「2026台北安全対話」が9日に開幕し、米国在台協会(AIT)台北事務所のレイモンド・グリーン(Raymond F. Greene)所長は、近年の紛争は新たな戦争の時代、すなわち非対称戦の時代に入ったことを示しており、革新力と迅速な適応力が決定的な優位をもたらすと述べた。
その上で、台湾は無人システム、ミッション・コマンド(任務指揮)、社会の強靭性という3つの独自の非対称的な優位性を活用して紛争を抑止できるとし、さらに成功に不可欠な2つの要素として、投資と予備戦力の活用を挙げた。
グリーン氏は、かつてない脅威に直面する今日の世界において、平和を維持するには国防予算の大幅な引き上げが必要だと強調した。
無人システム
グリーン氏は、無人システムは今日の戦争において、第一次世界大戦における機関銃、第二次世界大戦における戦車に匹敵する、戦場のルールを一変させ、戦争の形態を再定義し得る重要な技術だと述べた。
例えばウクライナは、正規の海軍を持たないまま強大なロシア黒海艦隊の弱体化に成功し、ロシアがオデーサに対して計画していた上陸作戦を阻止した。さらに直近では、世界でも有数の先進的な防空システムの一部を突破し、ロシア領内深くの重要な戦略目標を攻撃することにも成功しているという。
グリーン氏は、ウクライナは戦火の中、ほぼゼロから世界水準の防衛技術産業を築き上げたが、その技術的基盤は台湾が現在持つものの一部にすぎないと指摘した。
一方、台湾は極めて強固な基盤、すなわち高度な製造能力、深い半導体分野の専門性、そして実戦で検証済みの米国製先進自律システムを取得できる立場から出発していると述べ、例としてAndurilの「Altius」シリーズやShield AIの「V-BAT」を挙げた。
グリーン氏は、同様に重要な点として、米国を代表する無人機企業が台湾の大小さまざまな企業と、生産、研究開発、サプライチェーンにわたる深い協力関係を築きつつあることを挙げた。
台湾のドローン輸出は急速に伸びており、メーカー各社は要求水準の高い国際市場にも参入し始めている。米台はまた、無人水上艇(USV)、無人水中航走体(UUV)、AIを活用したスウォーム技術など、無人システム分野での協力の幅をさらに広げつつあるという。
これがまさにウクライナで見られている姿であり、現在進行中の各紛争が示す通り、現代の戦場は高度に透明で、急速に変化するという特徴を持つ。これは技術・装備そのものへの挑戦であると同時に、それを運用する人員に対してもより高い要求を突きつけるものだと述べた。
ミッション・コマンド(任務指揮)
グリーン氏は、ウクライナが開戦初期から一貫して発揮してきた重要な優位性の一つが、作戦上の意思決定を戦術レベルに委ねる「ミッション・コマンド」を実行する能力だと述べた。
前線で敵と接触する兵士に自律的な判断権が与えられたとき、彼らは硬直的なトップダウン型の指揮系統に縛られたままのロシア軍を、幾度となく出し抜くことに成功しているという。
グリーン氏は、ウクライナがミッション・コマンドの運用に成功し、ロシアがそれに失敗している理由の一つとして、ウクライナや台湾のような民主主義国家が共有する非対称的な優位性、すなわち「自国軍が国家に忠誠を尽くしているかどうかを懸念する必要がない」という点を挙げた。
この信頼は感情的な次元にとどまらず、作戦上、決定的な効果を生み得るものだと述べた。
グリーン氏は、通信が遮断・妨害されるような高強度の戦闘環境において、上級司令部の承認を待たずに現場で行動を起こせる側が明確な優位に立つと指摘した。
この種の硬直性は容易に解決できる問題ではないが、台湾で直近実施された漢光演習は、台湾がミッション・コマンドの概念に急速に適応し、部隊がより高い作戦上の柔軟性を備えつつあることを示していると述べた。
社会の強靭性
グリーン氏は、ロシアのような大国は、開かれた社会を利用できる弱点とみなす傾向があると述べた。
メディアや情報の操作、選挙介入によって社会の分断をあおり、国防投資への支持を弱めたり、紛争時に民間人や経済インフラを直接攻撃したりする手法がその例であり、これらは民主主義国家が社会の強靭性を高める必要性を一段と浮き彫りにしているとした。
グリーン氏は、台湾の官民セクターは危機の発生を待ってから準備を始めたわけではないと指摘した。過去2年間、複数回にわたる都市強靭化演習を視察してきたが、中央・地方政府間、および民間機関と台湾軍との連携能力の向上には目覚ましいものがあると述べた。
台湾には強固なボランティア活動と地域相互扶助の伝統があり、これらが社会の強靭性を支える重要な基盤になっているという。
グリーン氏は、台湾はエネルギーをはじめとする重要分野において、自国の経済的な脆弱性にも体系的に取り組んでいると述べた。
国際社会は台湾による液化天然ガス(LNG)の輸送・貯蔵能力拡大の取り組みに高い関心を寄せているが、多くの人はエネルギー強靭性全般における台湾の大きな進展を見落としているとした。
グリーン氏は、中東の紛争がエネルギー供給や重要輸入品に及ぼした影響に台湾が対応できていること自体が、こうした強靭性強化の成果を示す証拠だと述べた。
