呉典蓉コラム》台湾のゼレンスキーになることは、もはや褒め言葉ではなくなった時

総統の賴清德は、台湾独立に対する確固たる姿勢で、ウクライナのゼレンスキー大統領と最も比較される指導者とされてきたが、最近この比較は不吉な兆しとなっている。(総統府公式サイト)

賴清德と蔡英文、この二人の前後任総統は行動様式が大きく異なり、さらに「英頼の争い」によって二人は表面的な関係を保つのみであったが、賴清德が先日ハリファックス台北フォーラムに出席した際、トランプ2.0の大変化に対する対応策として提案したのは、蔡英文時代のものとまったく同じだった。「今日のウクライナは明日の台湾である」が国際メディアの焦点なっている今、賴清德の発言は実に時空間の錯覚を感じさせるものであった。

権威主義国家の結集を語る 賴清德とトランプは平行世界に生きている

賴清德の当日の発言には二つの要点があった。第一に、ロシア、北朝鮮、イラン、中国などの権威主義国家が引き続き結集しているため、民主陣営はより団結すべきであること。第二に、台湾は非中国系サプライチェーンを構築すべきであること。

この発言は現在の国際情勢との間に大きな隔たりがある。賴清德はまるでトランプと平行世界に生きているかのようだ。実際には、トランプはロシア・ウクライナ戦争の早期終結を急いでおり、ウクライナの天然資源を強要する一方で、いかなる安全保障の約束もせず、さらにゼレンスキーを極度に侮辱している。ロシアのウクライナ侵攻の主張を完全に受け入れ、ウクライナが戦争を引き起こしたと非難している。先日、ロシアのウクライナ侵攻3周年を記念して、国連総会ウクライナが提出したロシア非難決議が採択したが、アメリカはロシア、北朝鮮と共に反対票を投じた。これはアメリカの従来の投票行動を完全に覆すもので、アメリカは権威主義国家と同じ立場に立つことを選択した。あるいは、トランプのロシア接近は「ロシアと連携して中国に対抗する」戦略と見なすことができるという意見もあるかもしれないが、そのような見方は時期尚早かもしれない。少なくともトランプの現実的な外交においては、民主主義と権威主義による二分法は絶対に用いられず、台湾が提唱する民主主義はトランプの目にはもはや加点にならない。第二に、過去数年の米中技術戦争を経て、台湾の現状はすでに「非中国系サプライチェーン」となっており、28ナノメートル以上の半導体のみが中国大陸への輸出を許可されている。トランプ政権は現在、高性能半導体をアメリカに「回帰」させることを段階的に進めている。言い換えれば、台湾がアメリカの言うことを聞いて「非中国系サプライチェーン」の目標を達成した後、アメリカは更に一歩進んでTSMCのコア技術を要求している。これは過去数年間、台湾の人々が頼りにしてきた「シリコンシールド」であり、台湾がシリコン・シールドがなくなれば、トランプの目に台湾はまだ防衛する価値があるのだろうか。 (関連記事: ウクライナが米国に屈服、鉱物資源協定へ トランプ氏「金曜日にゼレンスキー大統領がホワイトハウスで署名」 関連記事をもっと読む

公平に言えば、第二次世界大戦後のアメリカ主導の国際枠組みにおいても、伝統的な大国政治は依然として重要な役割を果たしている。例えば、中国を封じ込めるためにインドを引き込もうとして、アメリカとインドは過去数年二国間関係を強化してきたが、表面上は民主陣営に属するインドは依然としてロシアと緊密な関係を維持しており、完全にアメリカの指示に従っているわけではない。インド政府はカナダでシク教指導者の暗殺を企てたり、アメリカでシク教徒を監視するために人を派遣したりした疑いがあるが、これらの民主主義同盟国の政府はこれまでインドに対する非難は極めて弱く無力であった。アメリカ歴代政権の主な違いは、トランプが完全にソフトパワー包装を望まず露骨な弱肉強食の利害外交を展開していることにある。