【最前線】台湾有事に日本は無関係でいられるのか 陸自最大の実弾演習「富士総合火力演習」で見た離島奪還作戦 日本では6月7日、国内最大規模の実弾射撃演習「富士総合火力演習」が行われ、陸上自衛隊が島嶼防衛を想定した実弾射撃を実施した。(写真/黄信維撮影)
台湾では2026年5月に武器調達予算が可決され、8月には年次軍事演習「漢光演習」が予定されている。一方、日本の陸上自衛隊は6月7日、静岡県の東富士演習場で、国内最大規模の実弾射撃演習「富士総合火力演習」を実施した。
昭和36年(1961年)に始まり、第68回を迎えた同演習は、現代の安全保障環境における部隊の作戦能力を検証することを主な目的としている。今回の演習では、島嶼防衛、ハイブリッド戦への対応、離島奪還作戦が重点的に扱われ、統裁部隊を含め約3000人の人員、各種戦車、火砲、航空機、無人装備が動員された。富士駐屯地に配備される、長射程の反撃能力を備えた「25式高速滑空弾」発射システムも初めて一般公開された。
これと並行して、日本政府は防衛戦略上の大きな転換を進めている。2026年4月には「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定し、防衛装備の海外移転に関する制限を大幅に緩和した。
今回の政策転換の核心は、これまで非殺傷性装備に限られてきた制限を見直し、艦艇やミサイルなど、殺傷・破壊能力を伴う防衛装備品の完成品についても、理念を共有する国々への輸出を原則として可能にした点にある。国内の防衛産業基盤を強化し、同志国との安全保障協力を深めることで、より有利な国際安全保障環境を築く狙いがある。安倍晋三元首相の安全保障理念を引き継ぐ高市早苗内閣の下で進められたこの決定は、近年の日本の安保政策における重要な進展といえる。
富士総合火力演習は今回で第68回を迎え、島嶼防衛、ハイブリッド戦への対応、離島奪還作戦が重点的に行われた。(写真/黄信維撮影)
小泉防衛相「新たな防衛モデルの確立を」 演習には小泉進次郎防衛相が出席し、訓示を行った。会場には防衛省幹部のほか、自衛隊の最新型四足歩行ロボットや無人装備も姿を見せた。
小泉氏は、日本が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面していると指摘し、国際情勢の不透明感が増していると強調した。ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢を例に挙げ、現代の戦場では無人機などの無人装備が大量に投入されるだけでなく、電磁波、人工知能(AI)、宇宙、サイバー、情報戦などの要素が複雑に組み合わさったハイブリッド戦が展開されていると述べた。
その上で、こうした新たな戦闘形態に迅速かつ柔軟に対応し、日本としての新たな防衛モデルを確立することが、政府にとって喫緊の課題だとの認識を示した。
今回の演習では、統裁部隊を含め約3000人の人員、戦車および機動戦闘車約50両、各種火砲約50門、航空機約10機、無人機約10機が動員された。小泉氏は、現代戦を意識して無人機の運用など新たな試みが導入され、充実した内容になったと述べた。これらは隊員の日々の努力の成果であり、参加部隊や準備・運営に携わった隊員を誇りに思うと語った。
訓示の最後には、自らが全隊員の先頭に立ち、盤石な抑止力と対処力を備えた精強な自衛隊の構築に取り組むと表明した。国民に対しても迅速で分かりやすい情報発信を行うとし、自衛隊員は「国の宝であり誇り」だと述べた。小泉氏は訓示後、昼間演習の全日程を視察してから会場を後にした。
富士総合火力演習に出席した小泉進次郎防衛相は、日本の新たな防衛モデルを確立することが政府の喫緊の課題だと強調した。(写真/黄信維撮影)
島嶼防衛と反撃を想定した訓練 日本は台湾と同じ島国であり、今回の演習では島嶼防衛と反攻作戦を想定した訓練が重点的に実施された。ただし、午前の演習終了後、自衛隊はメディア向けの説明で、今回の内容は現在の特定国の情勢を直接想定したものではなく、あくまで演習上のシナリオだと説明した。
