【業績分析】バイトダンス、収益成長率と利益率が同時低下―米国TikTok規制とAI開発投資が重荷に

バイトダンスは「TikTok」(抖音の海外版)の親会社(同社ウェブサイトより)

バイトダンスの2023年第3四半期までの業績が低迷。国内EC事業の競争激化と成長鈍化、米国でのTikTok売却圧力、AI開発への巨額投資が要因。広告収入の伸び率は40%から17%に低下。利益率も補助金とAI投資で圧迫される展開に。

広告収入の成長鈍化が顕著に

中国メディアの報道によると、バイトダンスの2023年第1~3四半期の収益成長率と利益率が共に低下している。国内ではEC事業での激しい競争と成長鈍化、海外では米国によるTikTok売却要求の影響を受け、さらにAIモデル開発への大規模投資が利益を圧迫している。

成長率40%から17%へ急落

2020年には中国の広告主が抖音(Douyin)や今日頭条などのプラットフォームに1日1億元以上を投資し、業界平均を上回る高成長を維持してきた。しかし2023年前半では、中国国内の四半期広告収入成長率が約40%から17%未満に低下し、直近2四半期は目標未達となっている。

EC事業競争激化で成長率が大幅低下

報道によると、広告収入減少の背景には抖音EC事業の顕著な成長鈍化がある。EC売上高の成長率は年初の60%超から9月には20%未満に低下。生活サービス関連の広告収入も全体の5%に満たない。両分野で阿里巴巴、拼多多、京東、美団、快手、小紅書との激しい競争に直面している。

補助金300億元投入も効果限定

広告収入の成長鈍化に対応するため、バイトダンスは今年、プラットフォーム全体で300億元(約6000億円)超の商戦補助金を投入。しかし、広告収入は2四半期連続で目標未達となり、広告事業のコストは前年比60%増加している。

米国TikTok売却圧力が業績に影響

TikTokの事業展望はバイトダンスの企業価値を牽引する重要要素だったが、2023年前3四半期のグローバル収益も期待を下回った。バイデン大統領が4月に署名した法案により、2024年1月までのTikTok米国事業売却が求められており、これが広告主の信頼に影響を与えている。

AI開発への積極投資が収益圧迫

収益低下に加え、利益率の低下も注目される。商戦補助金に加え、生成AI「豆包」の開発に多額の投資を行っており、これも利益率低下の要因となっている。5月にはAIモデルの価格競争を主導的に開始し、10月には初のAIイヤホン「Ola Friend」を発売している。

AI投資継続で収益圧迫も

過去3年間、バイトダンスはPICO、ゲーム、飛書(「飛書(Feishu)」は中国国内での名称で、海外ではLark(ラーク)として展開されているビジネスコミュニケーションツールです。)など複数事業の縮小を進めてきたが、AIモデル開発は数少ない大規模投資分野となっている。梁汝波CEOは年次総会で「テクノロジーへの感度がスタートアップ企業に及ばない」と述べており、今後もAI投資は継続する見通し。広告収入の成長鈍化とTikTokの米国事業の不確実性により、短期的な利益率の改善は期待できない状況となっている。

編集:高畷祐子

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