また情報分野では、台湾は社会の分断をあおり、民主制度や台湾の国際パートナーシップへの信頼を弱めることを目的とした敵対的宣伝に日々さらされており、そこには米国への信頼を損なう試みも含まれると指摘した。
グリーン氏は、台湾はこうした情報操作への対応において国際的な模範となっているが、次に来るより複雑な脅威への備えは依然として必要だと述べた。
特に今後の選挙では、こうした情報戦が人工知能の最新技術と結びつく可能性があり、AIを駆使したサイバー脅威が銀行や重要インフラといった分野に重大な課題をもたらしかねないため、直ちに行動を起こす必要があると強調した。
防衛投資と防衛産業基盤
グリーン氏は、かつてない脅威に直面する今日の世界において、平和を維持するには国防予算の大幅な引き上げが必要だと改めて述べた。
米国の後押しを受け、欧州は数十年にわたる国防投資不足からの脱却へと前進しつつあり、オーストラリア、日本、韓国も同様の動きを見せているという。
グリーン氏は、台湾は紛争が発生した際、長期にわたる継続的な自衛投資がどのような成果をもたらし得るかを証明し続けていると述べた。
頼清徳政権も同様の措置を講じており、2030年までに国防支出をGDP比5%まで引き上げるとの目標を含め、他の多くのパートナーと比べても台湾にはそうした選択をする能力があるとした。
グリーン氏は、兵器・装備の調達拡大は必要だが、それだけでは不十分であり、戦時における作戦能力の回復・補充も同様に重要だと述べた。
そのためには防衛産業基盤への投資が不可欠であり、こうした投資は経済面と安全保障面の両方で利益をもたらすとした。台湾は自国のニーズを満たすだけでなく、世界の民主主義国家間でより安全で信頼できるサプライチェーンの構築に貢献できるだけの技術力と製造能力を備えているという。
グリーン氏は、防衛産業への投資が汚職を助長しかねないという反論があるが、これは論点をそらすものだと述べた。
実際には、自由なメディア、立法府による監督、内部監察機構を備えた民主主義国家の方が、むしろ汚職を抑制できる。これ自体が、権威主義国家に対する民主主義国家のもう一つの非対称的な優位性だとした。
グリーン氏は、透明性を欠く権威主義国家は、自国の装備が実際に機能するかどうかを、初めて実戦に投入されるまで確認できないことすらあると指摘した。
予備戦力と人的資源の活用
グリーン氏は、国防支出増加に反対するもう一つのよくある誤った論拠として、「台湾には購入する装備を運用するのに十分な軍事要員がいない」という主張があると述べた。
しかし台北は、予備部隊のより効果的な活用を通じて、すでにこの問いに答え始めているとした。
2024年に徴兵期間を4カ月から1年に延長して以降、台湾陸軍の規模と即応性はすでに変化を見せ始めており、改革後の1年間の訓練制度により、来年にはより十分な訓練を受けた3万人超の新たな兵員が、近代的な装備とともに戦力構成に加わることになるという。
グリーン氏は、台湾がこうした政策改革をさらに深化させていけば、人口動態上の圧力が続く中でも、必要とされる兵力規模と専門性を築くことができると述べた。
台湾には、比較的小さな人口を、より層が厚く、訓練を受け、迅速に実戦投入可能な戦力へと転換できる余地が確かにあるとした。
グリーン氏は、この効果を十分に発揮するために、台湾は予備役の年次召集訓練期間をさらに延長し、予備役の技能が軍の実際のニーズと合致するよう確保すべきだと述べた。
また、台湾の女性人口も規模の大きい、しかし十分に活用されていない人的資源であり、台湾の人的基盤にとって真の潜在的優位をもたらすとした。
台湾軍に占める女性の割合はすでに日本や韓国を上回り、米国と同水準にあり、これは台湾軍が相当に層が厚く、強靭な人材基盤を築いていることを示す明確な指標の一つだと述べた。
2022年以降に進む台湾の防衛転換
グリーン氏は、ロシアによるウクライナ全面侵攻、そして同年後半に台湾海峡がかつてない挑発に直面して以降、台北は自国の防衛能力強化に向けて断固たる行動を取ってきたと述べた。
直近の漢光演習では、パトリオットミサイル部隊や機甲旅団が市街地で機動演習を行う様子が見られたが、これは数年前にはほとんど想像もできなかった光景だという。
グリーン氏は、これは小さな漸進的変化ではなく、台湾の自衛に対する姿勢が根本的に変わったことを意味しており、この点は率直に評価されるべきだと述べた。
同時に、米国側も台湾側も、過去の成功だけに満足していてはならないとし、ウクライナや中東の戦場から絶えず新たな、そしてしばしば厳しい教訓を学び続けており、それらを台湾の備えや作戦のあり方に取り込んでいくことが、そうした教訓が実際の戦争で試される事態を未然に防ぐことにつながると述べた。
グリーン氏は、これこそが台湾と世界全体で追求している目標であり、勝利や紛争そのものを追い求めるのではなく、根本的に紛争の発生を回避することにあると強調した。
そして、この日集まった人々の努力によって、そうした未来は実際に手の届く範囲にあると結んだ。