11月5日の米大統領選を前に、欧米間の貿易戦争激化と地政学的要因による国際貿易秩序の再編が各界で懸念されている。
欧州シンクタンク「ジャック・ドロール研究所」の貿易地政学・欧中関係専門家エルヴィル・ファブリ氏が30日付「ロピニオン」紙のインタビューで指摘したところによると、30年に及ぶグローバル化の加速の後、トランプ第一期政権下での米中貿易戦争、新型コロナウイルス危機、さらにロシア・ウクライナ戦争により、「地政学的な親密性」に基づく国際貿易の再編が進んでいるという。
また、間もなく開催される米大統領選に加え、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が22日から24日にかけて開催した首脳会議も、国際貿易の将来秩序にとって極めて重要な意味を持つ。
BRICS諸国は、SWIFT(国際銀行間通信協会)の決済システムに対抗する新たな金融決済プラットフォーム「BRICS Bridge」の創設を議論。「脱ドル化」を目指す動きを見せている。
BRICSの新金融システム構想
BRICSは22〜24日の首脳会議で、SWIFTに対抗する新たな金融決済プラットフォーム「BRICS Bridge」の創設を議論。「脱ドル化」を目指す動きについて、ファブリ氏は「これは主にロシアではなく中国の計画であり、人民元の使用を強要しようとしている」と分析した。
中国の人民元戦略
ロシアのウクライナ侵攻後、対中貿易での人民元使用が加速。2023年の中露貿易額は約2,400億ドルに達し、前年比26%増を記録。ブラジル、サウジアラビア、イラン、南アフリカ、ケニア、ナイジェリアなども対中取引で人民元を採用している。ファブリ氏は特に重要な指摘として、「人民元貿易の発展は台湾制圧計画の前提条件である」と述べ、「習近平は計画を隠していないが、時期は不明確」と警告した。
トランプ氏の強硬策と欧州の対応
トランプ氏は「脱ドル」を図る国に対し100%の関税を課すと警告。再選した場合、EUに10%、中国に60%の関税を課す方針を示している。これに対し欧州委員会は、米国からの輸入品に50%以上の報復関税を課す準備を進めている。しかし専門家は、一部加盟国が対ウクライナ支援への米国の報復を恐れて協力を躊躇する可能性を懸念している。
中国の二面性
ファブリ氏は、中国が表面上は貿易開放を主張しながら、国内企業への大規模補助金は維持する二面的な姿勢を指摘。「これは言説の戦いとなる。中国は環境・デジタル技術の世界展開を掲げ、米国はサプライチェーンの自国回帰に注力する」と分析している。
最後に、EU・メルコスール協定について、ファブリ氏は「欧州が署名しなければ、中国がさらに地位を強化するだけ」と警告。中国は既にブラジルの最大貿易相手国となっており、地域への投資を急速に拡大している。
編集:佐野華美 (関連記事: 「習近平は優れた指導者」トランプ氏が持論 米人気番組で台湾半導体産業を痛烈批判 | 関連記事をもっと読む )
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