重要インタビュー》台湾経済研究院理事長・呉中書:トランプの威嚇は米国と台湾の経済に影響、国民の投資はリスク管理を最優先に

台湾経済研究院理事長の呉中書氏は、トランプ政策により米国債の利回りが高止まりし、米国の経済成長が減速・企業の投資決定も遅延すると指摘。(柯承惠撮影)
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風伝媒グループ主催の今春最も注目のフォーラム「大波當前」は3月7日に開催。国内の重鎮である経済学者、台湾経済研究院理事長の呉中書氏が米国大統領トランプの政策とその台湾および投資家への影響を分析する。呉中書氏はイベントに先立つインタビューで、トランプ政策により米国債の利回りが高止まりし、米国の経済成長が減速、企業の投資決定も遅延するだろうと指摘。台湾は輸出主導型経済であり、影響を受けないわけにはいかないと述べた。

呉中書氏は、台湾の今年と来年の経済成長率はともに影響を受けると予測。その影響の大きさはトランプが何を提示するかによるとし、台湾の輸出品に対する関税引き上げの状況や「対等関税」の実施要求などが焦点になると分析。台湾政府は伝統産業と農業部門への影響に注意すべきだとしている。一般投資家にとっては、リスク管理を最優先し、有望産業への投資配分や定期定額投資を勧めている。

以下は呉中書氏の風伝独占インタビューの要点だ:

トランプが米国大統領に当選して以来、最も注目されているのは関税問題だ。彼のアプローチは無謀とは言えない。米国の平均関税率は加重平均でも単純平均でも他国に比べて低く、さらに米国は昨年1.2兆ドル以上の貿易赤字を抱えている。トランプは関税を交渉の切り札として使い、他国を交渉の場に引き出そうとしている。自身が著名なビジネス交渉の達人であるトランプは、威嚇理論を見事に活用し、多くの国々に妥協を余儀なくさせている。

トランプは関税引き上げを通じて外国企業の米国投資を促し、米国企業の本国回帰を促進したいと考えている。これにより米国の雇用、消費、投資がすべて促進され、経済が活性化すれば自然に税収が増加し、財政赤字と債務残高の問題改善に役立つと考えている。

所得税率と営業税率の引き下げを主張

トランプはまた所得税率と営業税率の引き下げも主張している。資金はどこから来るのか?トランプは関税引き上げ、そして投資による経済活性化後の企業収益と所得拡大からの税収でカバーできると考えている。全体的に見れば、トランプの主張には構造的なバランスと完全性がある。

しかし、上記の考えは実現可能だろうか?米国のレーガン大統領時代には「サプライサイド経済学」があった。その主な論点は、政府がまず減税して企業の負担を軽減すれば、企業は投資を増やし生産を促進し、企業所得が増加し、政府の税収も連動して増加するというものだ。簡単に言えば、政府が今日企業に対して減らした税収は将来取り戻せるというもの。しかし実証結果は「減税はしたが、増収は実現しなかった」。そのため、レーガン時代から米国の財政赤字は悪化し続け、債務残高は急速に増加している。 (関連記事: 論評》トランプ氏、ウクライナをメニューに変え、次の一品は台湾か? 関連記事をもっと読む

美國前總統雷根
米国前大統領レーガン。(AP)

トランプは関税引き上げで財政赤字を改善しようとしているが、効果は限定的だろう。関税収入は米国の全税収のわずか約2%に過ぎないからだ。次に、関税で貿易赤字を改善するのも容易ではない。単一国に対して課税しても、米国自身の構造が変わらなければ、他の輸出競争力のある国々が米国による関税引き上げ対象国の輸出品に取って代わることになるだろう。