台湾の映画界とテレビ界で最高の栄誉である金鐘賞と金馬賞の両方を受賞した実力派俳優、吳慷仁の中国進出が台湾のネット上で大炎上を引き起こしている。彼の演技力を過大評価だと揶揄する声や、裏切り者呼ばわりする声まで上がっている。以前、女優の林依晨が「私は成都の人間です」と発言し台湾のネットユーザーから批判を浴びた事例と比べても、吳慷仁への批判の激しさは度を超えている。
台湾スターの中国進出に賛否両論
台湾の実力派俳優吳慷仁が中国の芸能プロダクションと契約を結んだことが明らかになり、台湾で大きな波紋を呼んでいる。以前、女優の林依晨が「私は成都の人間です」と発言し批判を浴びた事例と比較しても、吳慷仁への反応はより激しいものとなっている。
政治審査vs政治的正しさ:表現者の苦境
吳慷仁や林依晨の事例は、中国と台湾の芸能人が置かれている難しい立場を浮き彫りにしている。中国では「政治審査」が、台湾では「政治的正しさ」が表現者を縛っている。皮肉なことに、民主主義を掲げる台湾でも、政治的正しさの網が張り巡らされ、表現の自由が脅かされている現状がある。
過去の発言が炎上の火種に
吳慷仁の中国進出に対する批判の背景には、彼の過去の発言がある。2014年のひまわり学生運動で現場に姿を見せたことや、2018年に北京で行われた両岸の芸能交流イベントで「台湾の題材は限られている」と発言したことなどが、ネット上で掘り起こされ批判の的となっている。
中国コンテンツ産業の実態
中国の文化・メディア産業は依然として厳しい審査制度下にあるが、その一方で多様なジャンルと豊富な制作費を背景に、質の高い作品も多く生み出している。現代劇の中にも社会問題を扱った作品があり、時に「諷刺」的な要素も含まれている。
台湾ドラマ産業の課題
台湾では出版やメディアの審査制度は撤廃されているものの、ドラマ産業は深刻な内部競争に直面している。制作費の不足や政治的な圧力により、題材が限定される傾向にある。最近では公共テレビの『聴海湧』が抗日英雄を「台奸(対日協力者)」として描いたことで物議を醸すなど、歴史解釈を巡る問題も浮上している。
キーボードウォリアーが奪う「態度表明しない自由」
両岸のネットユーザーによる「キーボード戦争」は、芸能人から「態度表明しない自由」を奪っている。中国で活動する台湾芸能人は常に政治的立場を問われ、どちらの立場を取っても批判を浴びるジレンマに陥っている。
吳慷仁の挑戦と今後の展望
演技派として評価の高い吳慷仁の中国進出は、彼のキャリアにとって大きな挑戦となる。中国の実力派女優孫儷との共演が噂されるなど、注目度は高い。しかし、政治的に敏感な時期だけに、両岸のネットユーザーの反応をどう扱うかが課題となる。
結論:表現者の選択の自由を
民主主義を標榜する台湾社会は、芸能人の政治的立場表明を強要するのではなく、彼らの選択の自由を尊重し、応援する姿勢が求められる。両岸関係が緊張する中、エンターテインメント業界がこの難しい状況をどう乗り越えていくのか、今後の展開が注目される。
編集:高畷祐子 (関連記事: 大絶賛の新北市・新スポット! 「帰りたくなくなる」、「世界の猫スポット6選」にも選出 | 関連記事をもっと読む )
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