演習では、敵軍による離島侵攻を想定した島嶼防衛作戦が展開された。即応機動連隊は、攻撃ヘリコプターの援護を受けながら、V-22オスプレイ、CH-47、UH-2ヘリコプターで迅速に島へ展開し、偵察活動を行った。
洋上から接近する敵艦隊に対しては、偵察用UAV(中域用)(B)「スキャンイーグル」で情報を収集し、12式地対艦誘導弾による遠距離打撃を実施した。
敵の水陸両用車が沿岸部の目標区域に迫ると、16式機動戦闘車や96式多目的誘導弾システムを用いて、上陸前に撃破する動きが示された。高価値目標の破壊を狙う大型攻撃用無人機に対しては、87式自走高射機関砲で迎撃した。
小型無人機に対しては、小銃による対処に加え、電子戦部隊が操縦者の位置を把握し、特科部隊による火力制圧につなげた。側面から侵攻する敵戦車部隊や歩兵に対しては、火炎地帯などの障害と81mm迫撃砲L16の火力を組み合わせ、進攻を阻止する訓練が行われた。
大型攻撃用無人機の飛来を想定し、陸上自衛隊は87式自走高射機関砲で迎撃する訓練を行った。(写真/黄信維撮影)
海空火力で上陸を支援、主力部隊が離島奪還へ 作戦はその後、島嶼反攻と離島奪還作戦へと移った。反攻作戦は、富士駐屯地に配備され、今回初公開された25式高速滑空弾による着上陸前打撃から始まった。同システムは、長射程の反撃能力を担う装備として注目されている。
会場では、空挺部隊が高高度から隠密に潜入する様子が映像で紹介された。潜伏していた水陸機動連隊の火力誘導班は、F-2戦闘機による近接航空支援を誘導し、海上自衛隊の艦砲射撃と連携して敵の残存防空火力を制圧した。
海空からの火力支援の下、突撃部隊はファストロープ降下や水陸両用車によって海岸に上陸し、後続の主力部隊が進出するための橋頭堡を確保した。会場では、空挺部隊が使用する13式空挺傘も展示された。
その後、主力戦車と歩兵が敵陣へ突入した。歩兵部隊は、射撃統制システムを備えた20式5.56mm小銃と5.56mm機関銃で敵の小型無人機に対処し、塹壕(ざんごう) の掃討を行った。掃討後、部隊は対砲迫戦で敵の火砲陣地を制圧し、89式装甲戦闘車の援護を受けながら、敵が展開する三段山への最終攻勢を実施し、離島奪還任務を完了した。
富士駐屯地に配備される長射程の反撃能力を備えた25式高速滑空弾発射システムを初めて一般公開した。(写真/黄信維撮影)
25式高速滑空弾、無人車両、犬型ロボットも公開 陸上自衛隊は今回の富士総合火力演習で、近代化された島嶼防衛と反攻作戦の流れを示した。25式高速滑空弾システムとAMV装輪装甲車が初めて公開され、長射程の抑止力と反撃能力の強化が具体的に示された。
航空戦力では、F-2戦闘機が近接航空支援を担い、V-22オスプレイ、CH-47、UH-2ヘリコプターが部隊展開に投入された。AH-1S攻撃ヘリコプターは地上部隊の援護を行った。
地上装甲戦力では、10式戦車と90式戦車を主力に、16式機動戦闘車、89式装甲戦闘車、AMV装輪装甲車、96式装輪装甲車、軽装甲機動車が展開した。このほか、87式偵察警戒車、92式地雷原処理車、水陸両用車も投入され、多層的な機動打撃態勢が構築された。
防空戦力としては、03式中距離地対空誘導弾、81式短距離地対空誘導弾、93式近距離地対空誘導弾が運用された。対装甲戦闘では、01式軽対戦車誘導弾を用いた訓練も行われた。
遠距離打撃と火力支援の面では、初公開の25式高速滑空弾に加え、12式地対艦誘導弾、96式多目的誘導弾システム、中距離多目的誘導弾が運用された。これらを特科部隊の19式装輪自走155mm榴弾砲、99式自走155mm榴弾砲、155mm榴弾砲FH-70、120mm迫撃砲、81mm迫撃砲L16と組み合わせ、集中火力の運用能力を示した。
多領域化する戦場に対応するため、無人装備や高度化された装備も大規模に投入された。長時間の警戒監視に使われる偵察型無人車両、攻撃型や分隊支援型の無人車両に加え、10キロの荷重に耐え、階段などの地形も移動できる四足歩行ロボットも登場した。
空中偵察では、偵察用UAV(中域用)(B)「スキャンイーグル」とUAV(狭域用)「スカイレンジャー」が使用された。さらに、電子作戦隊に配備されたネットワーク電子戦システム(NEWS)と連携し、電波情報の収集や妨害を行い、電磁波領域での優位確保を図った。
