【寄稿】日本で会社を経営する外国人が見落としやすい3つの年次手続き
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海外から日本へ進出する企業や投資家は年々増えています。創業期を経て、現地での採用や従業員の雇用へとステップアップする企業も少なくありません。しかし、日本の人事・労務関連法規は非常に厳格かつ煩雑で、日常の給与計算だけでなく、企業は毎年複数の法定義務を果たす必要があります。
日本の制度に不慣れな外国人経営者にとって、手続の漏れや遅れは高額な罰金を招くばかりか、経営者自身の在留資格(ビザ)にも悪影響を及ぼしかねません。日本で初めて従業員を雇用する経営者にとって、毎年必ず行うべき「3つの必須年次手続き」は絶対に軽視できない経営の必須科目です。
労働保険の年度更新 毎年6月から7月10日まで
日本の労働保険は「労災保険」と「雇用保険」で構成され、保険料の納付は「前払いで概算納付し、後で確定精算する」仕組みとなっています。毎年6月1日から7月10日までが法定の申告期間であり、企業はこの期間内に、全従業員(退職者を含む)に対して「前年度(4月1日から翌年3月31日まで)」に実際に支払った賃金総額を集計し、申告を行う必要があります。この賃金には基本給、残業代、賞与などが含まれますが、退職金や慶弔見舞金などの労働の対価ではない一時金は含まれません。
企業は確定した保険料を算出した後、前年度に概算で支払った金額との過不足を精算します。同時に、「今年度」の概算賃金に基づいて、次年度の概算保険料を申告・納付する必要があります。期限内に申告・納付しない場合、労働局によって保険料が強制的に決定されるだけでなく、さらに最大10%の追徴金が課されるリスクがあります。
筆者の実務経験でも、「経営管理ビザ」を持つ企業経営者がこの手続きを怠っているケースをよく目にします。出入国在留管理局へビザの更新に行き、「労働保険料納付証明書」の提出を求められて初めて未提出に気づくのです。このような事態は追徴金が発生するだけでなく、最悪の場合、手続きの遅延によりビザの更新スケジュールに間に合わないという、経営者にとって致命的なリスクをもたらします。
社会保険の算定基礎届 4〜6月の給与が基準に
前年度1年間のデータを対象とする労働保険とは異なり、社会保険の計算方法は、その年の直近「4月、5月、6月」の3ヶ月間に実際に支払われた給与をサンプルとして平均値を算出します。新しく算出された保険料の等級は、その年の9月から翌年8月までの保険料控除に適用されます。注意すべき点として、対象となるのは7月1日現在在籍しており、社会保険の加入資格を持つ従業員です。さらに、計算対象となる月において、該当社員の出勤・給与支払基礎日数が原則17日以上でなければ計算に含めることができません。
法律上、未申告や虚偽の申告を行った場合、最大で6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。また、保険料の計算を誤ると、会社の徴収額に過不足が生じるだけでなく、将来的に従業員が出産手当金や傷病手当金を受給する際の権利にも影響を及ぼし、無用な労使トラブルを引き起こす原因ともなります。
36協定 残業代を払っていても「未届け」は違法
多くの外国人経営者は、「残業代さえ全額支払っていれば、従業員に残業させても合法である」という誤解を抱きがちです。しかし日本では、法に基づいて『36協定(時間外・休日労働に関する協定)』を締結し提出していない限り、たとえ残業代を支払ったとしても、従業員に残業をさせることは違法行為となります。
日本の法定労働時間は「1日8時間、1週40時間」です。従業員にこの法定労働時間を超えて労働させる、あるいは法定休日に出勤させる可能性が「1%でもある」企業は、必ず従業員代表と『36協定』を締結し、労働基準監督署へ届け出なければなりません。通常、協定内の残業上限は「月45時間、年360時間」です。特別な繁忙期のために別途「特別条項」を締結した場合でも、年間の残業時間は絶対に720時間を超えてはなりません。
この協定なしに従業員に残業させた場合、経営者は最大で6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。実務上、「誰も通報しなければ大丈夫だろう」と運任せにする経営者も多いですが、他の事件をきっかけに連鎖反応が起きることが往々にしてあります。例えば、2025年に大阪中央労働基準監督署は、10店舗以上のチェーン店を展開する飲食企業の責任者を「書類送検」しました。その発端は、ある従業員が長時間労働により「労災保険」の給付を申請したことに過ぎませんでした。労基署が労災の調査を進める中で、同社が合法的に『36協定』を締結していなかったことが発覚し、最終的に経営者が検察に送致される事態となったのです。
手続き漏れを防ぐには
日本の労働法規は非常に細かく、厳格に執行されています。上述した「3つの必須年次手続き」は毎年行う必要がありますが、対象者の認定基準や賃金の計算期間(4月から翌3月か、4月から6月かなど)がそれぞれ異なるため、実務上は非常に混同しやすいものです。
日本市場に参入したばかりの外国人経営者にとって、煩雑な行政手続きに多大な経営リソースを費やしたり、法解釈の誤りによってビザや罰金のリスクを背負ったりするよりも、必要に応じて「社会保険労務士(社労士)」などの専門家に相談することも、リスクを抑える有効な選択肢となります。専門家による法令遵守のサポートを受けることで、日本での事業拡大と成長に専念することができるのです。
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