野島剛教授に聞く:「民意が決める」日本の対台湾政策、中国政府には理解困難

2024-09-04 14:02
大東文化大学社会学部教授・同大学院社会学研究科長の野島剛氏が4日、『風傳媒』のインタビューに応じ、日台関係について語った。(撮影:黄信維)
大東文化大学社会学部教授・同大学院社会学研究科長の野島剛氏が4日、『風傳媒』のインタビューに応じ、日台関係について語った。(撮影:黄信維)
目次

大東文化大学社会学科教授兼社会学研究所所長の野島剛氏が、『風傳媒』の単独インタビューに応じ、最新著書と時事問題について語った。台湾と日本が中国軍から頻繁に受ける挑発行為について、野島氏は「中国の狙いは『非日常を日常化』することにある」と指摘。この状況が中国に有利に働くと分析している。

新首相就任後も不変の日台関係:世論が支える強固な絆

9月末に予定される日本の首相交代について、野島氏は具体的な後任者を予測することは難しいとしながらも、「日本の世論が台湾支持を後押ししている以上、日台関係に大きな変化はないだろう」と予想している。

『台湾は日本を超えたのか』:文化交流の深層に迫る新著

野島氏の最新著書『台湾は日本を超えたのか?パイナップル、弁当、TSMCから見る日台社会文化交流の観察と考察』は、過去2、3年間に台湾メディアで発表した記事をまとめたものだ。野島氏は「日本人としての視点と長年の日台関係観察を活かし、第三者的な分析を提供している点が特徴だ」と述べている。

台湾の「安価な公共料金」の矛盾:政治的課題に一石を投じる

野島氏は台湾の特異な経済状況について言及した。「高額な住宅価格に対し、水道光熱費が非常に安価なのは奇妙な現象だ」と指摘。台湾のすべての政党や立法委員がこの状況を認識しているにもかかわらず、選挙への影響を恐れて公然と議論しないと分析。日本の過去の経験を引き合いに出し、市場原理に基づいた調整の必要性を示唆している。

半導体産業の日台格差:20年以上のキャッチアップ期間が必要

半導体産業における台湾の優位性について、野島氏は「日本が台湾に追いつくには20年以上かかるだろう」と分析した。日本政府の多額の投資にもかかわらず成果が出ていない現状を踏まえ、台湾企業の誘致と支援に注力する日本の戦略を解説。TSMCへの土地や資金提供などの大規模支援にも言及した。

蔡英文前総統と唐鳳前デジタル担当相:日本で高まる関心

過去8年間で蔡英文前総統と唐鳳前デジタル担当相が日本で注目を集めた理由について、野島氏は詳細に分析。「蔡氏の女性リーダーとしての斬新さ」や「唐氏の理想化されたイメージ」が日本人の興味を引いたと指摘。「岸田文雄首相に関する書籍は2、3冊程度だが、蔡英文氏に関する研究書は15冊以上に及び、今も出版が続いている」と述べ、日本社会における関心の高さを強調した。

「台湾有事は日本有事」:習近平体制下で現実味を帯びる危機感

安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事」発言の背景について、野島氏は習近平国家主席の強硬姿勢が日本の危機感を高めたと指摘。これが安倍政権の長期化につながったとの見方を示した。「過去は想像上の『台湾有事』だったが、今は切迫感のある現実的な問題となっている」と分析している。

日本の新首相と日台関係:世論が支える不変の友好関係

岸田文雄首相の不出馬表明を受け、野島氏は新首相の下でも日台関係に大きな変化はないとの見方を示した。「日本社会全体が台湾を支持している」と強調し、民意の力が両国関係を支えていると分析。「中国政府はこの状況を理解できていない」と指摘し、指導者の一存で物事が決まる中国社会との違いを強調した。

中国軍の挑発行為:「非日常の日常化」への警戒を

中国軍機の日本領空初侵犯や尖閣諸島周辺での中国海警局船の行動について、野島氏は「非日常を日常化させる」中国の戦略だと指摘。台湾周辺でも同様の動きがあることから、警戒を怠らないよう注意を促している。

次なる執筆計画:日台の絆を深める報道文学を目指して

最後に、野島氏は今後の執筆計画について語った。2022年から2024年にかけては台湾政治や国際ニュースの対応に追われていたが、今後はより長期的な視点での著作に取り組みたいと述べた。日台野球を紹介する本や牡丹社事件に関する書籍など、報道文学の分野でさらに3、4冊の著作を目指すという。56歳という年齢を意識しつつ、70歳まで執筆活動を続けられるとして、残された時間で意義ある作品を生み出す決意を示した。編集/高畷祐子 (関連記事: 賴清德総統の対ロシア発言に波紋:民衆党議員が「戦争を煽る」と批判 関連記事をもっと読む

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