トップ ニュース ローマ教皇の対イラン軍事行動批判にトランプ氏が強く反発 異例の対立深まる
ローマ教皇の対イラン軍事行動批判にトランプ氏が強く反発 異例の対立深まる 2025年5月8日、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を現した新教皇レオ14世。(AP通信)
世俗の指導者と宗教的権威による衝突は歴史上珍しいものではないが、ホワイトハウスの主と米国出身のローマ教皇が公然と対立するのは極めて異例の事態だ。米国とイランの紛争やホルムズ海峡の封鎖を巡り、国際社会との軋轢(あつれき)を深めているドナルド・トランプ米大統領が今回、中東戦火を批判したローマ教皇レオ14世に対し、激しい非難の応酬に発展した。
トランプ氏は自分をキリストのように見せた画像を投稿したほか、「私が米大統領でなければ、あなたもバチカン(ローマ教皇庁)にいないだろう」とまで発言。これにより、世界14億人のカトリック信徒との関係は急速に緊迫している。
トランプ氏、謝罪を拒否「攻撃への正当な対応だ」 この舌戦の火種は、米イスラエル連合軍によるイラン攻撃をバチカン側が強く非難したことにあった。『アルジャジーラ』や『ロイター通信』によると、先週末のサン・ピエトロ大聖堂で行われた 平和のための祈りの集いにおいて、教皇レオ14世は「全能であるという錯覚」が戦争を助長していると公然と批判した。
トランプ氏がSNS上でイランへの大規模な攻撃を予告し、「今夜、文明そのものが消滅するだろう」と極端な発言を投稿した直後、 教皇は異例とも言える直接的な非難を表明。 「イランの全人民に向けられたこのような脅威は絶対に容認できない」と断じた。
『AP通信』の最新報道によれば、トランプ氏は13日、ホワイトハウスで記者会見を開き、教皇レオ14世への一連の批判について謝罪を明確に拒否した。トランプ氏はこれに先立ち、フロリダからワシントンへ戻る大統領専用機(エアフォース・ワン)内から、「この70歳の教皇は犯罪に対して極めて軟弱であり、外交政策は最悪だ」とSNSに投稿していた。
会見場に現れたトランプ氏は、教皇が米国の対イラン軍事行動に反対していることに触れつつ、「核武装したイランを米国が容認することは絶対にない。教皇はこの戦争の結末に満足することはないだろう」と強弁した。自身はあくまで教皇の公開批判に「対応」したに過ぎないと強調し、先に論争を公の場に持ち出したのは教皇側であるため、謝罪の必要は微塵もないとの認識を示した。それどころか、「私はレオ教皇のファンではない」と公言し、教皇を「犯罪を好んでいる」「リベラルすぎ、リベラルすぎる」とまで非難した。
ローマ教皇の反論「トランプ政権を恐れてはいない」 教皇は、米大統領との政治的論争に陥る意図はないとしながらも、今後も戦争反対の声を上げ続け、諸国間の対話と多国間主義を促進し、問題に対する公正な解決策を模索していく姿勢を示した。また、世界で多くの人々が苦しみ、罪のない命が奪われている現状を嘆き、「より良い解決策がある」と誰かが立ち上がって発信しなければならないと語った。教皇は、教会が伝える福音のメッセージとトランプ大統領の言動を混同することは、福音に対する誤解であると指摘した。
「救世主」を気取るトランプ氏のAI画像が炎上 トランプ氏と教皇の「一騎打ち」に加え、トランプ氏がSNS上で行った「ミーム」操作が、宗教界の怒りに油を注ぐ結果となった。『ニューヨーク・タイムズ』によると、トランプ氏は教皇を非難する長文を投稿したわずか1時間後、人工知能(AI)で生成されたと思われる1枚の画像を投稿した。
画像の中のトランプ氏は赤と白のローブを身にまとい、その両手からは神聖な光が放たれ、病床に伏す男性の額に手を当てている。周囲は崇拝の眼差しを向ける看護師や祈りを捧げる女性、ベースボールキャップ を被った迷彩服姿の兵士らに囲まれ、背景には自由の女神、リンカーン記念堂、戦闘機、ハクトウワシ、そしてはためく星条旗 が描かれていた。
「医師に扮した姿だ」とトランプ氏が主張した物議を醸した画像。現在は削除されている。(画像はインターネットより) トランプ氏を神格化しようとするこの画像は、すぐさま凄まじい波紋を広げ、トランプ陣営内部の保守的な支持層からも批判が噴出した。反トランスジェンダーを掲げる活動家でさえSNS上で「神を愚弄することは許されない 」と直言し、福音派の記者も画像を削除するよう公然と求めた。
