「中国両会2025」台湾問題より内需拡大を最優先 過去30年で最高の財政赤字率4%に踏み切る李強政権

2025年3月5日、中国国家主席習近平が北京人民大会堂で全国両会の開幕式に参加。(AP通信)

台湾がTSMC(台湾半導体製造大規模な対米投資をめぐる論争や、トランプ米大統領の議会演説に注目する中、2025年中国の「両会」が開幕しました。3月5日に李強国務院総理が全国人民代表大会で行った《政府工作報告》が最も重要とされ、この報告は今後1年間、中国が全国の力を結集して達成すべき発展課題と目標を示しています。

台湾関連は脇役、経済発展こそ両会の主旋律

台湾の世論は《政府工作報告》の台湾関連部分に注目しがちでしたが、今(2025)年はわずか130字で報告の最後から3番目の段落に置かれており、対台湾政策が両会の重点ではないことを示しています。その背景には、中国の対台湾政策や方針の策定は、党中央の最高指導層が直接掌握しており、中央対台工作領導小組は習近平が組長、王滬寧全国政協主席が副組長、王毅中央外事弁公室主任兼外相が書記長を務めているためです。国務院は実施機関としての役割を担い、台湾問題において党中央の大方針を実行するのみです。

約2万字に及ぶこの《政府工作報告》において、政治は主旋律ではなく、「経済発展」こそが真に中心的位置を占めています。率直に言えば、李強の《政府工作報告》は極めて実務的で、冒頭から中国の経済社会発展が国内外の二重圧力に直面していることを指摘し、「内需の低迷」「期待の弱さ」が過去一年の経済運営における困難な課題であったと述べています。これは中国の多くの経済学者の観察や一般市民の実感とも一致しています。

李強の《政府工作報告》が「経済発展」を核心的論調としているのは、去(2024)年7月の中共20期三中全会、9月の不動産市場刺激・株式市場テコ入れなどの「一括」マクロ経済調整政策の実施、及び12月に相次いで開催された中央政治局会議と経済工作会議の「延長線上」にあると言えます。世界経済の成長が鈍化する中、​中国共産党は国内外の両面で意識的に進み、資本規制、不動産バブル、パンデミックの影響がもたらした重い暗雲から抜け出そうとしています。

中国大陸年度両会が議程を開始し、李強国務院総理が5日に政府工作報告を行った。(AP通信)
中国大陸年度両会が議程を開始し、李強国務院総理が5日に政府工作報告を行い、今年の経済成長目標を5%前後と設定した。(AP通信)

消費拡大を最優先課題に、科学技術イノベーションは依然として鍵

「2025年政府工作任務」の段落で、李強首相は「消費の活性化」と「内需拡大」を最優先課題に位置づけています。「消費」という言葉は報告の中で32回も登場し、昨年の21回を上回っています。注目すべきは、内需拡大が昨年の報告では3番目に位置づけられていましたが、今年は直接1番目に引き上げられたことです。そのため財政赤字率も昨年の3%から4%に引き上げられ、中国の30年余りで最高値を記録しました。これは前述の目標を達成するため、中国共産党が財政政策を強化して着手し、中国経済の成長により十分な燃料を提供しようとしていることを示しています。 (関連記事: 米中貿易戦争が全面的に勃発の恐れ!中国の専門家:状況は「非常に悪化する」可能性 関連記事をもっと読む

さらに、報告では国務院レベルで消費活性化のための「特別行動」を打ち出すことを発表し、まず「多様なルートで住民の収入増加を促進」し、それによって「消費能力を向上させる」としています。この原則のもと、中国国家発展改革委員会の鄭柵潔主任は6日、最初の「大型景気対策」を発表しました。具体的には、消費財の買い替え支援資金を昨年の1,500億元から今年は倍増の3,000億元にするというものです。