国政府の手が届かない場所はない」 カナダ議員、巧妙化する弾圧に警鐘
地震でスマホがつながらない時は? 無料Wi-Fi「00000JAPAN」の使い方と注意点
世界で「教育への攻撃・軍事利用」が4割増 学生・教職員1万600人が被害
中国AI「Kimi K3」が米国勢を猛追 NVIDIA製GPU2万枚規模の計算資源、禁輸品利用疑惑も
日本の国際緊急援助隊医療チーム、ベネズエラ地震支援の活動を終えて帰国
サントリーが「ノンアル サマーライブ」を高輪で開催 DJ OZMA約18年ぶりの本格復活で会場熱狂
「俺の」シリーズが新潟に初進出 『俺の割烹 ほろよ稲』8月1日リニューアルオープン
トヨタ自動車、「令和8年熊本地震」の被災地支援を発表 給電車派遣や総額3000万円の寄付を実施
三菱地所がバリ島初の大規模ラグジュアリーアウトレット「Sira Village Grand Outlet Bali」を開業
【中国「越境弾圧」の実態】襲撃された矢板明夫氏が語る「恐怖の種」 「促進法」後初の対台弾圧か
ヒルトンの高級ブランド「コンラッド」が名古屋初進出、「コンラッド名古屋」がオープン
新千歳空港の行列グルメ「 いきいき寿司」がららぽーと愛知東郷に8月4日オープン
【MLB】大谷翔平らスター選手の「直筆サイン入りバット」が登場!8月4日より販売開始
対中強硬派は「中国と向き合う勇気がない」 緒方林太郎衆院議員が語る台湾有事と日中関係
ほっかほっか亭、50周年で「ワンハンドBENTO」展開へ 8月の新商品や夏まつりキャンペーンも順次開始
「脱原発」から約40年、イタリアが原子力回帰へ 電気代高騰と景観問題が後押し
U-NEXT、秦 基博と長澤知之のデビュー20周年を祝う「Augusta Camp 2026」を8月29日に独占ライブ配信決定
デンソー2027年3月期第1四半期決算、増収減益 部品・原材料高が影響
米国が異例の円買い介入 円は40年ぶり安値、日銀総裁は早期利上げに含み
「大手町ゲートビルディング」が竣工 仲通り延伸や舟運活用で回遊性と防災力を強化
台風13号(ドルフィン)、7日から台湾に影響か 週末は風雨強まり、進路の不確実性も
日米豪が令和8年度共同指揮所演習「YS-91」を実施へ 3カ国連携強化と抑止力向上目指す
出入国在留管理庁がメールマガジン配信 在留外国人向け手続や入国審査のデジタル化を案内
BTS「ARIRANG」で浮き彫りになった韓国の転売対策 最大50倍の課徴金は8月28日施行
過去10年、日本で話題を呼んだ台湾・香港映画TOP10 『呪詛』『青春18×2』は何位?首位作は興収5億円を突破