演習では、射撃統制システムを搭載した20式5.56mm小銃や各種機関銃も歩兵の基本装備として使用された。87式自走高射機関砲や13式空挺傘の展示も行われ、情報収集、電子妨害、物理的打撃を組み合わせた現代戦への対応が示された。
陸上自衛隊は、10キロの荷重に耐え、階段などの地形も移動できる四足歩行ロボットを展示した。(写真/黄信維撮影)
「目に見えない」照明弾、夜間戦闘能力を確認 夜間演習では、暗視装置や照明弾を活用した射撃能力が重点的に披露された。小銃や機関銃のほか、AMV装輪装甲車、89式装甲戦闘車、16式機動戦闘車、90式戦車などの戦闘車両が、暗視装置を用いて夜間でも目標を捕捉し、射撃を行った。
さらに、肉眼では見えず、赤外線暗視装置を通してのみ確認できるIR(赤外線)照明弾も展示された。部隊はIR照明弾の支援を受けながら、特科部隊と迫撃砲部隊による精密な火力打撃を実施した。
夜間戦術演習の中心となったのは、増強された即応機動連隊が、敵軍による夜間の離島侵攻を阻止する防衛作戦である。防衛部隊はまず2機のUAV(狭域用)「スカイレンジャー」を展開して夜間の情報収集を行い、敵軍の接近を確認した。連隊長は直ちに特科部隊へ、敵の火力支援基盤に対する制圧射撃を命じ、戦場監視を補助するIR照明弾を発射した。
夜間の実弾射撃では、暗視装置や照明弾を活用した射撃能力が披露され、肉眼では見えず赤外線暗視装置でのみ確認できるIR照明弾も展示された。(写真/黄信維撮影) 敵の突撃が始まると、16式機動戦闘車が交戦し、敵戦車を撃破した。降車した敵歩兵の突撃に対しては、特科部隊と81mm迫撃砲L16が弾幕射撃を行い、進攻を阻止した。
演習の最終局面では、一部の敵軍が中央陣地に浸透した状況を想定し、連隊長が特科部隊に陣地直上射撃を要請した。さらに予備隊を防御陣地へ投入し、侵入した敵軍を掃討することで、夜間攻勢を阻止する流れが示された。
当日の東富士演習場は低温で強い雨が降り、視界も悪い状況だった。それでも午後8時から始まった夜間演習は予定通り実施され、約40分で終了した。
弾薬約69.5トン、経費は約8億2000万円 陸上自衛隊は静岡県御殿場市の東富士演習場で、国内最大規模の実弾演習である富士総合火力演習を実施した。昼間の課目に加え、夜間戦術演習も行われた。
今年度の演習で使用された弾薬の総量は約69.5トン、経費は約8億2000万円だった。2025年の演習では弾薬消費量が約76.9トン、経費が約8億7000万円であり、今年は弾薬量、経費ともにやや減少した。
同演習は教育目的も含むため、各国との共同軍事演習のように複数日にわたって実施されるのではなく、1日のみの開催となった。現地には学生も招かれ、自衛官募集の活動もあわせて行われた。
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ミャクミャクモニュメントが大阪各地へ 万博レガシー事業、第1弾は泉南りんくう公園 大阪府は、2025年大阪・関西万博閉幕後もそのレガシーを継承し、さらなるにぎわい創出や国内外からの誘客、府内周遊の促進を図ることを目的に、万博の象徴である「ミャクミャクモニュメント」等を府内各地へ巡回設置する「ミャクミャクモニュメント等活用事業」を開始した。第1弾はSENNAN LONG PARKに設置、関空を望む新フォトスポットに第一弾として、関西国際空港......
島嶼国の海洋危機に日本が新行動計画 世界島嶼国海洋会議が東京で閉幕 日本財団、外務省、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC/UNESCO)が共催する「世界島嶼国海洋会議(Island States Ocean Summit)」が、2026年6月3日から4日までの2日間、東京都千代田区のホテルニューオータニで開催された。最終日のクロージングセッションでは、日本財団名誉会長の笹川陽平氏が、本会議の成果として新たな行動計画「OCEA......