習近平氏の訪朝で消えた「非核化」 北朝鮮の影響力拡大、台湾有事リスクにも波及か

2026年6月8日、中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が平壌で会談した。(写真/AP通信提供)
2026年6月8日、中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が平壌で会談した。(写真/AP通信提供)

中国の習近平国家主席が8日、7年ぶりに平壌の地を踏んだ。出迎えた北朝鮮最高指導者・金正恩氏の表情には、かつてないほどの自信がみなぎっていた。米紙『ニューヨーク・タイムズ』は、過去には金氏が北京に赴いて謁見することが多かったのに対し、今回は習氏が自ら足を運んだと指摘。「金氏の勝利」であると断じた。

その背景には、北朝鮮が現在、過去30年間で最も強力な地政学的影響力を有している事実がある。また、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』も、ロシア・ウクライナ戦争に伴う軍需産業の特需により、北朝鮮政権が「過去のいかなる時期よりも潤沢な資金を得ている」と警鐘を鳴らした。

一方、韓国メディアは、潤沢な資金と核のボタンを握るこの危険な隣国が、習氏と歩調を合わせ、戦略的焦点を台湾へと移しつつあると警告を発している。

完全復活を遂げた地政学的戦略家

​米紙『ニューヨーク・タイムズ』によれば、新型コロナウイルスの感染拡大が最も深刻だった2020年、金氏は国営テレビの放送中に涙を流し、国民を生活苦から救い出せていない自身の努力不足を涙ながらに謝罪した。最高指導者を神格化するこの閉鎖的な国家において、その涙は世界中の北朝鮮専門家に衝撃を与えた。当時の平壌は、国境の自己封鎖、深刻な食糧不足、そして国際社会からの制裁という三重苦に陥っていた。

それからわずか数年で、金氏は制裁により崩壊するどころか、信じがたいほどの「完全復活」を遂げた。習氏が異例の外遊として平壌を直接訪問したことについて、同紙は、金氏の手中にある交渉カードが過去とは比較にならないほど強力になっている証左であると指摘した。北朝鮮は現在、卓越した政治的リアリズムと鋭い国際感覚を駆使し、中露両国の間で巧みに立ち回り、かつての圧倒的な劣勢を覆して新たな局面を切り拓いている。

2026年6月8日、中国国家主席・習近平氏と北朝鮮最高指導者・金正恩氏が平壌で会談した。(AP通信)
2026年6月8日、中国国家主席・習近平氏と北朝鮮最高指導者・金正恩氏が平壌で会談した。(写真/AP通信提供)

非核化への言及を消した中朝の「新たな血盟」

​独裁国家間の政治対話において、最も重要なメッセージはしばしば「意図的な空白」に隠されている。韓国紙『中央日報』は、今回の首脳会談における最も警戒すべき細部は、中国の官製メディアおよび公式発表から「朝鮮半島の非核化」という文言が完全に消え去ったことだと分析している。2019年6月の習氏訪朝時を振り返ると、中国側は朝鮮半島の非核化実現に向けて建設的な役割を果たす意欲を強調していた。しかし7年後の現在、中国側の公式見解からは北朝鮮の核兵器や非核化に関する表現が姿を消している。
(関連記事: 【論評】習近平氏の「台湾攻撃」発言が突きつけた現実 米中首脳会談後、台湾はどこへ向かうのか 関連記事をもっと読む

韓国メディアは、これが政府高官の単純な見落としではないと指摘する。なぜなら、習氏が到着する直前の6月3日、4日、6日の3回にわたり、金氏は核物質製造施設や駆逐艦、弾道ミサイル生産工場を大々的に視察していたからだ。『中央日報』は、こうした挑発的な軍事力の誇示を中国側が黙認したと指摘。これは実質的に、中国が北朝鮮を「核保有国」としての既成事実として容認したことを意味する。米紙『ニューヨーク・タイムズ』も、「金氏は自国が核兵器大国として公認されることを望んでいるため、トランプ米大統領との非核化交渉再開や韓国との和解というシナリオは既に破綻しているように見える」と言及している。

