「世界で台湾だけの罪」で柯文哲前市長を起訴 証拠なき逮捕に再燃する議論

郭正亮元立法委員は4日、『風傳媒』のウェブ番組『下班瀚你聊』に出演し、「圖利罪は台湾にしか存在しない」と指摘。台湾民衆党に対し、同罪の妥当性について議論を行うよう提言した。(資料写真、撮影:柯承惠)

「圖利罪」は台湾独自の罪状、世界に類を見ず

元立法委員の郭正亮氏が『風傳媒』のウェブ番組《下班瀚你聊》で、台湾独自の罪状である「圖利罪」(不当利益供与罪)について言及し、その妥当性に疑問を呈した。京華城の容積率ボーナス問題で柯文哲前台北市長が訴追された事件を受け、この罪状の是非が再び注目を集めている。


郭氏は、「世界中で台湾にしかない罪状だ」と指摘。日本を含む諸外国にはこの罪状が存在せず、欧米では正確な訳語すら存在しないという。「公務員の行動には多くのグレーゾーンがある。なぜこのような罪状を定める必要があるのか。この罪状は廃止すべきだ」と郭氏は主張した。

【郭正亮(かく・せいりょう)氏】 元民主進歩党立法委員。1964年生まれ。台湾大学で学士号と修士号を取得後、米イェール大学で政治学博士号を取得。立法委員を務めた後、現在は中国文化大学国際企業管理学科副教授。台湾政治の評論家としてもメディアに頻繁に登場する。

検察の捜査能力不足が背景に?

郭氏は、台湾でこの罪状が存在する理由として、検察の捜査能力の不足を挙げた。「なぜ欧米や日本、韓国ではこの罪状を使わずに汚職を摘発できるのか。それは金融取引の追跡能力が非常に高いからだ」と説明。証拠の構築が可能な他国に比べ、台湾の捜査機関は「金融取引すら追跡できず、意思決定への介入だけを調べている」と批判した。


与野党問わず、政治家を脅かす圖利罪

郭氏は、圖利罪が柯文哲氏だけでなく、国民党の地方首長も標的になる可能性を指摘。「民進党が中央政権を握っているから今は大丈夫だが、国民党が政権を取ったら黄偉哲台南市長や陳其邁高雄市長も圖利罪で訴追される可能性がある。みんなで試してみるか?あまりにも容易に犯罪になってしまう」と皮肉った。


1996年から存在する廃止論

郭氏によると、圖利罪の廃止論は新しいものではない。1996年には当時の立法委員、江丙坤氏が国家発展委員会で同様の提案をしていたという。「世界中で台湾にしかないこの罪状を削除しなければ、公務員は仕事ができなくなる」という主張だ。


郭氏は、「柯文哲氏の金融取引の証拠もないのに、圖利罪だけで拘束するのは多くの人が納得しない。『民主台湾』のイメージに傷がつく」と警告した。


外国メディアも理解に苦慮

現在の外国メディアの報道は、柯文哲氏が逮捕されたという事実だけに留まっており、圖利罪についての詳細な説明はほとんどないという。「賄賂もないのに何を訴追しているのか、外国メディアには理解できない」と郭氏は指摘した。


最後に郭氏は、民眾黨の黄国昌立法院党団総招集人に対し、司法法制委員会で圖利罪の妥当性について議論を行うよう提言。「世界中にこのような罪状はなく、グレーゾーンが広すぎる。毎回、司法に大きな裁量権を与え、公務員の仕事を萎縮させている」と締めくくった。


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