【武道光影】江戸時代から遺る返し技 天然理心流――「奏者」

2026-01-01 07:37
奏者の演武── 天然理心流教士 常田貞行氏(左)と小林恵子氏(右)、葉志堅撮影
奏者の演武── 天然理心流教士 常田貞行氏(左)と小林恵子氏(右)、葉志堅撮影

天然理心流の「奏者」は、江戸時代の初代から伝わる巻物に既に存在していた技である。主に、城の控の間や時には密室で襲撃に遭遇した際、迅速に相手を制圧・突撃し、斬る一連の座技の訓練である。これは剣術と柔術が高度に融合し、「気剣一如」に達する技といえる。現存する古流剣術流派の中では極めて稀だが、これこそ天然理心流が古武道の系譜において統合武術流派であることを示す最良の証明である。

幕末最強の剣客集団「新選組」の中核幹部が修めた剣術として知られる天然理心流だが、佐幕派として敗戦したため、明治維新後は長い間意図的に忘れ去られ、多くの技も徐々に失われていった。しかし、九代目宗家・平井泰輔、十代目宗家・平井正人およびその門人たち共同での尽力により、現在、多くの重要な技が撥雲館の正統継承者である「門人会」の道場で継承されている。江戸時代から遺る返し技「奏者」も、適切に復元され、日々の稽古の中で保存・継承されている。

「奏者」とは、かつて天皇や将軍など位の高い人にへ奏上を行う役職であり、平安時代から既に存在していた。江戸時代の「奏者番」はそのような変遷の一つである。したがって、符号学的な観点から考察すれば、天然理心流がこの技を「奏者」という言語符号で名付けた主な意旨は、奏者が上位者に奏上する際の状況、すなわち室内で厳粛に正座している最中に突然襲撃を受けた場合の想定にあることは難くない。そのため、こうした危機に対応するために、「柄返」と「操落」という二つの反殺技が発展した。

一つは、自分が刀を抜こうとした際、相手に制圧されそうになった状態で、いかにスムーズに刀を抜いて相手を斬る技である。もう一つは、相手が刀を抜いて襲い掛かろうとした際、最短距離かつ最速で相手を制圧し、その勢いで刀を抜き斬る技である。これら二つの技が「奏者」のすべてを構成している。その訓練の目的は、最小の空間、最短の距離、身体が最大限に制限されるといった不利な状況においても、刀を奪って逆襲し、流れに乗じて相手を斬るようになることを門人に望む点にある。この返し技を極致まで練り上げるには、高度な柔術の技との合わせが不可欠である。

それゆえ、天然理心流を単なる古流剣術流派として理解することはできない。なぜなら、「奏者」以外にも、「柄砕」や「小具足」といった、柔術と高度に結合した技が展開されているからである。最も代表的な「表木刀五本」でさえ、単なる太い太刀による剣技として見ることはできない。そこには柔術のみならず、気術も含まれているからだ。つまり、あらゆる事態を想定した統合的な武術訓練の結果として、天然理心流の広大で緻密な技術体系が構築されたのである。しかし、これらの優れた技は新選組との関係ゆえに、一度は意図的に忘れ去られ、消失しかけていた。

幸いなことに、戦乱を経ても、八代目・加藤伊助の尽力による護持のおかげで、天然理心流撥雲館の技は継承された。その後、その門人である九代目宗家・平井泰輔、十代目宗家・平井正人と共に努力することにより、門人会は撥雲館の技を受け継ぐだけでなく、一度は失われた優れた技を門人たちと共に発掘・整理・復元した。これこそが、私たちが今、江戸時代から遺る返し技「奏者」を目にすることができる重要な要因なのである。

本文の筆者・葉志堅氏は、日本古武道の研究学者であり、ドキュメンタリー映画の監督、《フランスワイン文化教育協会》の理事長でもあります。これまでに5度、フランスから騎士勲章を授与されており、現在は複数の大学で客員教授を務めています。また、日仏両国でたびたび関連する学術講演に招かれています。

