台湾の賴清德総統就任から100日が経過した。就任時の高い期待とは裏腹に、特に外交面での課題が山積している。米国の懸念、中国の圧力、そして国内政策の複雑な力学。これらの要因が絡み合い、賴政権は早くも難しい舵取りを迫られている。
「ホワイトハウスに入る」のはいつ実現するか?
米国の「疑賴論」(賴清德への疑念)は依然として払拭されていない。英国フィナンシャル・タイムズ紙が2023年に立て続けに報じた記事は、賴清德にとって痛手となった。1月の記事では、賴清德の「務実的な台湾独立工作者」という自称が両岸関係の緊張を高める可能性を指摘。7月の記事では、2024年総統選挙を「ホワイトハウス」と「中南海」の選択と位置づけ、「ホワイトハウスに入ること」を目標とした発言が問題視された。
最近の8月22日付の記事では、台湾の国家安全会議秘書長と外交部長がワシントンDCで「特殊チャンネル」会談を行ったことが明らかになった。匿名の米国官僚は、賴清德を「外交経験に乏しく、前総統の蔡英文よりも予測困難な指導者」と評している。これは「疑賴論」の強い警告であり、米国政府が賴清德を「予測困難で信頼できない」と見なしている証左といえる。
北京の視線:「台独分子」としての賴清德
一方、北京の目には賴清德はすでに「台湾独立分子」と映っている。中国は「独立懲罰22条」を打ち出し、「台湾独立頑固分子」のブラックリストに10人を挙げた。これらはすべて「賴核心」、つまり賴清德の側近を指しているとされる。北京は賴清德を「トラブルメーカー」、「戦争の火種」と見なしているのだ。
このような厳しい見方がある中、賴清德は習近平国家主席との晩餐を望むと発言し、「エビチャーハンとタピオカミルクティーでもてなしたい」と述べた。しかし、この発言は北京側に「軽薄」あるいは「生意気」と受け取られ、逆効果となった可能性が高い。
さらに問題なのは、両岸関係の対話が不足している状況下で、賴清德が「中華民国憲法」や「両岸関係条例」への言及を完全に避けていることだ。彼の目に映る両岸関係は、「台湾の軽食」程度の軽いものでしかないように見える。
賴清德総統の初の外遊が困難な理由
総合的に見て、賴清德総統の初の外遊が実現困難な理由は以下のようにまとめられる:
米国大統領選挙の影響: 現在の米国の政治状況が不利に働いているという見方があるが、過去の総統も同様の状況下で訪米を実現している。この理由は薄弱だと言える。
外交関係国の減少: 台湾の外交関係国は12カ国に減少しているが、友好国からの招待があれば訪問は可能だ。賴清德の訪問先の第一候補は、中南米の友好国パラグアイやグアテマラだろう。
米中による台湾問題の共同管理: 最も重要な理由は、北京の反対と米国の不安が相まって形成された、米中による台湾問題の共同管理だろう。米国の国家安全保障顧問ジェイク・サリバンが27日から29日に北京を訪問する予定で、台湾問題が主要議題となる見込みだ。
「政党外交」による自己慰撫?
この難局を打開するため、賴政権は新たな戦略を模索している。その一つが「政党外交」だ。民進党の林右昌秘書長が8月31日から13日間の訪米を予定している。サンフランシスコ、ロサンゼルス、ヒューストン、ニューヨーク、ワシントンの5都市を訪問し、関係改善を図る。
しかし、これは政党レベルの外交であり、政府間外交の代替にはなり得ない。選挙年でもない中での長期訪米は、あたかも共産党の「党が政を領導する」方式を模倣しているかのようだ。あるいは、これは賴総統の訪米が実現しない現状への自己慰撫なのだろうか。
「禿鷹戦略」による問題製造?
賴清德の外交政策には、さらなる懸念材料がある。彼の周辺には、いわゆる「禿鷹」と呼ばれる強硬派のブレーンが存在するという。彼らは中国の痛点を執拗に刺激し、より過激な「禿鷹戦略」を推進しているとされる。
賴清德は従来から独断的な行動をとり、側近の諫言をほとんど聞き入れない傾向にある。もともと政策決定の中核グループは小さく、国家安全保障や両岸関係に精通した人材は特に少ない。さらに、外交能力や経験も不足している。賴清德の軽視と放任の下、彼の側近たちは「死を恐れない禿鷹」のように、北京の痛点を繰り返し刺激し、より過激な「禿鷹戦略」へと傾斜している。賴政権は一時的に蔡英文前政権の国家安全保障関連のスタッフを留任させ、これによって米国政府の「疑賴論」を和らげようとしているが、信頼を回復し疑念を払拭するには至っていないようだ。
賴清德自身も、蔡英文前総統の「四つの堅持」を「両岸の非従属関係」に簡略化し、さらにそれを「新たな二国論」へと発展させている。また、「中華民国(憲法)は災難だ」という発言も物議を醸している。こうした言動が、米中台関係における「グレーライノセロス」(予測可能だが無視されがちな重大リスク)となりつつある。
編集/高畷祐子
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