「西洋の時代」の終焉 ー 世界秩序の構造的変化
新加坡の著名な外交官マーブバニ氏は、過去200年続いた西洋主導の世界秩序が終わりを迎えつつあると指摘します。「西洋は依然として最も強力な文明ですが、世界を支配する能力は失われつつあります」と彼は説明します。その具体例として、ウクライナ戦争後の対ロシア制裁に、世界人口の85%が参加していない事実を挙げ、西洋の孤立を示しました。
地政学の構造的変化 ー 台湾は「捨て駒」になる危険性
マーブバニ氏は、米中対立が今後10年で加速すると予測し、この競争の中で台湾が「捨て駒」になる可能性を警告しました。彼は地政学の変化を推進する3つの力を挙げました:
地政学の「鉄則」:中国が米国を追い越そうとする際、米国が中国を抑え込もうとする。
西洋人の「黄色人種」への恐怖:感情的要素が対中政策を非合理的にする危険性。
イデオロギー:民主主義対独裁という図式で中国を悪魔化する傾向。
米中の強みを比較 ー 前例のない規模の大国間競争
マーブバニ氏は、米中それぞれの社会的強みを分析しました。中国の強みとして、文明の連続性と回復力、指導者の積極性、国民の奮闘精神を挙げました。一方、米国の強みとしては、ダーウィニズム的な社会競争、世界中から集まる優秀な人材、革新的な文化を指摘しました。
2024年米大統領選の影響 ー 慎重な外交姿勢の重要性
マーブバニ氏は、2024年の米大統領選の結果に関わらず、米中関係は構造的な力によって動くと予測しています。ただし、トランプ氏とハリス氏の対中政策には重要な違いがあると指摘しました。
バイデン政権の特徴として、同盟国を「反中」陣営に引き込む努力を挙げる一方、トランプ氏は同盟国を「資産」ではなく「負債」と見なし、どんな取引でも躊躇なく犠牲にする可能性があると警告しています。
「台湾独立は戦争を招く」 ー ポンペオ発言の危険性
マーブバニ氏は、トランプ政権時代の国務長官ポンペオ氏が台湾で行った演説で、米国が台湾を独立国家として認めるべきだと提案したことに強い懸念を示しました。「もしこれが実現すれば、台湾は戦争状態に陥る可能性がある」と警告しています。
「台湾独立は国際的孤立を招く」 ー 現実的な外交の必要性
マーブバニ氏は、台湾が独立を推進した場合、大多数の国が台湾を独立国家として認めないだろうと警告しました。「台湾独立の推進は、より大きな行動の自由を得るためかもしれません。しかし実際には、台湾をさらに孤立させることになるでしょう」と指摘しています。
ASEANと中国の経済関係:台湾の立場を脅かす要因
特に、ASEANと中国の貿易額が2008年の400億ドルから2022年には約1兆ドルに増加したことを例に挙げ、「東南アジア諸国は1兆ドル規模の貿易を犠牲にはしない」と指摘しました。
平和維持のための現実認識の重要性
マーブバニ氏は最後に、台湾の人々に対して、平和を維持したいのであれば、自分たちが直面している複雑で困難な地政学的環境を理解する必要があると訴えました。「どうか非常に慎重に行動してください!」という言葉で締めくくっています。 編集:高畷祐子
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