台湾人妻と東京に豆花店開業 田邊与志久氏、創業10年で成功軌道に

東京豆花工房代表の田邊与志久氏。(撮影:黄信維)
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東京豆花工房の代表・田邊与志久氏は2015年、台湾伝統のデザート「豆花」を専門とする店舗を東京で開業。都内初の台湾豆花専門店として知られる。『風傳媒』のインタビューで、開業のきっかけは台湾との深い絆にあると語った。妻は台湾・桃園の中壢出身で、結婚前から台湾関連の仕事を希望していたという。自身も豆花を好み、当時の日本市場に専門店がなかったことから、妻との相談を経て台湾豆花の製造を決意。妻の知人の協力を得て豆腐作りの技術を学び、開業にこぎつけた。

2015年12月、東京・神田須田町で開業。当時、台湾豆花を専門とする店舗は都内でほぼ皆無で、同店が第一号とみられる。店舗選定は慎重を期した。当時会社員だった田邊氏は神田近辺が職場だったため、この地域に精通していた。開業当初、豆花は日本でほとんど認知されていなかった。台湾の味を再現するため、田邊氏は台湾の複数の豆花店を訪れ、様々な味と風味を研究。台湾の豆花は柔らかいものから固めのものまで多様で、地域により甘さも大きく異なると指摘する。

配合を工夫、「ピーナッツ」トッピングが人気に

日本人の好みに合わせて甘さを調整し、シロップも飲みやすく仕上げながらも、あえて日本の食習慣に迎合せず、台湾本来の味の再現に努めた。店内では8種のトッピングを提供し、客は自由に組み合わせ可能。「全部のせ」も選択でき、中でもピーナッツが最も人気という。田邊氏は「台湾人はピーナッツが特に好きで、日本人客もその柔らかな食感を絶賛する」と語る。現在の客層はオフィスワーカーに加え、地方から東京観光に来た客も。特に週末は台湾人も主要な顧客の一つという。

東京豆花工房。(黃信維攝)
東京豆花工房。(撮影:黃信維)

開業当初の困難 「豆花」を知らない日本人

創業当初の最大の課題は、日本人客が台湾デザート「豆花」を全く知らないことだった。日本人にとって豆腐は通常塩味料理の一部であり、「豆腐デザート」という概念は受け入れがたかった。当時は顧客への説明と最初の一口を勧めることに多くの時間を要し、これが最も困難だったと振り返る。時間の経過とともに、より多くの日本人が豆花を理解し受け入れるようになった。台湾人客がその普及に重要な役割を果たし、試食後に日本人の友人に推薦するケースも。また、台湾旅行で豆花を味わい、帰国後に常連となる日本人も少なくないという。

田邊氏によると、コロナ禍以前は毎年1・2名の台湾からのワーキングホリデー従業員がいたが、パンデミック後は大幅に減少し、現在は台湾人スタッフの確保が非常に困難になっているという。しかし、最近1名の台湾人スタッフが加入したことを前向きに評価している。2015年の開業以来、「完全専門店」を特徴とし、豆花に特化することで競争の激しい市場での差別化を図ってきた。最近では台湾のエッグロールの製造も始め、店内で不定期販売するなど、商品の幅を広げている。

豆花店の経営の傍ら、田邊氏は台湾文化や料理に興味を持つ日本人の起業を支援。中小企業診断士の資格を持ち、10年以上の経営コンサルタント経験を活かし、起業アドバイスを提供している。このような協力関係は相互の信頼関係が基盤であり、相手の真摯な姿勢も支援を決める重要な要素だという。相談は多いものの、起業には様々な条件が必要で容易ではないと強調。共通の理念を持つ人々との協力を通じ、台湾の食文化の普及を目指している。

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