台湾半導体製造(TSMC)の魏哲家会長は先日、ホワイトハウスで、アメリカへの投資を1000億ドル追加すると発表した。台湾政府は先端プロセス技術や研究開発センターは引き続き台湾に残ると強調しているが、一部からはドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が「護国の神山」を密かに移転させているのではないかとの懸念の声が上がっている。元立法委員の郭正亮氏は番組「亮劍台灣(リャンジェンタイワン)」で、TSMCの米国移転は賴清德総統が引き起こした問題だと指摘した。両岸間の戦争リスクが高まったことで、TSMCは米国からの継続的な圧力を軽減するため、やむを得ず米国へ移転したとのことだ。
郭氏によると、現在の台湾海峡情勢は緊迫しており、米国は将来的に中国との戦争が発生した場合の半導体供給問題を懸念している。そのため、TSMCの米国移転は理にかなっているとしている。また、この移転決定は魏会長一人で下せるものではなく、TSMCの外国人投資家が70%を占めていることも影響していると述べた。郭氏の情報によれば、外国人投資家はTSMC幹部に「両岸にリスクがあると思うか」と尋ねており、同社は台湾海峡や両岸関係の将来を予測できないため、生産リスクを低減する目的で海外移転を決定したということだ。
郭氏は、TSMCがバイデン前政権時に650億ドルを投資し、トランプ政権2.0時代の今後4年間では1000億ドル、年間少なくとも250億ドルの投資を予定していると指摘した。「今後4年間、TSMCは台湾にどれだけ投資できると思うか?」と問いかける。これまでTSMCは台湾で年間平均300億ドルを投資してきたが、米国への投資増加により、台湾への投資額は必然的に圧縮されるだろう。例えば、高雄に3つの工場を建設する予定だったが、現在は最大2つに縮小され、嘉義でも同様に3つから最大2つに削減される見込みだ。
郭氏は、今後のTSMCの対米投資は企業利益だけでは資本支出を賄えず、融資や社債発行による資金調達が必要になると予測している。TSMCの融資が増加すれば、株式配当は必然的に減少する。また、米国研究開発センターのスタッフ給与は台湾の少なくとも2倍で、米国就労ビザも持つことになり、台湾から人材が流出する問題に直面する恐れがある。
TSMCが3日に米国への1000億ドル追加投資を発表した翌日、トランプ大統領は2期目初の議会演説で、「彼らにお金を一切与えなくてよい」と誇らしげに語った。この発言は、バイデン前政権が66億ドルの補助金を出してTSMCに350億ドルの工場投資をさせたことと比較していると郭氏は指摘している。しかし、トランプは1セントも使わずにTSMCから1000億ドルの投資を引き出すことに成功し、これは間違いなくトランプ政権における最大級の投資案件となっている。郭氏は、台湾が自らを救う唯一の方法は、戦争リスクが低下していると世界中に信じさせることだと述べている。「これが台湾が現在直面している根本的な問題だが、皮肉なことに賴清德はそれを実現できておらず、今なお全面的なリコールを進めている。」と締めくくった。
編集:梅木奈実 (関連記事: 論評》原発追放、TSMCを追い出 台湾に残るのは大規模リコールだけ? | 関連記事をもっと読む )
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