都市デザイン研究者で「流動商店」共同創業者、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻都市デザイン研究室特任研究員の三文字昌也氏。都市の「流動性」の価値を探求し、台湾と日本の都市文化の対話を促進する活動を展開している。
「流動性」がキーワードだと語る三文字氏。曖昧で柔軟な都市空間こそが理想的なアプローチだと考え、従来の都市計画の枠組みを超えた、より開放的で柔軟な状態を模索している。『風傳媒』のインタビューで、自身の経験や都市デザインの理念、台湾と日本の都市計画への深い考察を語った。
日本の都市から消えた「日常の流動性」
かつての日本は「流動」から「固定」へと移行し、一方の台湾では「流動」と「固定」が共存している。この都市デザインの概念は非常に興味深い。戦後の日本にも夜市があり、いわゆる「闇市」として存在していたが、次第に法律で禁止に。台湾の夜市も当初は「闇市」的な性質を持っていた。日本では、これらの空間は徐々に高層ビルに置き換えられ、例えば駅前に建設されたビルの地下に闇市が取り込まれていった。また、日本の祭りの期間中には「縁日」があり、これは台湾の夜市に似た要素を持っている。
しかし、現在の日本の状況は台湾とは異なる。長年研究を続けてきた三文字氏によると、日本の縁日は日常的なものではなく、8月などの祭り期間中にのみ現れる非日常的な活動だという。つまり、日本にも流動性は存在するが、台湾の夜市の特徴である日常生活への溶け込みが見られない。台湾の夜市の流動性が重要なのは、それが日常生活と密接に結びつき、固定的な要素とも組み合わさっているからだと指摘する。

流動性の源 曖昧さが生む市民参加の可能性
三文字氏が考える「流動性」の源は何か。最も重要なのは「曖昧性」、あるいは日本語でいう「あわい(間)」(規則や境界線の曖昧さを指す)という概念だという。日本では規則が厳格に執行される傾向がある。三文字氏は手書きの図を用いて、区域や私有地、警察の管轄範囲などの境界を説明。道路は必ず警察が管理し、私有地は警察ではなく土地所有者が厳密に管理する。この境界線は極めて明確だ。その結果、日本では人々が都市の公共空間を自分のものとして捉えなくなり、参加意識が失われていったという。
「しかし、台湾の亭子脚(アーケード)のような場所では、この境界線が曖昧になっているのではないでしょうか」この「曖昧さ」は台湾でも問題視されることがあるが、むしろこの曖昧さこそが「空間への主体的な参加意識」を生み、多様な都市文化を育んでいると指摘。
特に興味深いのは「アーケード下の駐車スペース」のような場所だ。建物の脇に駐車スペースが設けられる「重複」は、日本では決して見られない光景だという。三文字氏は、本来日本の都市にも流動性があり、新たな変化や影響を生み出す可能性があったはずだと指摘。台湾の都市は常に変化の中で考え、「流動」し続けている。日本人が忘れてしまったこの概念から、日本社会が学ぶべき点は多いという。
最近の『TRANSIT』第66号特集「台湾の秘密を探しに」でも、関連する記事を執筆している三文字氏。インタビューの核心テーマである「流動性」と「都市計画」について、台湾の読者へのメッセージとして、「台湾の都市は世界でも稀有な、非常に興味深い存在です。私自身も多くを学ばせていただきました。皆さんにもその価値を認識していただきたい。それは日本が失ってしまったもの、私たちにはもうないものなのです」と語る。台湾にも課題はあるものの、初めて台湾で感じた「都市の面白さ」、その都市の素晴らしさと価値を、これからも大切に保存し続けてほしいと締めくくった。
編集:佐野華美
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