一部の新聞は大統領選の支持表明に過度に慎重な態度を示していますが、『エコノミスト』は読者に対して我々の選択を躊躇なく伝えています—もし11月5日に投票できるのであれば、我々はカマラ・ハリスに投票するでしょう。
『エコノミスト』が読者に送った電子メール
ワシントン=本紙特派員】米大統領選を5日後に控え、エコノミスト誌は31日、民主党のカマラ・ハリス候補への支持を表明した。「11月5日に投票権があれば、我々はハリス氏に投票する」と明言。ワシントン・ポストやロサンゼルス・タイムズなどの主要メディアが支持表明を控えるなか、トランプ氏再選は「経済、法の支配、国際平和を賭けた博打となる」と強い懸念を示した。
トランプ支持層の三分化
エコノミスト誌は来週の投票で、トランプ氏に投票する有権者を3つのグループに分類。第一に、ハリス氏を「過激なマルクス主義者」とみなす民主党への不満層。第二に、トランプ氏の「強いアメリカ」に共鳴する民族主義的支持層。そして第三に、理性的判断の末に支持を決めた層だ。特に注目すべきは第三のグループだ。彼らは、トランプ氏個人には否定的でも「政権スタッフや政府機構、議会、裁判所による抑制効果」を期待して支持を決めているという。同誌はこうした期待を「軽率で自己満足的」と一蹴した。
同誌は「次の4年間を無事乗り切れる可能性はある」としながらも、「自称・理性的有権者」によるリスクの過小評価を強く批判。「深刻な問題発生の確率は誰にも予測できないが、リスクを軽視する有権者は自己欺瞞に陥っている」と断じた。一方のハリス氏については「平凡かもしれない」としながらも、破滅的シナリオを回避できる選択肢として支持を表明した。
エコノミスト誌は、トランプ氏の再選による具体的なリスクとして、以下の3点を挙げた。
1. 経済的荒廃の懸念
トランプ氏は全輸入品への20%関税賦課を公約に掲げ、メキシコからの自動車輸入には最大500%の関税を示唆。さらに、数百万人規模の非正規移民の強制送還や、財政赤字が戦時水準に達している中での大規模減税も主張している。
同誌は「これらの政策はインフレを引き起こし、連邦準備制度理事会(FRB)との対立を招く可能性がある」と指摘。「貿易戦争の再燃や財政赤字の拡大により、外国投資家による米国債購入停止の懸念も生じかねない」と警告を発した。
2. 不安定化する国際情勢
トランプ氏の前政権時は比較的平和な国際環境だったが、次期大統領は就任直後から2つの戦争に直面する。ロシアが優勢に立つウクライナ情勢と、イランへの波及が懸念される中東域内紛争だ。
同誌は「トランプ氏の同盟国軽視は深刻だ」と指摘。NATO(北大西洋条約機構)の崩壊を招く恐れがあるとし、「中国は同盟国に対するトランプ氏の態度を注視し、台湾侵攻の度合いを判断するだろう」と分析している。
3. 権力抑制機能の形骸化
前政権時と比べ、トランプ氏の暴走を抑制する力が著しく低下しているという。側近人事では「忠誠心のある追従者」のみを登用する傾向が強まり、最高裁も大統領の公務に関する訴追を制限する判断を下した。
共和党系シンクタンクは「忠誠者リスト」を作成し、次期内閣の人選を進めているという。「前政権で内閣の半数が支持を拒否し、最古参の上院議員が『恥知らず』と非難、元幕僚長らが『ファシスト』と指摘した人物を、普通の採用面接なら即座に不採用にするはずだ」と同誌は批判している。
ハリス氏への評価
一方のハリス氏については「政策ビジョンの説明が不十分で、優柔不断かつ自信不足の印象がある」としつつ、「安定性を体現している」と評価。規制重視や富裕層増税などの政策には課題があるものの、気候変動や中絶問題での立場は「明らかに優れている」とした。
「傑出した大統領になるとは考えにくいが、破滅的な結果をもたらすこともない」として、最終的な支持を表明。「大統領は聖人である必要はない。我々に一票があれば、ハリス氏に投じる」と結論付けた。
編集:佐野華美
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