編集:梅木奈実

最新ニュース
「トムとジェリー」Happyくじ限定ブロマイド、元日からセブンで販売 人気の「ファニーアート」全20種
東京メトロ東西線・千代田線、2026年3月14日にダイヤ改正 夕夜間の混雑緩和、北綾瀬の利便性も向上
TSMCや鴻海は「いけにえ」か? NVIDIAらAI巨頭の減炭成績:サプライチェーンへの「汚染アウトソーシング」の実態
AIはもはや単なる「金食い虫」ではない、Google Cloud報告が解き明かす:企業収益のキーワードは「エージェンティックAI」
天皇陛下、新年のご感想 戦後80年経て平和への願い、世界の紛争に「心痛める」
舞台裏》「今回は半導体ではない」台湾外交の切り札 林佳龍外交部長が仕込む「新たな武器」
高市首相「来年はさらにギア上げる」 就任後初の年越し、公邸引っ越しで「お化け」にも言及
第76回NHK紅白歌合戦タイムテーブル発表 Mrs. GREEN APPLEがトップと大トリのW起用、「放送100年」彩る全曲順
衛星が捉えた大連造船所の「謎の四角いコンテナ」 日米シンクタンク警告、中国の原子力空母構想が現実味
第76回NHK紅白歌合戦、全貌判明 SNS発の次世代スターから伝説の歌姫まで「放送100年」をつなぐ一大音楽絵巻
【C107】冬コミ最終日、工事の制約越え世界72カ国からファン集結 50周年の節目、初日で15万人動員
李忠謙コラム:中国の武力挑発は再燃したが、米国の武器は「届かない」 台湾が抱える防衛のジレンマ
侍ジャパン、WBC連覇へ「投手8人」先行発表! 大谷翔平、菊池雄星らMLB勢3人選出
第76回NHK紅白歌合戦「連続テレビ小説『あんぱん』スペシャルステージ」詳細発表
【2026台北年越し】交通規制・完全ガイド いつから通行止め?駐車場は?MRT情報は?
日本の輸出リンゴ、10個中8個は台湾へ 李逸洋駐日代表が分析「GDPに関係ない台湾人の日本愛」
大阪・関西万博、最終黒字は370億円へ 海外客トップは「台湾」の17.5% 李逸洋駐日代表「日台往来は過去最高水準」
「日本のあの果物」が台湾で爆売れ!輸入量2.3万トン、台湾だけで750万個販売へ 青森産が圧倒的人気
パイナップルだけじゃない!台湾の「ある農産物」が日本でシェア95% 中国市場からの転換進む
李逸洋駐日代表、「頻発する演習は中国軍腐敗隠しの『虚勢』か」 日米連携の重要性訴え
2026年の「5大注目点」:高市早苗首相、大谷翔平選手、そして60年ぶり「丙午」の呪い
【単独インタビュー】日本酒にラグジュアリー革命を SAKE HUNDRED生駒代表が語る「台湾が試金石」の理由
50周年の冬コミが開幕、初日に15万人が来場 半世紀の節目に熱気
中国、台湾封鎖を狙う「5つのエリア」を設定!演習日程、航空便への影響、10時間に及ぶ「実弾射撃」の全貌
松田聖子、5年ぶり紅白出場へ 特別企画で「青い珊瑚礁」披露 放送100年締めくくる
解析》台湾に迫る実弾射撃 中国軍「正義使命-2025」、軍事演習海域は過去最接近
舞台裏》台湾国産潜水艦「海鯤号」は本当に大丈夫か 台湾海軍と台船が「ある時期」を待つ理由
舞台裏》中国軍なぜ今、台湾包囲演習なのか?米軍「ハイマース」を意識した標的訓練 台湾当局が分析する「4つの真の狙い」
中国軍、10時間の軍事演習 航空便941便・10万人に影響 台湾民航局「粗暴な挑発」と厳しく非難
中国軍、「中国版ハイマース」7発を発射、台湾北西沖に着弾 海巡署「中華民国水域への侵入は断じて容認しない」
中国、再び「台湾包囲」軍事演習を実施 豪メディア分析「2026年に開戦する意図はないが、戦争準備は整っている」
中国軍、「正義使命-2025」台湾包囲軍事演習 中国軍機130機を確認、90機が中間線越え 台湾国防部発表
中国軍、台湾周辺で軍事演習「正義使命-2025」ポスターに隠された宮古・バシー海峡封鎖の戦術 台湾の「生命線」を寸断
「20年前からやっている」トランプ氏、台湾包囲演習を静観「習近平氏とは良好な関係、彼が何かするとは思わない」
防衛省、特定秘密・規律違反で計30人を懲戒処分 小泉防衛相「信頼回復の先頭に立つ」
TAKANAWA GATEWAY CITY、初めて迎える新年に「新春高輪横丁」を開催
政府、「ビジネスと人権」行動計画を改定 AI・環境など8重点分野で企業の取り組み加速へ
台湾・台北に「ちいかわ」常設店オープン!ここでしか買えない「垂れ耳」限定グッズも登場 華山ではちいかわベビーの期間限定ショップも同時開催
aespaニンニン、インフルエンザで紅白欠席 事務所は物議のSNS投稿に「意図なかった」と釈明
福山雅治×稲葉浩志、第76回NHK紅白歌合戦で夢の共演!コラボ曲「木星」をテレビ初披露、伝説の夜
高市早苗首相、総理公邸へ引っ越し完了 ラフなトレーナー姿に「親近感」の声
日本のBL漫画家、台湾サイン会が中止に 台湾版に「中国国旗」表示し批判殺到
トヨタグループ、横浜に没入型ミュージアム「THE MOVEUM」期間限定開設 クリムトらの世界を全身で体験
Nothing、福袋は「富士・鷹・なすび」!1月2日正午発売、CMF製品のセールも
多摩動物公園でオオカミ脱走、4時間後に捕獲 1800人が避難もけが人なし
「パンダは台湾で見ればいい」発言も話題に 親台派・上畠寛弘議員、台湾への思い語る
中国軍、台湾周辺で軍事演習「正義使命-2025」を突如発表 陸海空・ロケット軍を総動員、「主要港湾封鎖」で圧力強化か
特集》中国、貿易黒字1兆ドル突破、人類史上最高記録も「危険信号」 世界の黒字6割を独占し、新たな摩擦の火種に
日本の再生可能エネルギー政策が大きく転換 太陽光発電の「無秩序な拡大」に歯止め 高市早苗政権が補助廃止と環境審査強化へ
【台湾】「2027年侵攻準備」は実力不足の裏返し 頼総統が習氏の指示を独自分析