トップ ニュース 震災から始まった、いわきFCとの10年 ── TYOプロデューサー・面川正雄氏が語る、心を動かす映像制作の情熱
震災から始まった、いわきFCとの10年 ── TYOプロデューサー・面川正雄氏が語る、心を動かす映像制作の情熱 TYOの面川正雄プロデューサーが、東日本大震災を契機に始まったいわきFCとの10年間の歩みと、心を動かす映像制作への情熱を語った。(写真/株式会社TYO提供)
東日本大震災を契機に誕生したサッカーJリーグのいわきFC(福島県)。株式会社TYOのチーフプロデューサー、面川正雄氏は、福島県出身の縁もあって約10年間、クラブの歩みに寄り添い、J3優勝やJ2昇格といった歴史的瞬間、そしてチームの思いをエモーショナルな映像で伝えてきた。企業や組織の理念を映像で表現する「ステートメントムービー」を通して、多くのファンや関係者の心を動かしてきたという。「何かお手伝いさせていただけませんか」という一言から始まった長期プロジェクトには、静かな熱意が込められている。
TYOの面川正雄プロデューサーが、東日本大震災を契機に始まったいわきFCとの10年間の歩みと、心を動かす映像制作への情熱を語った。(写真/株式会社TYO提供) 面川氏は、映画『フラガール』の舞台として知られるスパリゾートハワイアンズの映像制作を担当した経験を持つ。2010年に撮影を行ったが、2011年3月の東日本大震災で施設は被災し、一時閉館を余儀なくされた。自身の実家も被災した面川氏は、地元の状況に心を痛めつつ「何かできることを」と考え、フラガールの活動に密着し、1年をかけて撮影した。当時はまだ珍しかったYouTubeでの映像公開も続けた。
この活動を通して知り合った関係者から、「いわきFCというチームが誕生した」と紹介される。復興支援を目的に設立されたチームは当時、社会人東北リーグ所属で、地域ではポスターで見かける程度の存在に過ぎなかった。発信が不得意なチームだと聞き、面川氏は思わず「何かお手伝いさせていただけませんか」と声をかけたのが縁の始まりだった。
それ以来10年、いわきスポーツクラブ代表取締役の大倉智氏、広報の川崎渉氏と密に連絡を取り合い、継続的に映像制作を進めてきた。震災後、大倉氏がボランティアとして地域支援を行ったことを契機に設立されたチームであり、面川氏は「大倉さんも川崎さんもサッカーを愛し、いわき市やチーム、関係者を心から大切にしている。社長自ら直接やり取りしてくれるおかげで、思いのこもった映像をつくることができている」と語る。
TYOの面川正雄プロデューサーが、東日本大震災を契機に始まったいわきFCとの10年間の歩みと、心を動かす映像制作への情熱を語った。(写真/株式会社TYO提供) 特に印象深い作品として、2021年に演出の磯見大氏と共に制作した「この街」がある。震災から10年をテーマに、「この街のために」というキーワードを軸に制作が始まり、週1〜2回の打ち合わせを重ねた。いわき市を何度も訪れ、地域と人々に触れながらクリエイティブチーム全員で完成させた。「本当に良い作品ができた」と面川氏は振り返る。ナレーションでは「本当は、生まれずに済んだのかもしれない」という言葉から始まり、震災で失われた風景や人々の記憶を描きつつ、いわきFCが街の誇りとなることを願うメッセージが語られる。
2025年には設立10周年を記念し、「中間報告」と題した映像も制作。前半はチームの歩みを事実に基づき紹介し、後半は地域愛やビジョンを語る構成とした。「10年前、福島県社会人リーグ2部からスタートしたいわきFCは今、J2にいる。観客数、売上、成績などすべての面で成長を遂げた。しかし、勝つことだけでブランドはつくれない。地域と向き合ってこそ、それは築かれる」とのナレーションが印象的だ。面川氏は「いわきFCが自ら映像を制作できるようになるまで、これからも伴走していきたい」と語る。
いわきFCの「ステートメントムービー」について、面川氏は「商品広告とは異なり、企業や地域の理念や想い、社会への約束を丁寧に物語化し、映像と言葉で可視化する。ステークホルダーに共感を生むことが目的だ」と説明する。広告映像のフォーマットがない分、組織や状況に応じた柔軟な表現が求められる。「お客様の温度感を理解し、まだ言語化できていない想いを映像にする。その過程で『一緒に作っていて楽しい』と言っていただけるのが一番うれしい」と話す。
面川氏は福島から上京後、映画制作の専門学校を卒業し、2004年に映像プロダクションMONSTER FILMS(現・TYO MONSTER)に入社。プロダクションマネージャーとして経験を積み、30歳を過ぎてプロデューサーに転身。広告映像を中心に20年以上第一線で活躍している。
地域プロモーション分野では、2015年に佐賀市のプロジェクトで有明海の珍生物「ワラスボ」を題材にした「W・R・S・B」を制作、Spikes AsiaやADFESTなどで受賞。また、静岡県伊東市では「まくら投げ発祥の地」をテーマに観光PR映像を制作し、アドフェスト2021で受賞するなど、地域に根ざした映像制作で高く評価されている。
「地域創生やスポーツ振興にもっと貢献したい」と語る面川氏。TYOは2024年9月から各地の風景や文化をノンバーバルな映像で世界に発信する「Another Side of Japan」シリーズを展開中で、地域の暮らしや文化を可視化し、旅の新しい選択肢として提案している。「スポーツは時間や情熱を捧げる価値がある。映像とも相性が良く、海外にも届けたい」と抱負を語った。
面川プロデューサーの仕事哲学に迫る後編は、後日公開予定。編集:田中佳奈
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