最新ニュース
【映像】フィリピン南部でM7.8の地震、新学期初日を直撃した現地の被害状況
トランスジェンダー受刑者の処遇、日本の「監獄人権」進化と台湾の空白
台湾陸委会「民主と専制は相容れない」 天安門事件37年で中国に真相直視求める
就任1年の韓国・李大統領、「韓国株は過小評価」 台湾株価上昇を引き合いに地政学リスクを否定
NYT記者追放で頼清徳氏を徹底封殺、中国による対台湾圧力の新たな段階
TSMC魏哲家会長、韓国の半導体クラスター構想に言及 「台湾モデルは簡単にコピーできない」
TSMC株主総会、米国工場での2ナノ技術流出を否定 魏哲家会長「盗まれるなら進出すると思うか」
米中首脳会談後、トランプ氏の対台湾政策は「曖昧」に? 元米国務副長官が警鐘
台湾の盧秀燕・台中市長が欧州歴訪へ 相次ぐ高規格接遇に「2028年総統選」観測
SHIN、ソロ活動休止前のラストステージをU-NEXTで独占ライブ配信
【独占インタビュー】台湾で俳優デビューした塗茂るな、日本での再出発 映画『shady』で挑んだ「影のある役」
台湾で梅雨前線が停滞、1週間荒天続く恐れ 災害級の大雨に警戒、回復は6月19日以降か
初音ミク、カードキャプターさくら新作も登場 秋葉原「グッドスマイルフェス2026東京」に2万5000人、過去最大規模で開催
台湾土産の定番パイナップルケーキ老舗「舊振南」、今夏日本に本格上陸へ
ミャクミャクモニュメントが大阪各地へ 万博レガシー事業、第1弾は泉南りんくう公園
島嶼国の海洋危機に日本が新行動計画 世界島嶼国海洋会議が東京で閉幕
台湾電力にサイバー攻撃1日3万回 ペロシ氏訪台時は3日で300万回
【舞台裏】馬英九財団問題が国民党を揺さぶる 「鄭派」「趙派」対立で党内に沈黙広がる
韓国地方選で「投票用紙不足」騒動 ソウル市民が再選挙要求、政治家やインフルエンサーの便乗拒否
訪米の鄭麗文・国民党主席、「トゥキディデスの罠」提唱のアリソン氏と対談 台湾は米中衝突の引き金となるのか
GACKTの誕生日に「LAST SONGS 2026」独占配信 U-NEXTで「最も泣けるコンサート」を届ける
日本・フィリピン、EEZ境界画定交渉へ 台湾抜きで進めば「東部海域の権益失う恐れ」専門家が警鐘
日本のバナナに値上がり懸念 中東情勢で追熟用エチレンが不足
佐賀・波戸岬に世界初の海洋プラスチック体験施設「PLA PLA」開業 「回収・分別・再生」まで体験
【舞台裏】台湾空軍T-34C墜落で2人殉職 導入41年の初等練習機、更新めぐり軍内で意見分かれる
ライチ、マンゴーがパリを魅了 台湾農業を世界水準に押し上げた「食への執念」
U-NEXTが日韓合同フェス「Music Chocolate Festival.2026」を6月27日に独占ライブ配信
全公演完売の「原因は自分にある。」初アリーナツアー、ファイナルをU-NEXTで独占生配信
日米拡大抑止協議、8日から国内で開催へ 安全保障環境や同盟の抑止力強化を議論
≒JOYメンバーが来場 サンリオピューロランド七夕イベント「ピューロウィッシュマツリ」開幕
JR東日本がドローンDX大会開催へ 他鉄道事業者も初参戦で規模3倍に拡大
高橋萌登氏の振付作品『仄仄』、台湾・高雄の国際ダンスフェスに参加へ
陸上自衛隊が米比海兵隊との実動訓練「カマンダグ26」への参加を発表 6月15日からルソン島で実施
台北の夜市から蘭嶼の星空まで 外国人旅行者が評価する台湾の新たな魅力
世界初や数々のコンクールで評価を受ける実力派シェフの新ブランド「Aupa!」「Salut」、福岡・赤坂に2店同時オープン
創業377年の老舗・マルカン酢、第5期公認アンバサダーを募集 「お酢のある暮らし」発信へ
第25回「総務・人事・経理 Week 東京」6月17日開幕 バックオフィス課題の最新解決策が集結
【神木の島】台湾で東アジア最高木を確認 高さ84.1メートルのタイワンスギ「大安渓倚天剣」
スペースX上場後にテスラ合併の観測、マスク氏は人類初の1兆ドル長者へ
映画『霧のごとく(大濛)』ラストの「数字の羅列」が意味するもの 台湾白色テロと民主化の軌跡
【北京観察】チェコ、中国官製メディア記者を起訴 親台派監視疑惑で浮かぶ欧州の対中警戒
【新新聞】台湾・J&Vエナジーテクノロジー、AIデータセンターとステーブルコインに布石 再エネ企業の多角化戦略
Topps、17年ぶり開催の「Jリーグオールスター DAZNカップ」に特設ブース出展 実使用ユニフォーム展示や限定パック配布を実施
麻布台ヒルズで夏限定「ひんやりメニュー」登場 かき氷や冷製麺で涼を楽しむ
FUJI ROCK FESTIVAL '26、3日通し券が完売 第5弾出演者と全ステージ詳細を発表