台北市内の双連市場や地下鉄(MRT)駅周辺、公園の草むらなどで大量のネズミが徘徊する様子を捉えた動画が、SNS「Threads」を中心に拡散し、波紋を広げている。台北市は大規模な殺鼠剤の散布に乗り出したものの、子供やペットの誤飲リスクが指摘され、単純な環境衛生問題が市政を揺るがす事態へと発展した。2026年の市長選で再選を目指す国民党所属の蔣万安台北市長に対し、与党・民主進歩党(民進党)は市の対応の遅れを批判しており、首都の統治能力を問う政治問題へと拡大する様相を見せている。
ネット上で台北市長・蔣市長(中国語で蔣萬「安」)の名前にちなみ「安鼠の乱」とも呼ばれるこの騒動は、深夜の市場で群がるネズミを捉えた短い動画が発端だった。数日のうちに「台北のネズミ」が検索トレンドとなり、保護者や飼い主からは殺鼠剤の誤飲を懸念する声が噴出。市は投薬と消毒を強化したが、公共空間への毒餌設置による生態系への影響やハンタウイルスの感染リスクなど、新たな懸念が浮上した。世論の圧力が市に集中する中、中央省庁の環境省と台北市との間で対応に向けた協議が本格化した。
市当局は連日、SNSに投稿される動画への対応に追われている。清掃隊が深夜に市場のネズミの巣穴を点検する事態となっているが、新たな動画が公開されるたびに市の対策が厳しく問われている。市役所内部では、市民の不満を抑えるために強力な投薬を継続すべきだという意見と、過度な薬剤使用が新たな安全問題を引き起こすとする慎重論に分かれていた。

台北市が環境省に支援要請、彭啓明環境相は自宅での体験を語る
こうした中、台北市環境保護局が環境省に協力を打診した。関係者によると、環境省側は直ちに中央と地方の協力体制を構築する方針を固め、彭啓明環境相の指示のもと、謝燕儒次官(副大臣に相当)が率い、化学物質管理署や環境管理署が参加する合同会議が設定された。
興味深いことに、台北市が支援を求めた相手である彭氏は、かつて民進党から蔣氏の対立候補として台北市長選への擁立が検討された人物でもある。彭氏自身の意向で立候補には至らなかったものの、巡り巡って、いまや蔣氏の市政課題解決を支援する立場に回るという皮肉な構図となった。
会議の冒頭、市側は投薬方針や清掃・消毒の範囲を説明した上で、市民対応ダイヤル「1999」へのネズミ関連の通報件数が減少傾向にあると報告した。一方で、「ネズミを1匹見ただけで動画がネットに投稿される」ほど市民の環境に対する感度が高まっており、実際の被害状況と社会的影響の間に乖離が生じているとの認識を示した。
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これに対し、環境省は市の説明を頭ごなしに否定することはなかった。むしろ彭氏自ら口を開き、自身の実家もかつてネズミ被害に遭ったと語り出した。彭氏によれば、探知機まで動員してネズミの隠れ場所を特定しようとしたものの、ごく小さな隙間から侵入され、最終的には捕獲器で対処せざるを得なかったという。こうしたエピソードを通じて場の空気を和らげた上で、彭氏は4つの提案を行った。すなわち、デング熱の防疫モデルに準じた市幹部による部局横断的な統括、殺鼠剤の投薬地点の公開、市場・公園・下水道など区域ごとの役割分担、そして専門家を交えた科学的な防除戦略の策定である。




















































