【独占】台湾プラスチック大手幹部、上海空港で突如拘束 専門家:不要不急の中国渡航を避けるよう

淡江大学戦略研究所の翁明賢教授。2023年に中国訪問中、学術交流の際に4時間にわたる取り調べを受けた。携帯電話、パソコン、荷物の内容まで調べられたという。(撮影:蔡親傑)



上海空港で突如拘束:台湾企業幹部の異例の経験

台湾と中国の関係が緊張を増す中、中国当局による台湾人への取り調べが急増している。最近、特に注目を集めているのが、台湾プラスチック大手の幹部が経験した異例の出来事だ。


複数の情報筋によると、この幹部は9月1日、台北松山空港から上海虹橋空港に到着したが、飛行機が停止するや否や、上海の国家安全当局者に機内で拘束され、「取調室」に連行された。一晩中の尋問の後、釈放されたものの、台湾への帰国を許可されず、事実上の「出国制限」状態に置かれているという。


相次ぐ台湾人拘束事件:政治から学術まで広がる影響

この「出国制限」は、中国で一般的に使われる「辺境管制」と呼ばれる措置だ。本来は中国国民の出国や出海を制限するものだが、今回は台湾人に適用された珍しいケースとなった。


台湾人の拘束事件は、2017年3月のNGO職員・李明哲氏の事例にまで遡る。その後、学者や活動家など、様々な分野の台湾人が「スパイ容疑」などで拘束され、中国メディアによって大々的に報道されてきた。


「反スパイ法」施行後の状況悪化:専門家が警鐘

台湾の淡江大学戦略研究所の翁明賢教授は、2023年に中国訪問中に4時間にわたる取り調べを受けた経験を持つ。専門家たちは、中国の「反スパイ法」施行後、状況がさらに悪化していると指摘する。


台湾の大陸委員会の統計によると、過去1年間で少なくとも8件の退役軍人・警察官の不当拘束事件が発生している。これは、中国当局が台湾の軍事・治安情報を得ようとする動きの表れだと見られている。


厳しさを増す中国の対台湾政策:死刑も視野に

賴清德政権発足後、北京は台湾に対してより厳しい姿勢を示している。6月には「台湾独立」処罰に関する意見書が発表され、最悪の場合、死刑も適用可能となった。


両岸関係に詳しい専門家は、「中国の情報機関の権力が大幅に拡大し、他の機関がそれを抑制することは困難になっている」と懸念を示す。


中国渡航時に要注意:台湾当局が警告する8つのリスク行動

台湾の大陸委員会は、中国渡航時に特に注意を要する8つの行動パターンを公表した。これらは、中国当局の目に留まりやすく、拘束や尋問のリスクを高める可能性がある行動だ。以下に具体的に列挙する:


  1. 学術交流への参加:中国の大学からの招待で学術交流に参加する際、入国時に長時間の尋問や、携帯電話、パソコン、荷物の検査を受ける可能性がある。

  2. 退役軍人・警察官の交流活動:退役軍人や元警察官が村長などの立場で中国を訪問する際、ホテルで国家安全当局者を名乗る人物から事情聴取を受け、携帯電話の通信記録をコピーされるケースがある。

  3. 中国経済に関する発言:台湾企業の幹部が中国経済の低迷や若年層の失業率上昇などについて言及すると、国家安全当局者から数時間に及ぶ尋問や警告を受ける可能性がある。

  4. インターネット上での両岸比較:ネット上で両岸の政治制度を比較し、台湾の自由民主社会を賞賛するような投稿をしていると、入国時に当局から渡航目的について詳しく尋問される恐れがある。

  5. 民間団体の役職者:台湾の民間協会の会長などの役職に就いている場合、入国時に国家安全当局者から協会の運営状況について数時間にわたり尋問を受ける可能性がある。

  6. 宗教関係者の訪問:寺院の委員など宗教関係者が中国を訪問する際、入国時に個人情報や背景、政治的傾向などについて尋問を受けるリスクがある。

  7. 台湾総統選挙への参加:中国で教師として働く台湾人が総統選挙で投票するために帰国した場合、中国の国家安全当局者から政治的傾向を探られ、個人のパソコンや携帯電話を検査される可能性がある。

  8. 地方選挙経験者の訪中:地方選挙に参加した経験のある台湾人が中国を訪問した際、出国時に台湾居民証(台胞証)を没収され、その後の申請も拒否されるケースがある。

これらの事例は、中国当局が台湾人の動向に非常に敏感になっていることを示している。台湾の専門家は、中国渡航を検討する際には、これらのリスクを十分に認識し、渡航の必要性と安全性を慎重に検討するよう呼びかけている。

台湾プラスチック大手の幹部の「出国制限」は2週間以上続いており、同社は北京当局との対話を続けている。両岸関係の専門家は、現在の緊張状態を考慮し、不要不急の中国渡航を避けるよう提言している。編集:高畷祐子


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