猛烈なバッシングを受け、当該の投稿は13日午前に密かに削除された。しかし、トランプ氏は執務室において、あの画像は「自分が医師に扮している姿だと思っていた」と弁明。画像の内容を歪曲したのはすべて「フェイクニュース」であると反論した上で、「自分は実際に多くの人々をより良くしてきた」と強調した。
カトリック信徒である副大統領の苦境 この前代未聞の政教対立において、最も難しい立場に置かれているのが、米イラン 停戦交渉を主導するJ・D・バンス 副大統領である。バンス 氏は2019年にカトリックに改宗したばかりだが、連邦政府内では最高位のカトリック信徒であり、最近では自らの信仰を綴った著書も出版している。『FOXニュース』の独占インタビューに応じた同氏は、上司への忠誠と自らの信仰への敬意の間で、バランスを取ろうと苦心した。
トランプ氏が自分をキリストのように見せた画像について問われると、バンス 氏はこれを一つの「ジョーク」であると位置づけ、SNS上で飾らない素顔をさらけ出すトランプ氏の姿勢こそが称賛に値すると語った。また、投稿が削除された理由については、トランプ氏独自のユーモアのセンスを理解できない人々が多いことに配慮したためだと説明した。
世界のカトリック界が激怒 イタリア・メローニ首相も「容認しがたい」 トランプ氏の言動は米国内にとどまらず、国際社会に外交的な嵐を巻き起こしている。トランプ氏の親密な同盟者と目されてきたイタリアのメローニ首相でさえ、今回の教皇に対する発言を「容認しがたい」と強調した。メローニ氏は、カトリック教会の指導者である教皇が平和を呼びかけ、あらゆる形態の戦争を非難するのは当然のことであるとの見解を示した。メローニ政権の連立パートナーである民粋主義政党「同盟」のマッテオ・サルビーニ党首も、「教皇を攻撃することは有益でも賢明でもない」と苦言を呈した。
イタリア国内では、トランプ氏と良好な関係を築いてきたメローニ氏に対し、与野党から非難が殺到した。メローニ氏は13日午前、当初は強い声明を出さず、教皇のアフリカ訪問への感謝を述べるにとどまっていた。しかし、野党からの猛烈な突き上げを受け、最終的にトランプ氏の「受け入れがたい言辞」を公然と非難するに至った。また、サルビーニ 副首相、左派野党・民主党のエリー・シュライン党首、ロレンツォ・フォンタナ 下院議長、ラ=ルッサ 上院議長らも相次いで声明を発表し、絶えず平和を訴え続ける教皇への敬意を表明した。
イタリアの著名なカトリック評論家マッシモ・ファジョーリ氏は、さらに踏み込んだ発言をしている。同氏は「第二次世界大戦中、ヒトラーやムッソリーニでさえ、これほど直接的かつ公然と教皇を攻撃したことはなかった」と、トランプ氏の異例さを指摘した。
保守派からも厳しい勧告 注目すべきは、トランプ氏と関係の深い保守派層からも批判の声が上がっている点だ。『ニューヨーク・タイムズ』によると、かつてトランプ政権の宗教自由委員会メンバーを務めたロバート・バロン司教は、大統領の発言は「全く不適切で不敬である」と断じ、謝罪を求めた。また、自由市場経済を支持するアクトン研究所のロバート・シリコ神父は、今回のトランプ氏の暴発は「衝撃的」であるとし、大統領が教会発言の「道徳的高潔さ」を全く理解できていないと批判した。一方でシリコ神父は、「教会の使命はペンタゴン(国防総省)の戦略をマイクロマネジメントすることではない」とも述べ、世俗政治への配慮も付け加えた。
米国には7,000万人を超えるカトリック信徒がおり、総人口の約20%を占める。これは大統領選において、いかなる候補者も無視できない巨大な「票田」である。それにもかかわらず、トランプ氏はSNSで「バチカンが米国出身のレオ14世を教皇に選出したのは、私に対抗するための最良の手段だと考えたからだ」と傲慢な主張を展開。「私がホワイトハウスにいなければ、レオがバチカン(教皇庁)にいることもなかった」とまで記した。ローマ教皇の選出までもが国内政治の延長線上にあるとするこの主張は、トランプ氏の自己中心的な政治世界観を如実に物語っている。
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