台湾駐日本代表処台湾文化センターが主催する連続上映企画「台湾文化センター 台湾映画上映会2026」の第3回上映作品として、映画「うなぎ」の上映会が2026年6月7日、東京都渋谷区のユーロライブで開催された。上映後には、本作が長編デビュー作となるチュウ・ジュンタン(朱駿騰)監督が来日して登壇し、キュレーターを務める映画監督のリム・カーワイ氏が聞き手となり、トークイベントが行われた。
ベルリン映画祭でも注目、社子島を舞台に描く長編デビュー作
「うなぎ」(原題:河鰻)は、現代アートシーンで活躍するチュウ・ジュンタン監督が手掛けた2024年の台湾映画で、ベルリン国際映画祭「パースペクティヴ」コンペティション部門に台湾映画として初めて選出されるなど、国際的な注目を集めている話題作である。
物語は、台北の基隆河と淡水河が交差する場所に位置する砂州「社子島」を舞台に、ゴミ焼却場で働く主人公の阿亮が、川に漂う謎めいた女性と出会い、互いの傷や物語を明かしていく姿を描いている。シンガーソングライターのクー・ミンシュン(柯泯薰)をはじめ、デヴィン・パン(潘綱大)、パン・チンユー(潘親御)、チェン・ジーシア(陳季霞)らが出演している。
監督が語るタイトルの意味と、忘れられた社子島への思い
トークイベントでチュウ監督は、もともと映画を専攻していたがその後アート関係の仕事をしており、本作が20数年ぶりの映画界復帰作であることを明かした。タイトルの意味について問われると、回遊魚であるうなぎの生態に命が巡るロマンチックさを感じており、川で出会い自分自身を探す主人公の男女もうなぎのような存在だと語った。
また、舞台となった社子島について、約50年前から政府の制限で開発が進んでおらず、半世紀前と変わらない風景が残るタイムカプセルのような場所だと説明した。島も登場人物も動物もすべてが必要とされなくなり忘れられ、将来どうしていいかわからない状態にあることが、本作を貫くテーマであると強調した。さらに、幼い頃からものを失うことに恐怖を覚えており、自分自身を根っこのない人間だと感じている人生観が、主人公にも色濃く反映されていると胸の内を明かした。
ベトナム人撮影監督の起用やエンディング曲に関する裏話も
制作の裏話として、生命力を感じられる映像を求めて直感でベトナム人のカメラマンを起用し、音楽担当もその紹介で決まったという偶然の出会いが明かされた。エンディング曲に台湾でも人気のヤオ・スーロン(姚蘇蓉)が歌う加山雄三の「君といつまでも」の台湾版を使用したことについては、脚本執筆中にメロディーが浮かび、歌詞が登場人物のモノローグとして結末にふさわしいと感じたためだと語った。
日本の観客に向けて、大島渚監督や岩井俊二監督から強い影響を受けているという自身の創作の原点にも触れた。最後に台湾映画の魅力について問われると、チュウ監督は、台湾は文化的、政治的、地理的に特別な場所であり、小さな島で生きる様々なプレッシャーや取り巻く特別な感覚が台湾映画に反映されていることこそが魅力であると述べ、会場からのあたたかい拍手とともにイベントは幕を閉じた。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp
編集:小田菜々香

















































